外国人が合同会社の代表社員になる会社設立|海外在住・サイン証明・職務執行者と登記の決まり

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合同会社を日本でつくり、自分が代表社員になるつもりの外国人の方と、その書類づくりを手伝う日本側の担当者に向けて書きました。在留カードはあるが印鑑登録をしていない人、本国に住んだまま日本の会社の代表になりたい人、本国の会社そのものを代表社員にしたい人、と立場はさまざまです。
株式会社の代表取締役についての解説は多く見つかりますが、合同会社の代表社員は言葉も仕組みも少し違います。社員とは誰か、代表社員はどう決まるのか、登記簿に何が載るのかを先に押さえると、外国人の会社設立で集める書類が見えてきます。
内容は2026年10月時点の会社法、法務省の案内、司法書士事務所の解説にもとづきます。登記所によって扱いが分かれる点は、その旨を書いています。
合同会社の代表社員とは:社員・業務執行社員・代表社員の三つの層

合同会社の会社設立でまず押さえたいのは、「社員」が出資者を指し、雇われて働く人ではないという点です。会社法は、社員は定款に別段の定めがなければ業務を執行するとし(590条)、業務を執行する社員が会社を代表すると定めています(599条1項)。つまり何も決めなければ、出資した全員が業務執行社員であり、全員が代表社員です。

代表社員は、業務執行社員の中からしか選べません(599条3項)。出資はするが経営には関わらない社員を代表社員にすることはできない、という意味です。外国人の会社設立で、本国の家族や知人に出資だけしてもらう場合は、その人を業務執行社員から外す定めを定款に置くかどうかを最初に考えます。
代表社員の権限は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及びます(599条4項)。内部で権限を絞っても、事情を知らない取引先には主張できません。会社設立のあとは、株式会社の代表取締役とほぼ同じ重さの立場だと考えてください。名刺や契約書では「代表社員」と書くのが正確で、「社長」「CEO」は通称にとどまります。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
外国人は合同会社の代表社員になれるか:国籍と日本の住所

会社法に、代表社員の国籍についての条件はありません。外国人がひとりで出資して合同会社をつくり、そのまま代表社員になる会社設立は、制度の上では特別な形ではありません。
外国人の会社設立で長く問題になってきたのは住所です。法務省は、内国会社の代表取締役のうち少なくとも1人は日本に住所を持たなければならないという従前の取扱いを廃止し、平成27年3月16日の通知で、代表取締役の全員が日本に住所を持たない株式会社の設立登記を受理する扱いにしたと案内しています。この案内は株式会社の代表取締役について書かれていますが、司法書士法人の解説では、同じ時期から合同会社の代表者についても日本に住む代表者がいなくても登記できるようになったと説明されています。合同会社で会社設立をする場合も、申請の前に管轄の法務局で扱いを確かめておくと確実です。
海外在住の代表社員だけで会社設立をするときに手間がかかるのは、書類の往復と、そのあとの銀行口座です。本国で署名した書類を国際郵便で送り、日本で申請し、登記が終わってから法人口座を申し込みます。口座の審査では、日本で誰が窓口になるのかを聞かれることが多いため、海外在住でも登記ができるという事実だけで日程を組まないようにしてください。
海外居住者だけの設立登記:海外居住者だけで会社設立の登記はできるか|外国人の住所要件と払込みの実務
このセクションの根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
SECTION 03合同会社の代表社員の決め方:定款で指名するか、社員の互選か

法務省の「合同会社の設立手続について」では、代表社員の指名または互選は、定款に定めがなければ効力を生じない相対的記載事項とされています。方法は二つあり、定款に「代表社員は〇〇とする」と直接書くか、定款に「業務執行社員の互選によって代表社員を定める」と書いたうえで、別に互選書をつくるかです。

外国人がひとりで会社設立をするなら迷いません。その人が唯一の社員、業務執行社員、代表社員になります。悩むのは、外国人と日本人、あるいは国籍の違う複数人で会社設立をする場合です。代表社員を2人以上にすると、それぞれが単独で会社を代表できるため、銀行や取引先との窓口を誰にするか、署名の権限をどう分けるかを先に話し合っておきます。
| 社員の構成 | よく使われる決め方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 外国人1人 | 定款でその人を代表社員にする | 社員が欠けると解散の理由になる |
| 外国人と日本人の2人 | 定款で一方、または両方を代表社員にする | 両方を代表にすると各自が単独で代表する |
| 経営者と出資だけの人 | 定款で業務執行社員を経営者に絞る | 出資だけの人は代表社員になれない |
※ 定款の書き方は、管轄の法務局か司法書士に事前に確認してください。
互選の形にしておくと、代表社員の交代のたびに定款を変えずに済みます。一方で、互選書という書類が1枚増えます。外国人の社員が署名する書類が増えるほど、サイン証明や翻訳の手配も増えるため、手間の少ない方を選ぶのも一つの考え方です。
このセクションの根拠:法務省「合同会社の設立手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00141.html)
印鑑登録のない外国人の代表社員:署名とサイン証明で記名押印に代える

合同会社の会社設立では、定款への署名または記名押印、登記申請書への記名押印、書面申請のときの印鑑届書と、代表社員が本人であることを示す場面が何度かあります。日本に住んで印鑑登録をしている外国人なら、日本人の会社設立と同じく市区町村の印鑑証明書を使えます。
印鑑登録をしていない場合について、法務省は、記名押印に代えて署名すればよく、その場合は署名が本人のものであることを本国官憲が証明した書面、いわゆるサイン証明書を添付すると案内しています。サイン証明書は、本国にある本国の役所のほか、日本にある本国の大使館、第三国にある本国の大使館、本国の公証人が作ったものでもよいとされています。
- 日本在住・印鑑登録あり市区町村の印鑑証明書(作成後3か月以内)
- 日本在住・印鑑登録なし在日の本国大使館などのサイン証明書
- 海外在住本国の役所や公証人、住んでいる国にある本国の大使館のサイン証明書
- 本国官憲で取れない事情がある居住国の官憲や公証人などの証明が認められる場合がある。登記所に相談
国によっては、印鑑に当たる制度があり、本国の印鑑証明を使う方法がとられることもあります。どの書類が使えるかは国籍と住んでいる国の組み合わせで変わるため、日本で会社設立をする準備の最初に、代表社員になる人ごとに一覧にしておくと抜けがありません。
サイン証明の取り方:外国人のサイン証明の取り方|会社設立の必要書類を在日公館・本国・公証人のどこで用意するか
このセクションの根拠:司法書士法人永田町事務所「宣誓供述書や署名(サイン)証明書の取得地や注意点」(https://asanagi.co.jp/2022/06/18/3590/)
外国法人が合同会社の代表社員になるとき:職務執行者と宣誓供述書

株式会社の取締役は個人に限られますが、合同会社の代表社員には法人もなれます。本国の会社が出資して日本で合同会社の会社設立をし、その本国の会社自身が代表社員になる形です。ただし法人は自分で手を動かせないため、職務を行う個人、つまり職務執行者を選び、その氏名と住所を他の社員に通知しなければなりません(会社法598条)。

法務省の案内では、代表社員が法人のときの添付書面として、その法人の登記事項証明書、職務執行者の選任に関する書面、職務執行者が就任を承諾したことを証する書面が挙げられています。日本に登記のない外国法人は、日本の登記事項証明書を出せません。司法書士法人の解説では、この場合は、本店、商号、宣誓する人が代表者であること、職務執行者を選んだことなどを書いた宣誓供述書で代える方法が一般的だと説明されています。
職務執行者を誰にするかは、外国法人の内部の手続きで決まります。親会社の代表者でなくてもよく、日本に赴任する外国人の担当者を職務執行者にする例もあります。その人が日本に住んで経営に当たるなら、在留資格は職務執行者本人について考えます。
外国法人の宣誓供述書と外為法:外国人の会社設立で外国法人が発起人になるとき|子会社と支店の違い・宣誓供述書・外為法の届出
このセクションの根拠:RSM汐留パートナーズ司法書士法人「合同会社の代表社員が法人(外国法人)の場合の登記と職務執行者」(https://shiodome.co.jp/js/blog/1956)
06代表社員の登記の表記:外国人の氏名はカタカナ、住所は海外のままでよい

合同会社の登記では、代表社員の氏名または名称と住所が登記事項になります(会社法914条7号)。法人が代表社員なら、職務執行者の氏名と住所も載ります(同条8号)。業務執行社員の氏名も登記されますが、業務を執行しない社員の氏名は登記されません。
司法書士事務所の解説では、合同会社の商号にはローマ字を使えても、個人の代表社員の氏名はローマ字では登記できず、カタカナで登記するのが一般的だと説明されています。外国法人が代表社員のときはアルファベットのまま登記されてきたという記述もありますが、同じ解説の追記では、東京の法務局から原則カタカナにするとの連絡があったとされ、扱いが一定していません。申請の前に、管轄の法務局へ確かめてください。

代表社員の氏名や住所が変わったら、2週間以内に本店の所在地で変更登記をします(会社法915条)。海外在住の代表社員が引っ越したときも同じです。日本で会社設立をしたあと、本国での転居を会社に知らせ忘れる例は少なくありません。外国人の代表社員がいる会社では、住所が変わったら知らせるという約束を、社員の間で最初にしておいてください。
表記の扱いについての解説:RSM汐留パートナーズ司法書士法人「合同会社の代表社員が法人(外国法人)の場合の登記と職務執行者」(https://shiodome.co.jp/js/blog/1956)
代表社員と在留資格:合同会社の肩書きだけでは経営・管理にならない

会社設立のときに合同会社の代表社員として登記されることと、日本で経営の仕事をしてよいかは別に判断されます。永住者や日本人の配偶者等のように活動に制限のない在留資格なら、代表社員として経営することに在留資格上の制限はありません。一方、技術・人文知識・国際業務や留学で在留している外国人が、自分の会社の代表社員として経営に当たるなら、在留資格「経営・管理」への変更を考えます。
出入国在留管理庁の「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」は、経営・管理に当たるには事業の経営または管理に実質的に参画していること、つまり重要事項の決定、事業の執行または監査の業務に従事していることが必要で、役員に就任しているということだけでは該当しない、と述べています。代表社員という肩書きも同じで、登記簿に名前があるだけでは足りません。
合同会社で経営・管理を申請する場合の資本金等の考え方、つまり出資の総額3,000万円以上という基準については、別の子記事で扱っています。
合同会社と経営・管理の基準:合同会社で会社設立した外国人の経営管理ビザ|出資の総額3,000万円の数え方と代表社員の役割
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html)
合同会社の代表社員についてよくある質問

外国人の代表社員について、相談の場でくり返し出る質問を選びました。登記所で扱いが分かれるものは、確かめ方も書いています。
代表社員を外国人と日本人の2人にできますか。
できます。代表社員の人数に上限はありません。2人とも代表社員なら、それぞれが単独で会社を代表します。銀行の届出印や契約の署名をどちらが担うかは、会社設立の前に社員の間で決めておきます。
代表社員が本国に帰ったら、会社はどうなりますか。
住所が海外に変わっても代表社員は続けられます。住所が変われば2週間以内に変更登記をします。社員が全員いなくなると解散の理由になるため、1人の会社では退社や死亡のときの扱いを定款で考えておきます。
代表社員にならずに、出資だけする外国人がいてもよいですか。
よいです。定款で業務執行社員を別の人に絞れば、その外国人は出資だけの社員になります。業務を執行しない社員の氏名は登記されませんが、定款には氏名と住所が載ります。
この項目の根拠:法務局「商業・法人登記の申請書様式」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html)
SECTION 09まとめ:外国人の代表社員は、決め方・本人の示し方・表記を先にそろえる

合同会社の代表社員には、外国人も、海外に住む人も、外国の会社もなれます。株式会社より決まりが少ない分、誰を代表社員にするかを定款でどう書くかが、そのまま会社の形になります。
- 出資する社員と、業務を執行する社員、代表社員を書き分ける
- 定款で直接指名するか、互選にするかを決める
- 代表社員ごとに、印鑑証明書かサイン証明書かを確かめる
- 外国法人が代表社員なら、職務執行者と宣誓供述書を準備する
- 登記する氏名のカタカナと住所の書き方を、法務局に確かめる
- 日本で経営に当たる人の在留資格を、別に確認する
日本で会社設立をする外国人にとって、代表社員の登記は入口にすぎません。登記は司法書士、在留資格は行政書士へ、代表社員になる人の国籍、住所、在留資格をそろえて伝えると、相談が早く進みます。
合同会社の設立手続きの工程:合同会社の設立手続きを工程ごとに|外国人が日本で会社設立を進める定款・出資・登記の書類と日程
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
代表社員になる方と、その書類を整える方へ
代表社員は、合同会社の顔です。外国人の方が代表社員として登記されると、取引先も銀行も、まずその名前を見ます。カタカナの表記ひとつでも、会社設立の最初にていねいに決めておくと、あとの手続きがずっと楽になります。
支える側の方は、本人の国籍と住所、印鑑登録の有無を聞き取るところから始めてください。そこで使う書類が決まり、本国に頼むものと日本でそろうものが分かれます。
迷ったところは、管轄の法務局や司法書士に、その一点だけ聞いてください。全部が決まるのを待たずに、進められるところから進めましょう。
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