外国人の会社設立と登記|定款の作成・認証から法務局への申請、取締役のカタカナ表記まで

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日本で会社設立を進めている外国人の方のうち、「登記」という言葉は知っていても、定款・公証役場・法務局がどうつながっているのかが見えていない方に向けて書きました。外国人の役員や出資者を迎えて登記書類を準備する日本側の担当者、書類の取りまとめを任された事務所の方にも読んでいただけるようにしています。
登記そのものは、国籍によって手続きの形が変わるものではありません。違いが出るのは、印鑑証明書の代わりに何を出すか、外国語の書類をどう訳すか、氏名をどの文字で書くか、といった周辺の部分です。そこで、この記事では手続きを順番に並べ、外国人だからこそ確認が要る箇所に印を付けるように説明しています。
細かい書き方や添付書類の一つひとつは、それぞれの子記事に分けています。金額や取り扱いは2026年10月時点の各機関の案内にもとづいており、変わることがあるため、申請の前に管轄の法務局でもう一度確かめてください。
外国人でも会社登記はできる?国籍と住所で変わること、変わらないこと

「外国人でも会社登記はできますか」という質問への答えは、できる、です。株式会社でも合同会社でも、発起人や役員が外国籍であることを理由に登記が受け付けられない、という仕組みはありません。日本で会社設立をする外国人も、日本人と同じ法務局に、同じ様式で設立の登記を申請します。
住所についても、以前ほどの壁はなくなりました。法務省の案内では、代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合でも、株式会社の設立の登記を受け付けるとされています。以前は代表取締役のうち1人は日本に住んでいる必要がありました。

一方で、国籍と住所によって変わる部分もあります。代表的なのは次の3つです。
- 本人を証明する書類日本で印鑑登録ができる人は印鑑証明書。できない人は、本国官憲などが作成した署名証明書(サイン証明)。
- 外国語の書類原則として全文の日本語訳を添えます。省略できる場合があるかは法務局に確かめます。
- 資本金の払込み発起人の口座が日本の銀行にない場合、どの口座を使うか。海外居住者向けの扱いが示されています。
ここで注意したいのは、登記ができることと、日本で会社を経営できることは別の話だという点です。自分が日本に住んで経営するのであれば、在留資格「経営・管理」の基準を別に満たす必要があります。登記は会社という器をつくる手続き、在留資格は人が日本で活動するための手続きと分けて考えておくと、混乱しにくくなります。
海外に住んだまま登記を進める場合:海外居住者だけで会社設立の登記はできるか|外国人の住所要件と払込みの実務
このセクションの根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
SECTION 02登記の前に定款をつくる:外国人の会社設立で書く事項と事業目的

登記申請書に書く商号、本店、目的、資本金の額、役員などは、ほぼすべて定款で決めた内容です。つまり、会社設立の登記で迷う場面の多くは、実は定款を書く段階で答えが出ています。外国人が日本で会社設立をするなら、登記の準備は定款から始まると考えてください。
会社法では、定款に書く事項が3種類に分かれます。欠けると定款が無効になる絶対的記載事項、書かないと効力が生じない相対的記載事項、運営の決まりごとを書く任意的記載事項です。株式会社の絶対的記載事項は、目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称と住所です。

なかでも事業目的は、登記のあとにも長く影響します。許認可の申請では目的の文言が確認され、在留資格の審査では事業計画書との食い違いが見られ、法人口座の開設では何をする会社なのかを目的から読み取られます。本国での事業名をそのままカタカナにするだけでは意味が伝わらないことがあるので、日本で一般的な言い方に置き換えておくと、どの窓口でも説明が短くなります。
定款の書き方:登記の前に定款を作る|外国人の会社設立で必ず書く事項と、書いておくと得をする事項
事業目的の決め方:定款の事業目的の決め方|外国人の会社設立で登記・許認可・在留資格・口座開設に効く書き方
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
定款の認証と電子定款:株式会社は公証役場へ、合同会社は認証なし

株式会社の定款は、公証人の認証を受けて初めて効力を持ちます。認証を受けるのは本店所在地と同じ都道府県の公証役場で、外国人が発起人の場合は、本人確認の資料として印鑑証明書のほか、在留カードやパスポート、署名証明書が挙げられています。何が使えるかは本人が出向くか代理を立てるかでも変わるため、予約の段階で公証役場に確かめておくと当日に慌てません。
合同会社には定款の認証がありません。作成した定款をそのまま登記の添付書類にします。日本で会社設立をする外国人が合同会社を選ぶ理由のひとつは、この工程がまるごとないことにあります。

電子定款にすれば4万円の収入印紙はかかりませんが、自分で作るには電子署名の環境が要ります。住民登録のない外国人はマイナンバーカードを持てないため、実務では司法書士や行政書士が電子定款を作成し、発起人から委任を受ける形がよく使われます。依頼の報酬が4万円を下回れば、紙で作るより安く済む計算です。
認証の手数料そのものは、紙でも電子でも同じです。認証を受けたら定款の謄本(1ページ250円とされています)を必要な部数だけ受け取り、登記の申請に使います。
電子定款の仕組みと手順:電子定款で収入印紙4万円を節約|外国人の会社設立で登記の前に整える定款の手順
このセクションの根拠:日本公証人連合会「会社の定款認証手数料の改定」(https://www.koshonin.gr.jp/chg_teikanfee)
本店所在地と管轄の法務局:外国人の登記はどこに出すか

設立の登記は、本店所在地を管轄する法務局に申請します。「法務局 外国人 登記」と検索して外国人専用の窓口を探す方もいますが、商業登記に外国人向けの別の窓口があるわけではなく、本店の住所で決まる管轄の法務局がそのまま相談先になります。
法務局では登記手続の案内を行っており、多くの庁で予約制です。前橋地方法務局の案内を例にとると、電話・対面・ウェブ会議の3つの方法があり、1回20分以内とされています。申請書の作成を代わりに行うことや、個別の事案への助言、申請書の事前の確認は対象外とされているため、聞きたいことを箇条書きにしてから予約すると時間を有効に使えます。
- 本店の住所を決める事務所の契約が法人登記に使える内容か、在留資格の事業所として使えるかも確認します。
- 管轄の法務局を調べる法務局のウェブサイトで、住所から管轄を確認できます。
- 手続案内を予約する署名証明の作成者、訳文の要否、払込みの方法など、外国人ならではの論点をまとめて聞きます。
- 同一住所・同一商号を確かめる同じ住所に同じ商号の会社は登記できません。シェアオフィスでは特に注意します。
本店の場所は、登記だけで決めるものではありません。在留資格「経営・管理」を目指すなら、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められないとされ、事業所の確保が別に見られます。会社設立の書類と入管に出す書類で住所の表記がずれていると説明を求められるので、建物名や部屋番号まで同じ書き方にそろえておいてください。
本店所在地の選び方:登記する本店所在地をどこにするか|外国人の会社設立で税金・信用・移転に効く選び方
このセクションの根拠:前橋地方法務局「登記手続の御案内」(https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/page000001_00381.html)
05法務局への登記申請:外国人の場合の添付書類、署名証明、日本語訳

株式会社の設立登記では、登記申請書に、認証を受けた定款、払込みがあったことを証する書面、設立時取締役の就任承諾書、印鑑証明書またはその代わりの書類、印鑑届書、登録免許税の納付用台紙などを添えます。様式と記載例は法務局のウェブサイトで、会社の形態ごとに公開されています。

署名証明は、本国官憲が作成したものが基本です。法務省の案内では、居住している国にある本国官憲(たとえば住んでいる国にある本国の大使館)が作成したものでも差し支えないとされ、本国官憲の証明が得られない場合の扱いも別に示されています。国籍と住んでいる国の組み合わせで取れる書類が変わるので、自分の国の在日公館に早めに問い合わせてください。
払込みについても、法務省の案内に具体的な扱いがあります。払込取扱機関には内国銀行の国内の本支店のほか、内国銀行の海外支店(現地法人は除く)や外国銀行の日本国内の支店も含まれます。発起人と設立時取締役の全員が日本に住所を有しない場合は、委任状を付けたうえで第三者を口座名義人にできる扱いも示されています。
設立登記の申請と添付書類:設立登記の申請を法務局で通すには|外国人の会社設立の申請書・添付書類・補正
このセクションの根拠:法務局「商業・法人登記の申請書様式」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html)
外国人取締役の登記はカタカナで:氏名の表記を書類全体でそろえる

「外国人 取締役 登記 カタカナ」という組み合わせで調べる方が多いのは、登記簿にどう名前が載るのかが分かりにくいからでしょう。商業登記では、外国人の役員の氏名はカタカナで記載するのが原則とされています。中国や台湾など漢字を使う国の方は、登記に使える漢字であれば漢字で登記でき、簡体字のように使えない文字を含む場合はカタカナに置き換える、という扱いが司法書士の解説で示されています。
| 論点 | 考え方 |
|---|---|
| カタカナの決め方 | 住民票や印鑑証明書の記載があればそれに合わせる。なければ本人に聞き、原音に近い表記を選ぶ |
| 並び順 | 日本式に姓、名の順に並べる。姓と名の間に空白は使えないため、「・」などで区切るか続けて書く |
| ローマ字 | 不動産登記では2024年4月から所有者の氏名にローマ字を併記する扱いが始まったが、商業登記はカタカナの原則のまま |
| 印鑑証明書との一致 | 日本で印鑑登録をしている人は、印鑑証明書の表記と申請書のカタカナが完全に一致しているかを確かめる |
表記で困るのは、登記のあとです。法人口座の申込み、税務署や年金事務所への届出、在留資格の申請、取引先との契約書。どこかで「パスポートはこの綴り、登記はこのカタカナ」という対応を説明することになります。会社設立の準備に入った時点で、カタカナ表記を一つに決め、定款、就任承諾書、登記申請書のすべてで同じ書き方を使ってください。
登記の氏名表記:外国人取締役の登記はカタカナか|会社設立でローマ字・漢字・通称名から氏名を決める手順と書類
このセクションの根拠:司法書士事務所リーガルエステート「外国人関与の登記実務|氏名表記(カタカナ・ローマ字)の論点整理」(https://s-legalestate.com/name-notation)
登録免許税と設立日、そして登記のあとに続く変更登記

設立の登記には登録免許税がかかります。国税庁の税額表では、株式会社は資本金の額の1000分の7で、計算した額が15万円に満たないときは15万円です。合同会社も同じく1000分の7ですが、最低額は6万円とされています。在留資格の基準に合わせて資本金を3,000万円にした株式会社なら、1000分の7で21万円になります。

会社の設立日は、登記が完了した日ではなく、申請した日です。完了までは混み具合によって数日から2週間ほどかかり、その間は登記事項証明書が取れません。法人口座の申込みや在留資格の申請は証明書が出てからになるので、会社設立の日程はこの待ち時間を入れて組みます。
登記は一度で終わりではありません。役員の任期が満ちたときの重任、本店の移転、資本金の増加、目的や商号の変更、代表者の住所変更。そのたびに変更登記が要ります。役員に関する変更は1件3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)、本店の移転は1か所3万円とされています。外国人の代表者が本国で引っ越した場合も対象になる点は見落とされがちです。
設立後に必要になる変更登記:会社設立のあとに続く変更登記|外国人の会社が法務局へ出す手続きの期限と費用
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
SECTION 08外国人の会社登記でよく聞かれること

外国人の会社設立の相談で、登記についてくり返し出てくる質問をまとめました。事案によって答えが変わることがあるので、判断の材料としてお読みください。
外国人でも会社登記はできますか。
できます。国籍を理由に登記が受け付けられないという仕組みはありません。法務省の案内では、代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合でも株式会社の設立の登記が受け付けられるとされています。ただし、日本で経営するための在留資格は別に検討が要ります。
外国人が法務局で登記を申請するとき、通訳を連れて行ってもよいですか。
手続案内や窓口でのやり取りは日本語で行われるため、日本語ができる同席者がいると話が進みやすくなります。申請書の作成や代理申請を任せたい場合は、司法書士への依頼を検討してください。
海外に住んでいる発起人の資本金は、誰の口座に払い込めばよいですか。
発起人の口座が基本で、設立時取締役の口座も委任状を付ければ使えるとされています。発起人と設立時取締役の全員が日本に住所を有しない場合は、委任状を付けたうえで第三者の口座も使える扱いが法務省の案内に示されています。
設立日を本国の記念日に合わせることはできますか。
設立日は登記を申請した日になるため、書類をそろえてその日に申請すれば合わせられます。ただし法務局の窓口は土日祝日に閉まっている点に注意してください。
この項目の根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
まとめ:登記は定款で半分決まる

外国人の会社設立における登記を、定款から設立後の変更登記まで一通り見てきました。手続きの骨組みは日本人の会社設立と同じで、外国人だから別の手続きがあるわけではありません。違いが出るのは、本人を証明する書類、訳文、払込みの口座、氏名の表記という周辺の部分です。
- 定款で商号・目的・本店・資本金・役員を決める。登記にそのまま写る
- 株式会社は公証役場で認証を受ける。電子定款なら収入印紙4万円がかからない
- 本店の住所で管轄の法務局が決まる。手続案内は予約して使う
- 印鑑登録ができない人は署名証明を、外国語の書類には日本語訳を用意する
- 外国人取締役の氏名はカタカナ表記を一つに決め、全書類でそろえる
- 登録免許税を用意して申請する。申請した日が設立日になる
登記が終われば、税務署や年金事務所への届出、法人口座、在留資格と次の手続きが続きます。登記事項証明書はそのすべてで使う書類なので、正確に仕上げておくことが、その後の手続きを軽くすることにつながります。
この記事は一般的な整理です。登記の個別の判断は管轄の法務局か司法書士へ、在留資格に関わる部分は行政書士へご相談ください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
登記の準備を始める方へ
登記の書類は量が多く見えますが、ほとんどは定款で決めたことを別の紙に写していく作業です。迷ったときは「この内容は定款のどこで決めたか」に戻ると、書くべきことが見えてきます。
日本で会社設立をする外国人の方にとって、いちばん時間がかかるのは本国での署名証明の取り寄せと翻訳です。会社の中身がおおむね固まった段階で、在日公館と管轄の法務局の両方に連絡を入れておくと、あとの日程が組みやすくなります。
書類を手伝う側の方は、氏名の表記と住所の書き方を最初に一つに決めてしまうことをおすすめします。小さな表記の揺れが、登記のあとの手続きで何度も説明を求められる原因になるからです。
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