登記する本店所在地をどこにするか|外国人の会社設立で税金・信用・移転に効く選び方

この記事の対象
日本で会社設立をするにあたって、本店をどこにするかを決めようとしている外国人の方に向けた記事です。手続きを手伝う日本側の担当者にも読んでいただけます。
本店所在地は、定款に書いて登記される項目です。誰でも登記事項証明書を取って見ることができます。決め方によって、税金や、あとの手続きの手間が変わります。
以下は一般的な整理です。個別の判断は事業の内容によって変わります。会社設立の設計については、司法書士や税理士へご相談ください。
登記される本店所在地とは何か

本店所在地は、会社の住所として登記される項目です。定款の絶対的記載事項のひとつで、書かないと定款が成立しません。
登記されると、登記事項証明書に記載されます。誰でも取得できるため、取引先も、金融機関も、その住所を見ることができます。日本で会社設立をする外国人にとって、対外的に示す住所になります。
また、どの法務局に登記を申請するか、どの税務署に届出をするかも、この住所で決まります。会社設立の後の手続きの窓口が、ここで決まることになります。
複数の拠点がある場合でも、本店はひとつです。ほかの拠点は支店や営業所という扱いになります。支店を登記することもできますが、その場合は別の手続きと費用がかかります。
在留資格「経営・管理」を目指す外国人が日本で会社設立をする場合、この住所が事業所として使えるかどうかも別に見られます。登記と在留資格の2つの観点から考えることになります。
外国人が日本で会社設立をするとき、本店の住所は複数の場面で使われます。定款、登記申請書、税務署への届出、法人口座の申込み、在留資格の申請。すべてで同じ住所を書くことになります。表記も統一してください。
住所の書き方にも注意が必要です。日本の住所表記は、都道府県、市区町村、町名、番地、建物名という順番です。建物名と部屋番号まで書くかどうかも、あらかじめ決めておいてください。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
定款の本店所在地は市区町村までか、番地まで書くか

定款では、本店の所在地を最小行政区画、つまり市区町村までにしておく方法と、番地まで書く方法があります。
市区町村までにしておくと、同じ市区町村内で移転した場合に定款の変更が不要になります。番地まで書いてしまうと、移転のたびに定款変更の手続きが必要になります。
日本で会社設立をする外国人が、当面は小さな事務所から始めて、後で移ることを考えている場合、市区町村までにしておくほうが身軽です。
登記では番地まで登記されます。定款で市区町村までにしていても、登記の段階で具体的な住所を決めることになります。この点は変わりません。
どちらにするかは、会社設立の準備の段階で決めます。あとから定款の書き方を変えるには、定款変更の手続きが必要になります。
実務では、市区町村までにしておく方法が多く選ばれます。会社設立の後に事務所を移すことは珍しくないためです。外国人が日本で会社設立をする場合、最初は小さく始めて後で広げることも多く、この書き方が向いています。
なお、定款で市区町村までにしていても、登記の申請では番地まで記載します。定款の書き方と、登記される内容は別のものです。会社設立の書類を作るときに、この違いを押さえておいてください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
03法人住民税の均等割との関係

法人住民税には、所得がなくてもかかる均等割という部分があります。都道府県と市区町村に納めるもので、資本金等の額と従業者数によって段階が分かれています。
税率は自治体ごとに定められています。本店をどこに置くかによって、この負担が変わることがあります。日本で会社設立をする外国人が長く事業を続ける場合、毎年の負担として効いてきます。
ただし、金額の差はそれほど大きくないことが多く、これだけで場所を決めるのは現実的ではありません。事業のやりやすさを優先するほうが合理的です。
複数の自治体に事務所を持つと、それぞれに均等割がかかります。支店を出すときは、この点も考えてください。
均等割の金額は、資本金等の額によっても変わります。在留資格「経営・管理」の基準に合わせて資本金3,000万円にすると、資本金の少ない会社より均等割が高くなることがあります。日本で会社設立をする外国人は、この点も資金計画に入れてください。
このセクションの根拠:国税庁「No.5100 新設法人の届出書類」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm)
取引先や金融機関からの見え方

設立したばかりの会社には実績がありません。取引先や金融機関が判断材料にできるものは限られます。本店の住所も、そのひとつです。
バーチャルオフィスの住所や、多くの会社が登記されている住所だと、確認が丁寧になることがあります。法人口座の開設審査でも同じです。
外国人が日本で会社設立をする場合、もともと説明を求められる場面が多くなります。住所の面でも説明が必要になると、手続きが長引くことがあります。
事業の内容に見合った場所を選ぶ、というのが基本の考え方です。飲食業なら店舗、物販なら在庫を置ける場所、士業やコンサルティングなら打ち合わせのできる空間。
また、取引先が集まっている地域に拠点を置くことで、事業がやりやすくなることもあります。会社設立の場所選びは、事業の戦略でもあります。
また、住所を見れば、その地域の相場も分かります。極端に安い場所を選ぶと、事業の規模に見合っていないと見られることもあります。会社設立の場所選びは、こうした見え方も含めた判断になります。
このセクションの根拠:経営管理ビザ・日本進出サポートセンター「外資系の新設法人はなぜ銀行口座を作りにくいのか」(https://touch.or.jp/keiei/foreign-company-bank-account-japan/)
在留資格の面から見た本店

在留資格「経営・管理」を目指す外国人が日本で会社設立をする場合、本店の住所が事業所として使えるかどうかが見られます。
入管庁の資料では、改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められないとされています。
つまり、登記上の本店を自宅にすることはできても、在留資格の面では別の事務所が必要になる可能性があります。会社設立の設計としては、両方を同じ場所にするのが自然です。
契約の名義と用途も見られます。会社名義で、事業用として契約されていることが基本です。契約期間についても、短期や月単位では継続性の説明が難しくなることがあります。
物件を決める前に、行政書士に条件を確認してもらってください。契約してから条件に合わないと分かると、借り直しになります。
事業所の写真も、住所と一致していることが分かるように撮ってください。建物の外観と、入口の表示。外国人が日本で会社設立をして在留資格を申請するとき、住所と実際の場所が結びつく資料が求められます。
事務所と本店を別の場所にすることもできます。ただし、その場合はなぜ分かれているのかを説明することになります。外国人が日本で会社設立をするときは、同じ場所にしておくほうが説明が簡単です。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
SECTION 06登記の前に、同一住所・同一商号を確かめる

同一の住所に同一の商号を登記することはできません。会社設立の準備で、この確認を忘れることがあります。
レンタルオフィスやシェアオフィスなど、同じ住所に多くの会社が登記されている場所を本店にする場合、事前に確認してください。法務局で調べることができます。
似た商号でも、完全に同じでなければ登記できます。ただし、不正の目的で他社と誤認されるような商号を使うことは、別の法令で制限されることがあります。
日本で会社設立をする外国人が、本国のブランド名をそのまま使う場合も、この確認をしておいてください。同じ名前の会社が同じ住所にあることは考えにくいですが、念のためです。
確認は法務局の窓口でできます。オンラインで登記情報を調べるサービスもあります。会社設立の準備として、商号と住所の組み合わせを確認しておいてください。
なお、住所の表記が登記と実際で違うことがあります。建物名を省略しているかどうか、部屋番号を入れているかどうか。外国人が日本で会社設立をするときは、契約書と登記の表記をそろえておいてください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
本店を移転したときの変更登記と費用

本店を移転したら、変更登記が必要です。登録免許税は、本店の移転として1か所につき3万円とされています。
移転先が同じ法務局の管轄内か、別の管轄かで手続きが変わります。管轄が変わる場合、移転前と移転後の両方の法務局に関わる手続きになるため、負担が増えることがあります。
定款で番地まで書いている場合は、定款の変更も必要になります。市区町村までにしていて、同じ市区町村内での移転であれば、定款の変更は不要です。
登記だけでなく、税務署、都道府県、市区町村、年金事務所、金融機関への届出も必要になります。日本で会社設立をした外国人が移転するときは、一覧を作って進めてください。
在留資格「経営・管理」を持っている場合、移転先も事業所の条件を満たす必要があります。次の在留期間の更新で、事業の状況とあわせて見られることになります。
移転の時期は、決算期や在留期間の更新と重ならないようにするのが無難です。手続きが重なると負担が大きくなります。日本で会社設立をした外国人は、年間の予定を見ながら時期を決めてください。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
定款には番地まで書くべきですか。
市区町村までにしておくと、同じ市区町村内での移転で定款の変更が不要になります。番地まで書くと、移転のたびに定款変更が必要です。将来の移転の可能性を考えて決めてください。
本店の場所で税金は変わりますか。
法人住民税の均等割は自治体ごとに税率が定められているため、場所によって変わることがあります。ただし差はそれほど大きくないことが多く、事業のやりやすさを優先するほうが合理的です。
本店を移転するといくらかかりますか。
登録免許税は本店の移転として1か所につき3万円とされています。管轄が変わる場合は手続きが増えます。加えて、税務署や年金事務所などへの届出も必要になります。
この項目の根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
09まとめ:場所は事業から決める

外国人が日本で会社設立をするときの本店所在地について見てきました。税金や手続きの手間も関係しますが、まずは事業がやりやすい場所を選ぶのが基本です。
- 事業の内容に見合った場所を選ぶ。取引先や顧客からの通いやすさも考える
- 在留資格を目指すなら、事業所の条件を満たすかを確認する
- 定款では市区町村までにしておくと、同じ市区町村内の移転が楽になる
- 同一住所・同一商号の確認をする。レンタルオフィスでは特に注意
- 移転には変更登記と各所への届出が必要になることを知っておく
個別の判断は事業の内容によって変わります。会社設立の設計については司法書士や税理士へ、在留資格の条件については行政書士へご相談ください。
最後にひとつ。本店の住所は、会社の顔になる情報です。名刺にもウェブサイトにも載ります。日本で会社設立をする外国人にとって、事業の印象を左右する部分でもあります。事業の内容に合った場所を選んでください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
読んでくださった方へ
本店の場所は、会社設立のときに決めて、そのまま何年も使うことになる項目です。あとから変えるには手続きと費用がかかります。
日本で会社設立をする外国人にとって、住所は在留資格にも直結します。事業のやりやすさと、制度上の条件の両方を見て決めてください。
迷ったら、事業の相手がどこにいるかを考えてみてください。そこから場所が決まることもあります。
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