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外国人取締役の登記はカタカナか|会社設立でローマ字・漢字・通称名から氏名を決める手順と書類

外国人取締役の登記はカタカナか|会社設立でローマ字・漢字・通称名から氏名を決める手順と書類

名前の書き方で手が止まっている方へ

外国人の方が日本で会社設立をして取締役になるとき、パスポートどおりのアルファベットで登記されると思っていると、書類を作る段階で戸惑います。この記事は、取締役として登記される外国人本人と、定款や登記の書類を作る日本側の担当者に向けて書きました。

関連キーワードに「外国人 取締役 登記 カタカナ」が出てくるのは、名前の書き方が、法務局・銀行・在留資格の手続きをまたいで残り続ける情報だからでしょう。会社設立のときに決めた表記は、その後に作る会社の書類にそのまま引き継がれます。

以下は2026年10月時点で法務省・出入国在留管理庁・内閣府が公表している資料と、司法書士事務所の解説にもとづく整理です。表記の細かな扱いは法務局の判断に委ねられる部分があるため、最後は申請先の法務局に確かめてください。

01外国人取締役の登記はカタカナか:ローマ字が使えるのは商号まで

商号と取締役の氏名で使える文字の違い
商号と取締役の氏名で使える文字の違い

法務省は、平成14年(2002年)11月1日から、商号の登記にローマ字(大文字・小文字)とアラビヤ数字、「&」「’」「,」「‐」「.」「・」の符号を使えるようにしたと案内しています。符号は字句を区切るためだけに使え、ローマ字で複数の単語を書くときに限って、単語の間に空白を入れることもできます。会社の名前を英語風に登記することは、いまでは珍しくありません。

ところが、取締役の氏名は事情が違います。司法書士法人の解説では、商号にローマ字を使えても役員の氏名はローマ字では登記できず、本人の書類がローマ字だけなら、カタカナで登記するのが一般的だと説明されています。別の司法書士事務所も、登記制度が日本語の表記を前提にしているため、旅券どおりのアルファベットでは登記できないと依頼者に伝えるよう勧めています。

商号と取締役の氏名で使える文字(法務省の案内と司法書士の解説をもとに作成)
商号と取締役の氏名で使える文字(法務省の案内と司法書士の解説をもとに作成)

法務局の設立登記申請書の記載例では、商号のフリガナをカタカナで書くよう求め、このフリガナは国税庁の法人番号公表サイトを通じて公表されると説明しています。外国人が日本で会社設立をするとき、会社名は英語のまま、フリガナと代表者の名前はカタカナ、という組み合わせになることが多いのはこのためです。

このセクションの根拠:法務省「商号にローマ字等を用いることについて」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html)

カタカナの読み方は誰が決めるのか:本人の申告と、すでに使っている表記

外国人取締役のカタカナ表記の決め方
外国人取締役のカタカナ表記の決め方

ふくおか司法書士法人の解説では、カタカナの読み方は本人の申告どおりに登記され、読み方を証明する書類は求められないとされています。韓国籍の方の名前を「キム・テヒョン」と書くか「キムテヒョン」と書くかは、本人が選べるということです。日本で会社設立をする外国人にとっては、自分の名前の響きを自分で決められる場面でもあります。

自由に決められる分、誰がいつ決めたのかがあいまいになりがちです。別の司法書士事務所の解説は、住民票や印鑑証明書にカタカナや通称の表記があればそれを優先し、なければ本人に発音を確かめて決め、その経緯を記録しておくよう勧めています。「デビッド」と「デイビッド」のような違いが、あとから書類の食い違いとして表に出ることがあるからです。

  1. 公的書類を見る住民票や印鑑証明書に、カタカナや通称の表記があるかを確かめます。
  2. すでに使っている表記を集める名刺、グループ会社の登記、プレスリリースなどで使われているカタカナを並べます。
  3. 本人に発音を確かめる公的書類に表記がなければ、本人の発音を聞いて候補を決めます。
  4. 決めた理由を残す誰が、何を根拠に決めたかをメモにして、会社設立の書類一式と一緒に保管します。

日本に住んでいない取締役の場合、サイン証明書や本人確認の書類は外国語で作られます。司法書士事務所の論考では、原文にカタカナがなくても、添付する訳文に記載したカタカナで登記できるとされています。訳文を作る人と定款を作る人が別のときは、先にカタカナを決めて共有しておくと、書き直しが起きません。

このセクションの根拠:ふくおか司法書士法人「外国人が役員に就任するときの困った話」(https://www.fukuoka-shihousyoshi.jp/column/9656)

姓と名の順、中点、空白、ミドルネーム:カタカナ表記で迷う4つの点

カタカナ表記で迷いやすい点
カタカナ表記で迷いやすい点

解説の間で一致しているのは、登記では氏名の途中に空白を入れられないという点です。ふくおか司法書士法人の解説は、「キム・テヒョン」のように中点で区切るか、「キムテヒョン」のように続けて書くとしています。

カタカナ表記で迷う点と、解説で示されている扱い(2026年10月時点)
論点 解説で示されている扱い 決めるときの目安
空白 入れられないとされる 中点で区切るか、続けて書く
区切りの記号 「・」の例が多く、「、」を挙げる解説もある 申請先の法務局に確かめる
姓と名の順 姓を先にするとする解説と、名を先にした例を示す解説がある 旅券の記載と法務局の扱いを確かめる
ミドルネーム 含めても省略してもよいとする解説がある 旅券・在留カードとの対応を説明できる形にする

※ ふくおか司法書士法人、司法書士事務所リーガルエステート、司栗事務所の解説をもとに作成。法務局の公表資料で明示された決まりではありません。

姓と名の順は、解説によって書き方が分かれます。日本の慣習に合わせて姓を先にするという解説がある一方、名を先にした例をそのまま紹介している論考もあります。どちらか一方しか認めないと定めた公表資料は見当たらなかったため、旅券の記載と申請先の法務局の扱いを確かめて決めるのが確実です。

ミドルネームも、含める実務と省略する実務の両方があると説明されています。省略すると旅券の表記と登記の表記が一対一で対応しなくなり、金融機関などで同じ人だと説明する場面が増えるかもしれません。外国人の取締役本人が、どの名前で呼ばれたいかも聞いたうえで決めてください。日本での会社設立は、この名前で取引先と付き合い始めることでもあります。

このセクションの根拠:司法書士事務所リーガルエステート「外国人関与の登記実務|氏名表記(カタカナ・ローマ字)の論点整理」(https://s-legalestate.com/name-notation)

SECTION 04漢字圏の外国人は漢字で登記できるか:在留カードの漢字併記と、簡体字の扱い

漢字圏の外国人取締役の氏名
漢字圏の外国人取締役の氏名

中国や韓国、台湾など漢字を使う国・地域の方は、日本で会社設立をするとき、取締役の登記を漢字でしたいと考えることが多いはずです。司法書士法人まちたまの解説では、漢字圏の出身者は漢字で登記することもでき、漢字名が載った公的書類を用意できれば、その漢字で登記できるとされています。

日本に住む外国人がまず確かめるのは在留カードです。出入国在留管理庁は、在留カードの氏名はローマ字表記を原則としつつ、氏名に漢字を使う方はローマ字に加えて漢字を併記できるとしています。旅券など漢字氏名が分かる資料を出して地方出入国在留管理官署で手続をすると、漢字が併記された新しい在留カードが交付されます。

漢字で取締役を登記したいときの順番(出入国在留管理庁の案内と司法書士の事例をもとに作成)
漢字で取締役を登記したいときの順番(出入国在留管理庁の案内と司法書士の事例をもとに作成)

ふくおか司法書士法人の事例では、本人確認書類にローマ字しかなかったため、入管で在留カードに漢字を併記してもらい、印鑑証明書にも漢字が載るようにしてから登記したと紹介されています。

注意したいのは、中国の簡体字のように日本の登記で使えない字形が含まれる場合です。司法書士事務所の解説では、そのときは漢字圏の出身者でもカタカナに変える必要があるとされています。サイン証明書に漢字がない韓国籍の役員を漢字で登記しようとした事例では、法務局の担当者によって回答が分かれたという報告もあります。漢字を使いたいときは、会社設立の日程が固まる前に申請先の法務局に相談してください。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「在留カード」はどういうカード?(在留カードの氏名に漢字を表記することはできますか)」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/newimmiact_4_point.html)

通称名で取締役を登記する場合:印鑑証明書に載っている名前に限られる

通称名で取締役を登記するときの条件
通称名で取締役を登記するときの条件

日本に長く住む外国人の中には、住民票に通称を登録し、ふだんは日本風の名前を使っている方もいます。RSM汐留パートナーズ司法書士法人の解説では、取締役や監査役の氏名は、本名でも通称名でも登記できるとされています。

  • 登記できる通称名印鑑証明書などの公的な証明書に記載されている通称名
  • 登記できない名前個人的に使っているだけの名前。定款や議事録に同じ名前を書いても結論は変わらないとされます。
  • 本名との併記カッコ書きなどの形でもできないとされます。
  • 芸名・ペンネーム役員の氏名としては登記できないとされます。

同じ解説は、印鑑証明書を添付する取締役の場合、登記できる氏名は印鑑証明書に記載されたものに限られると説明しています。外国人住民の通称の登録は市区町村の手続で、印鑑登録や印鑑証明書の取り方とも関わります。会社設立の前に、どの名前で印鑑登録をするかを決めておくと、取締役の登記まで一つの名前で通せます。

このセクションの根拠:RSM汐留パートナーズ司法書士法人「取締役、監査役の氏名を通称名で登記」(https://shiodome.co.jp/js/blog/3890)

不動産登記のローマ字併記との違い:取締役の登記にはローマ字は付かない

不動産登記と会社の登記の、氏名の扱いの違い
不動産登記と会社の登記の、氏名の扱いの違い

2024年4月から外国人の氏名にローマ字を併記するようになった、という話を聞いて、取締役の登記にも同じことができると考える方がいます。法務省民事局の令和6年3月22日付の通達は、不動産登記規則の改正にともなう扱いを示したもので、ローマ字氏名は外国人である所有権の登記名義人の氏名にのみ併記し、それ以外の人の氏名には併記できないとしています。

不動産登記と会社の登記の違い(法務省民事局の通達と司法書士の解説をもとに作成)
不動産登記と会社の登記の違い(法務省民事局の通達と司法書士の解説をもとに作成)

同じ通達では、併記するローマ字氏名は登記事項ではなく氏名を補足する事項だと位置づけ、原則として大文字で書き、氏と名の間に空白を入れて、中点などの記号は使わないとしています。解説で示されている取締役のカタカナ表記の扱いとは、空白と中点の決まりがちょうど逆になっています。

司法書士事務所の解説も、会社の登記では従来どおりカタカナの原則が維持され、ローマ字の併記は求められていないとして、両者を混同しないよう注意を促しています。会社設立と自宅の購入を同じ時期に進める外国人の方は、書類ごとに別の決まりがあると覚えておいてください。

このセクションの根拠:法務省民事局「不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(ローマ字氏名併記関係)(通達)」(https://www.moj.go.jp/content/001416031.pdf)

07英語で書類を作っても登記は日本語:会社設立の英語対応ツールとカタカナ

会社設立登記の英語対応と氏名の表記
会社設立登記の英語対応と氏名の表記

外国人の会社設立を後押しする仕組みに、国家戦略特区での会社設立登記の英語対応があります。内閣府地方創生推進事務局のページでは、法務省のツールを使って英語での入力・選択だけで申請書と定款などを作れるようにし、自治体がその手続きを支援する事業として、令和7年(2025年)2月26日から始まったと案内されています。

英語対応の支援ツールで作れる場合(法務省民事局商事課長の令和6年11月25日付通知による)
項目 内容
対象区域 札幌市・東京都・大阪市・福岡市
会社の種類 本店をこの区域に置く株式会社か合同会社の設立
株式会社の条件 発起設立で、発起人が3名以内・全員が個人、公開会社でないこと
申請の形 会社を代表する人本人が書面で申請すること

※ 窓口は自治体ごとに異なります(東京都は東京開業ワンストップセンターなど)。最新の条件は各自治体の案内で確かめてください。

通知によると、このツールは英語の入力・選択から、会社設立の登記の申請書と添付書面、印鑑届書を作るためのものです。英語で作業をしても、法務局に出すのは日本語の書類で、取締役の氏名もカタカナなどの日本文字で記録されることに変わりはありません。

どの段階でどの表記を入れるかはツールの手引きに従い、出来上がった申請書の氏名欄が、前のセクションまでで決めたカタカナと同じになっているかを確かめてから提出してください。補正など、ツールだけでは対応が難しい部分は特区の自治体が支援する仕組みとされています。

このセクションの根拠:内閣府地方創生推進事務局「国家戦略特別区域会社設立登記手続の英語対応事業」(https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/business_241125_gyousei_eigo.html)

決めたカタカナを書類ごとにそろえる:定款から法人口座、在留資格まで

外国人取締役の氏名をそろえる書類
外国人取締役の氏名をそろえる書類

外国人取締役の氏名は、定款、就任承諾書、設立登記の申請書、印鑑届書、本人確認の書類の訳文と、会社設立のあいだに何度も書きます。法務省は、設立の登記や取締役の就任の登記では、就任承諾書などに書いた氏名・住所と同じ氏名・住所が載った公的な証明書を添えるよう案内しています。書類のあいだで表記がずれると、この一致を説明できなくなります。

カタカナ表記をそろえる書類の例
カタカナ表記をそろえる書類の例

登記が終わったあとも、登記簿のカタカナは法人口座の開設や取引先との契約、在留資格の手続きで照らし合わされます。登記簿と在留カードの表記が違えば、同じ人であることを説明する手間が増えます。書類を作り始める前に、ローマ字・カタカナ・漢字の対応を一覧にして関係者に配っておくと安心です。

このセクションの根拠:法務省「添付書面としての本人確認証明書及び旧氏の併記について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00085.html)

まとめ:カタカナ表記は、会社設立の最初に1回だけ決める

外国人取締役の氏名表記のまとめ
外国人取締役の氏名表記のまとめ

外国人取締役の氏名は、ローマ字では登記できず、カタカナで書くのが基本です。漢字圏の方は漢字が載った公的書類があれば漢字で、印鑑証明書に通称名がある方は通称名で登記する道もあります。どの表記にするかは本人の申告で決まる部分が大きく、だからこそ最初に決めて記録しておくことが効いてきます。

  1. 公的書類(住民票・印鑑証明書・在留カード)に載っている表記を確かめる
  2. カタカナ・漢字・通称名のどれで登記するかを決める
  3. 空白を入れない、区切りと姓名の順をどうするかを決め、理由を残す
  4. 訳文・定款・就任承諾書・申請書を同じ表記で作る
  5. 迷う点は、会社設立の書類を作る前に申請先の法務局に確かめる

表記の扱いは、法務局の担当者によって判断が分かれた事例も報告されています。日本で会社設立をする外国人の方は、司法書士に依頼する場合でも、どの名前で登記されたいかを自分の言葉で伝えてください。

このセクションの根拠:司法書士・行政書士 司栗事務所「外国人の氏名を登記する際の日本語表記の方法等に関する論点」(https://sigrioffice.jp/6449/)

日本で使う自分の名前を、これから決める方へ

カタカナの名前は、ただの読みがなではありません。登記簿に載ったその表記が、日本の取引先や銀行があなたを呼ぶ名前になります。響きに納得できるかどうかを、遠慮せずに確かめてください。

外国人の取締役を迎える日本側の方は、書類を作る前に「この書き方でいいですか」と本人に一度見せてあげてください。その数分が、会社設立のあとに続く書類の書き直しを減らします。

名前の書き方が決まれば、登記の書類づくりは一気に進みます。次は、取締役の登記に添える必要書類をそろえていきましょう。

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