定款の事業目的の決め方|外国人の会社設立で登記・許認可・在留資格・口座開設に効く書き方

この記事の対象
日本で会社設立をするにあたって、定款に書く事業目的を決めようとしている外国人の方に向けた記事です。何をどう書けばよいのか迷っている段階を想定しています。
事業目的は、定款に書いてそのまま登記される項目です。誰でも登記事項証明書を取って見ることができます。書き方によって、許認可、在留資格、法人口座の開設という3つの場面に影響します。
以下は一般的な整理です。許認可が必要な事業では、目的の文言について所管の窓口へご確認ください。会社設立の定款については司法書士や行政書士へご相談ください。
定款に書き、登記される事業目的とは

事業目的は、その会社がどういう事業を行うのかを示す項目です。定款の絶対的記載事項のひとつで、書かないと定款が成立しません。会社設立の登記でもそのまま登記されます。
登記された内容は、登記事項証明書を取れば誰でも見ることができます。取引先が相手の会社を確認するとき、この項目を見ることがあります。日本で会社設立をする外国人にとって、対外的な名刺のような役割も持ちます。
会社は、定款に書いた目的の範囲内で活動するのが原則とされています。書いていない事業を始める場合、目的の変更が必要になることがあります。変更には定款変更と登記が必要で、登録免許税もかかります。
そのため、いま始める事業に加えて、近い将来に始める可能性のある事業まで書いておくのが一般的です。ただし、書きすぎると別の問題が出てきます。
外国人が日本で会社設立をする場合、この項目は在留資格の審査でも見られます。事業計画書に書いた内容と食い違っていると、説明を求められることになります。
外国人が日本で会社設立をするとき、事業目的を書く作業は日本語での表現の問題でもあります。本国での事業をそのまま訳しても、日本の商慣行では通じない言い方になることがあります。日本で一般的に使われている表現に置き換えるほうが、取引先にも役所にも伝わりやすくなります。
また、目的の順番にも意味があります。最初に書いた事業が、その会社の主たる事業として見られることがあります。日本で会社設立をする外国人が複数の事業を予定している場合、いちばん力を入れる事業を先頭に置いてください。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
SECTION 02許認可が必要な事業の場合

建設業、人材派遣、旅行業、飲食業、古物商、宅地建物取引業など、許認可が必要な事業があります。これらの許認可を申請するとき、定款の事業目的が確認されます。
許認可を出す側は、その会社が本当にその事業を行うのかを、定款の目的で確認します。目的に書かれていないと、許認可が下りないことがあります。日本で会社設立をする外国人が、こうした事業を予定している場合は特に注意が必要です。
求められる文言は、許認可の種類によって決まっていることがあります。会社設立の前に、許認可の窓口へ「この文言で大丈夫か」を確認しておいてください。あとから直すと、定款変更と登記の費用がかかります。
- 建設業建設工事の種類に応じた文言が求められることがあります。
- 人材派遣労働者派遣事業という文言が必要になります。
- 古物商古物営業法にもとづく古物商という文言が関係します。
- 飲食業飲食店の経営という文言が一般的です。営業許可は保健所が扱います。
- 宅地建物取引業宅地建物取引業という文言が必要になります。
許認可の中には、会社設立の登記が終わってからでないと申請できないものもあります。事業を始める時期から逆算して、順番を決めてください。
許認可の申請時期にも注意してください。多くの許認可は、会社設立の登記が終わってからでないと申請できません。事業を始めたい時期から逆算すると、会社設立をいつまでに終えるべきかが決まります。外国人が日本で会社設立をする場合、在留資格の手続きも並行するため、この逆算が重要になります。
このセクションの根拠:中小企業基盤整備機構「J-Net21 起業支援」(https://j-net21.smrj.go.jp/startup/index.html)
在留資格の審査での見られ方

外国人が日本で会社設立をして在留資格「経営・管理」を申請する場合、定款の事業目的も資料のひとつになります。事業計画書に書いた事業と、目的に書いた事業が一致しているかが見られます。
たとえば、事業計画書では飲食店を開くと書いているのに、定款の目的に飲食店の経営が入っていないと、説明が必要になります。会社設立の書類と入管の書類は別に作られることが多いため、こうしたずれが起こります。
また、目的が多すぎると、実際に何をする会社なのかが伝わりにくくなります。入管庁の資料では、事業計画書について具体性と合理性が認められ、実現可能なものであることが評価されるとされています。目的を絞るほうが、計画の焦点もはっきりします。
日本で会社設立をする段階で、事業計画を先に書いておくと、目的も自然に決まります。計画を書いてから定款を作るという順番をおすすめします。
入管庁の資料では、申請者が営む事業に係る必要な許認可の取得状況等を証する資料の提出を求めるとされています。在留許可を受けてからでないと許認可の取得ができないなど正当な理由が認められる場合には、次回の在留期間更新許可申請時に提出を求めるともされています。会社設立と許認可と在留資格の順番が絡む事業では、この扱いを知っておくと計画が立てやすくなります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
法人口座の開設での見られ方

法人口座を開設するとき、金融機関は事業の内容を確認します。定款や登記事項証明書を見て、その会社が何をするのかを把握します。
事業目的が多すぎたり、関連のない事業が並んでいたりすると、説明を求められることがあります。犯罪収益移転防止法にもとづく取引時確認が義務づけられているため、金融機関は事業の実態を確認する必要があります。
外国人が代表の新しい会社では、もともと説明を求められる場面が多くなります。日本で会社設立をするときに事業目的を絞っておくと、口座開設の説明もしやすくなります。
また、目的の中に金融や投資に関する文言が入っていると、確認が丁寧になることがあります。実際に行う事業でなければ、入れないほうが無難です。
実際に法人口座を申し込むときは、事業目的だけでなく、具体的な取引の見込みも聞かれます。誰と、何を、いくらで取引するのか。日本で会社設立をした外国人が説明に困るのは、この部分であることが多くあります。定款の目的と、実際の説明が一致するようにしておいてください。
このセクションの根拠:警察庁「犯罪収益移転防止法の解説(JAFIC)」(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/law_com.htm)
05事業目的の書き方の実務

事業目的は、意味が読み取れる日本語で書きます。抽象的すぎる表現や、意味の分からない造語は、登記の段階で指摘を受けることがあります。
外国語の事業名をそのままカタカナにする場合、括弧で内容を補うことがあります。たとえば「コンサルティング」だけでは範囲が広すぎるため、どの分野のコンサルティングかを書き加えます。
日本で会社設立をする外国人が、本国での事業をそのまま持ち込む場合、その事業が日本の分類でどう表現されるかを確認してください。日本での一般的な言い方に置き換えるほうが、伝わりやすくなります。
目的の数は、5個から10個程度に収めることが多くあります。決まりがあるわけではありませんが、多すぎると焦点がぼやけます。
同業他社の登記事項証明書を見て、目的の書き方を参考にする方法もあります。法務局で誰でも取得できます。会社設立の準備として、一度見てみるのもよいと思います。
目的の書き方に迷ったら、日本標準産業分類を参考にする方法もあります。総務省が定めている分類で、事業の種類が体系的に整理されています。外国人が日本で会社設立をするとき、自分の事業が日本ではどう分類されるのかを確認できます。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
あとから変えるときの定款変更と変更登記

事業目的を変えるには、株主総会の決議などによる定款変更が必要です。そのうえで、変更登記を申請します。
変更登記の登録免許税は、登記事項の変更として1件につき3万円とされています。日本で会社設立をした外国人が、後で事業を広げるときにかかる費用です。
変更には手続きの手間もかかります。株主総会の招集、議事録の作成、登記の申請。司法書士に依頼すれば報酬も発生します。
そのため、会社設立の時点で、近い将来の事業まで含めて書いておくほうが結果として安く済みます。ただし、書きすぎると別の問題が出るというのは、これまで見てきたとおりです。
なお、目的を追加するだけでなく、削ることもできます。実際にやらなくなった事業を残しておくと、会社の姿が分かりにくくなります。会社設立から数年経って事業が定まってきたら、一度見直してみるのもよいと思います。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
よくある失敗

事業目的でつまずく例は、いくつかの型に分かれます。日本で会社設立をする外国人によく起きるものを挙げます。

どれも、会社設立の前に確認しておけば避けられるものです。定款を作る段階で、事業計画と許認可の要否を一緒に確認してください。
もうひとつ挙げるなら、専門家に任せきりにして中身を確認しなかった、という例です。定款は会社の基本的な文書です。日本で会社設立をする外国人が内容を理解しないまま進めると、後で「そんな目的が入っていたのか」と気づくことになります。作成の前に、内容を説明してもらってください。
このセクションの根拠:コンチネンタル国際行政書士法人「外国人の日本での会社設立ガイド」(https://continental-immigration.com/corporate/corporation/)
SECTION 08よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
事業目的に書いていない事業はできませんか。
会社は定款に書いた目的の範囲内で活動するのが原則とされています。書いていない事業を始める場合、目的の変更が必要になることがあります。近い将来の事業まで含めて書いておくのが一般的です。
目的を変更するといくらかかりますか。
変更登記の登録免許税は、登記事項の変更として1件につき3万円とされています。これに加えて、司法書士に依頼する場合は報酬が発生します。
外国語の事業名をそのまま書けますか。
意味が読み取れる形にする必要があります。カタカナにするだけでは範囲が分からない場合、括弧で内容を補うことがあります。
この項目の根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
まとめ:3つの場面から逆算する

外国人が日本で会社設立をするときの事業目的の決め方を見てきました。この項目は、許認可、在留資格、法人口座の開設という3つの場面に影響します。
- 事業計画を先に書く。何をするかがはっきりしてから目的を決める
- 許認可が必要な事業かを確認する。必要なら文言を窓口へ確認する
- 事業計画書の内容と一致させる。在留資格の審査で見られる
- 数を絞る。多すぎると何をする会社か伝わらなくなる
- 日本語として意味が通るかを確認する。専門家に見てもらうと確実
この記事は一般的な整理です。許認可の要件は事業と地域によって変わります。会社設立の定款については司法書士や行政書士へ、在留資格については行政書士へご相談ください。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
読んでくださった方へ
事業目的は、定款の中では短い項目です。ただ、この数行が許認可や在留資格に影響します。書き始める前に、事業計画を一度書いてみてください。
日本で会社設立をする外国人にとって、事業を日本語でどう表現するかは意外に難しい作業です。本国での言い方をそのまま訳しても、日本では通じないことがあります。
迷ったときは、同業他社の登記事項証明書を見てみるのもひとつの方法です。実際にどう書かれているかが分かります。
この記事は役に立ちましたか?
押した数は同じ端末では二重に数えません。内容の誤りや制度変更に気づいた方は、お問い合わせページからご連絡ください。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
掲載順は優劣ではありません。外国人が日本で会社設立を検討するときに同じ語で検索して出てきたページを、確認できた順に並べています。内容は各サイトの運営者によるもので、最新かどうかは各自でご確認ください。
定款の記載事項、出資の履行、代表社員が法人のときの職務執行者まで、合同会社の設立登記を公式に案内しています。
www.moj.go.jp税理士法人の解説。手続きの順番と必要書類を、設立後の税務まで見据えてまとめています。
koyano-cpa.gr.jp3マネーフォワード クラウド会社設立|外国人の会社設立の流れ
会計ソフト事業者の解説。流れ・条件・必要書類・登記のやり方を項目ごとに分けて書いています。
biz.moneyforward.com4司法書士九九法務事務所|外国籍、海外居住者の方の会社設立登記
海外居住者が発起人や代表者になる場合の登記の実務を扱っています。
99help.info5司法書士法人永田町事務所|宣誓供述書や署名(サイン)証明書
商業登記に強い司法書士による解説。サイン証明をどこで取るか、注意点は何かを扱っています。
asanagi.co.jp外国在住の外国人からの依頼が増えているという実務の声とともに、会社設立登記の注意点を司法書士が書いたブログです。
kanayama-international.jp7RSM汐留パートナーズ|外資系企業の日本法人設立におけるプロセスと論点とは
日本法人・日本支店・駐在員事務所の違いと、定款認証から外為法の届出、登記までの順番を整理したコラムです。
shiodome.co.jpジェトロによる対日投資向けの解説。株式会社の設立登記の手順と必要書類を、外国企業の目線でまとめています。
www.jetro.go.jp司法書士事務所としての業務紹介ページ。会社の設立登記をはじめ、商業登記で依頼できる手続きの範囲を確認できます。
www.stklegal.jp10司法書士事務所リーガルエステート|士業が知っておくべき外国人の会社設立と経営・管理ビザ
手続きを手伝う専門家向けに、設立登記の条件と在留資格の要件の関係を整理した司法書士事務所の記事です。
s-legalestate.com11マネーフォワード クラウド会社設立|役員変更登記の必要書類
役員を新しく迎えるときの変更登記の必要書類と、法務局への申請の手順を順に説明する記事。
biz.moneyforward.com外国人の会社設立の登記を扱う司法書士事務所のサービス案内。依頼できる範囲を確かめるときに参考になります。
shimax-legal.com13ひかり司法書士法人|外国人の方が株式会社設立する場合の必要書類
海外居住の外国人だけで株式会社を設立した実務をもとに、登記の必要書類を紹介した司法書士のブログです。
hikari-sihoushosi.com14西本清隆事務所|外国人を役員にする登記ができればOK!?
登記が通っても在留資格の問題が残る場合があることを、熊本の司法書士・行政書士が注意喚起しています。
shiho-gyosei.com15KOTORA JOURNAL|外国人取締役でも安心!日本で会社登記を成功させるための秘訣
転職メディアの記事。外国人が取締役になる会社の登記で、サイン証明書や氏名のカタカナ表記など気をつける点を紹介しています。
www.kotora.jp外国会社と擬似外国会社の定義、日本で継続して取引するときの登記義務と取引の制限を司法書士が説明しています。
shiodome.co.jp17東急リバブル Lnote|外国人の不動産登記で必要な宣誓供述書とは
外国人が不動産を登記するときの宣誓供述書と氏名表記の扱いを、不動産会社の視点でまとめた記事。
www.livable.co.jp京都の司法書士法人・行政書士による解説。外国籍の人が関わる会社登記で、実務上注意する点を項目ごとに挙げています。
www.shimo1-law.com19新日本法規|最近の商業登記法令の改正による渉外商業登記実務への影響
外国人や外国会社が関わる渉外商業登記について、法令改正が実務に与えた影響を専門家が論じた記事です。
www.sn-hoki.co.jp住民票に通称を記載する手続と必要な資料を説明する市の案内。通称名で登記を考える前に読める。
www.city.kashiwa.lg.jp



