海外居住者だけで登記できるか|外国人の会社設立で押さえる住所要件と払込みの実務

この記事の対象
まだ日本に住んでいない外国人の方が、日本で会社設立をしようとしている場面を想定した記事です。日本側で受け入れを手伝う担当者にも読んでいただけます。
結論から言えば、日本に住所のある代表者を立てなくても、設立の登記そのものはできます。ただし、資本金の払込みと法人口座の開設という2つの場面で、実務上の工夫が必要になります。
取り扱いは変わることがあります。この記事は整理の枠組みとしてお使いいただき、実際の手続きの前に法務局や専門家へご確認ください。
住所要件の取り扱いはどうなっているか

以前は、株式会社の代表取締役のうち少なくとも1人が日本に住所を有する必要があるという取り扱いがありました。この取り扱いは変わり、法務省のページでは、代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合であっても設立の登記ができるとされています。
これは、日本にまだ住んでいない外国人が日本で会社設立をする場合に大きな意味を持ちます。日本在住の協力者を代表者に立てなくても、会社をつくること自体は進められることになります。
合同会社についても同様で、代表社員が海外居住であっても登記は可能とされています。日本で会社設立をする外国人が、どちらの形態を選んでも、この点は変わりません。
ただし、登記ができることと、日本で事業を実際に動かせることは別です。在留資格、法人口座、事務所の契約。それぞれで別の課題が出てきます。
この取り扱いが変わったことで、外国法人が日本に子会社をつくる場面や、外国人が本国にいたまま日本で会社設立をする場面が進めやすくなりました。以前は日本在住の協力者を探すところから始める必要があり、それ自体が壁になっていました。
このセクションの根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
02印鑑証明書の代わりになる書類

海外に住んでいる外国人は、日本の市区町村で印鑑登録ができません。そのため、印鑑証明書の代わりになる書類が必要になります。
法務省のページでは、外国人の署名証明書について、本国の官憲が作成したものが認められるとされています。本国に所在する官憲のほか、日本や第三国に所在する本国の官憲が作成したものも含まれるとされています。日本にある本国の大使館や領事館で取れる場合があるということです。
本国の公証人が作成したものも認められるとされています。さらに、やむを得ない事情がある場合には、居住国の官憲、居住国の公証人、日本の公証人が作成したものも許容される場合があるとされています。
どの書類が使えるかは、その人の国籍と居住国によって変わります。日本で会社設立をする準備に入る前に、まず自分の国の在日公館に問い合わせてみてください。
外国語で作成された書面には、原則として日本語訳を添えます。一部については省略できる場合もあるとされています。会社設立の書類を出す法務局へ確認してください。
署名証明書を取るときは、何のために使うのかを伝えると、適切な様式で作ってもらいやすくなります。日本で会社設立をするために定款や登記の書類に使う、と説明してください。国によっては定型の様式が用意されています。
このセクションの根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
資本金の払込みをどうするか

資本金の払込みは、会社設立の登記より前に行います。この時点で会社の口座はないため、発起人個人の口座を使います。日本に住んでいない外国人にとって、この口座をどう用意するかが課題になります。
日本の金融機関は、短期滞在で入国した外国人の口座開設を認めていないのが一般的です。観光や商用の短期滞在で来日しても、その場で口座を開くことは難しいのが実情です。
法務省のページでは、払込取扱機関について、内国銀行の日本国内の支店のほか、内国銀行の海外支店も含まれるとされています。本国にある日本の銀行の支店に口座があれば、そこを使える可能性があります。
ただし、海外支店の口座では取引が日本円以外の通貨で行われていることがあり、その場合は為替レートの証明が必要になることがあります。会社設立の準備の前に、金融機関と法務局に確認してください。
もうひとつの方法として、日本に一時的に滞在して口座を開くという道もありますが、短期滞在では難しいのが実情です。中長期在留者として在留カードを持ち、住民登録をしていれば口座を開けることが多くなります。外国人が日本で会社設立をする順番として、先に在留資格を得てから会社設立に進むという設計もあり得ます。
このセクションの根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
協力者を立てる方法

実務では、日本に住む協力者に発起人または設立時取締役として入ってもらう方法がとられることがあります。その人の口座を資本金の払込先として使うためです。
この方法をとる場合、あとで整理が必要になります。実際の出資者は誰なのか、経営するのは誰なのか。在留資格の審査ではこの点が問われます。日本で会社設立をする外国人が、名義だけを借りる形にすると、後から解消するのに手間がかかります。
協力者にも負担がかかります。発起人になれば出資の記録が残り、役員になれば登記に氏名と住所が載ります。会社設立が終わったあとの整理まで含めて、事前に説明し、了解を得ておいてください。
- 協力の範囲何をどこまで頼むのかを書面で残します。
- 解消の時期いつ、どう解消するのかを最初に決めます。
- 役員変更の費用役員の変更登記には登録免許税がかかります。資本金1億円以下の会社では1件につき1万円です。
- 株式の移転株式を移す場合、譲渡の手続きと税の問題が出てきます。
外国人が日本で会社設立をするとき、この方法は選択肢のひとつですが、必須ではありません。住所要件の取り扱いが変わったことで、協力者なしで登記だけを進める道も開けています。
協力者に頼む場合でも、実際の出資者が誰かは記録に残しておいてください。あとで在留資格の申請や法人口座の開設で、資金の出どころを説明することになります。日本で会社設立をする外国人にとって、この説明ができるかどうかが後の手続きを左右します。
このセクションの根拠:さくら国際(司法書士法人・行政書士法人)「非居住外国人のみで会社を設立し、会社名義の銀行口座は開設できますか」(https://www.sakura-kokusai.com/case/866/)
SECTION 05外国法人が親会社になる場合

個人ではなく、本国の会社が日本に子会社をつくるという形もあります。この場合、発起人になるのは外国法人です。
外国法人が発起人になる場合、その法人が存在することと、代表者に権限があることを示す書類が必要になります。日本に商業登記のない外国法人については、本店所在国の領事や公証人が認証した資格証明書などを用意することになります。
宣誓供述書という形で証明することもあります。内容と様式は提出先によって変わるため、会社設立の準備の前に法務局へ確認してください。
また、外国法人が日本で継続して取引をする場合、外国会社としての登記が必要になることがあります。日本に子会社をつくる形と、本国の会社が直接日本で活動する形は別のものです。目的に合った形を選んでください。
外国法人が親会社になる場合、その会社の決算書類や事業内容を示す資料も求められることがあります。法人口座の開設や在留資格の申請で使います。会社設立の準備と並行して、本国側の資料も集めておいてください。
このセクションの根拠:法務省「外国会社の登記を忘れていませんか?」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00275.html)
登記が終わったあとの課題

登記が終わっても、日本で事業を動かすには2つの課題が残ります。法人口座の開設と、在留資格です。
法人口座の開設は、金融機関ごとの審査になります。代表者が海外居住の会社では、事業の実態についての説明を求められることが多くなります。犯罪収益移転防止法にもとづく取引時確認が義務づけられているためです。
在留資格については、自分で日本に住んで経営していくなら、「経営・管理」の在留資格認定証明書の交付申請から始まります。2025年10月16日以降は、資本金等の額3,000万円以上、常勤職員1人以上の雇用などが基準になっています。
外国人が日本で会社設立をして、そのまま海外にいたまま事業を続けるという形もあり得ます。ただしその場合、日本国内で誰が事業を動かすのかという問題が残ります。
事務所の契約も課題のひとつです。会社名義で契約するには登記が終わっている必要がありますが、在留資格の申請には事務所の契約書が必要になります。順番としては、登記のあとに契約し、それから在留資格の申請という流れになります。外国人が日本で会社設立をするとき、この順番を押さえておいてください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-1.html)
日程の組み方

海外に住んだまま日本で会社設立をする場合、日程を決めるのは本国とのやり取りです。書類の取り寄せ、翻訳、資本金の送金。それぞれに時間がかかります。

外国人が日本で会社設立をするとき、この工程全体で数か月かかることも珍しくありません。事業を始めたい時期から逆算して、早めに動いてください。
日程を組むときは、本国の祝日や役所の休みも考慮してください。国によっては長期の休暇があり、その期間は書類の取得が止まります。日本で会社設立をする外国人が、思わぬところで待たされる原因になります。
このセクションの根拠:JETRO「対日投資・ビジネスサポート」(https://www.jetro.go.jp/invest/)
08よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
日本に住所がなくても会社設立の登記はできますか。
法務省のページでは、代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合であっても設立の登記ができるとされています。ただし、資本金の払込みや法人口座の開設では別の課題が残ります。
資本金はどこに払い込めばよいですか。
法務省のページでは、払込取扱機関について、内国銀行の日本国内の支店のほか、内国銀行の海外支店も含まれるとされています。外貨で入金された場合は為替レートの証明が必要になることがあります。
日本に住む協力者は必要ですか。
登記のためには必須ではありません。ただし資本金の払込先や、日本国内での連絡先の確保という実務上の理由から、協力者を立てる形がとられることがあります。
この項目の根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
まとめ:登記はできる、その先を設計する

日本に住所がない外国人だけで会社設立の登記ができるかという問いには、できるという答えになります。法務省のページでは、代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合であっても設立の登記ができるとされています。
- 登記の住所要件は緩和されている。海外居住者だけでも登記できる
- 印鑑証明書の代わりに、本国の官憲や公証人が作成した署名証明書が使える
- 資本金の払込みには日本国内の口座が必要。内国銀行の海外支店も含まれるとされている
- 協力者を立てる方法もあるが、あとの整理を前提に決める
- 登記の後、法人口座と在留資格という別の課題が残る
取り扱いは変わることがあります。実際の手続きの前に、法務局と、商業登記に詳しい司法書士へご確認ください。在留資格については行政書士へご相談ください。
このセクションの根拠:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
読んでくださった方へ
海外にいたまま日本で会社設立をするのは、以前より進めやすくなりました。ただ、登記ができることと、事業が動くことは違います。
外国人が日本で会社設立をして事業を始めるには、口座、事務所、在留資格という3つの壁が残ります。登記の段階で、その先の道筋も考えておいてください。
本国からの手配には時間がかかります。早めに動いて、余裕のある日程を組んでいただければと思います。
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