社長ひとりでも社会保険に入る|外国人の会社設立で最初にやる加入手続き

この記事の対象
日本で会社設立を終えた外国人の方が、社会保険の加入手続きを進める場面を想定した記事です。手続きを手伝う日本側の担当者にも読んでいただけます。
法人の事業所は、常時従業員を使用する場合、健康保険と厚生年金保険の適用事業所になります。この従業員には、代表者ひとりだけの場合も含まれるとされています。
様式や期限は改定されることがあります。この記事は全体像をつかむためのものです。実際の手続きは日本年金機構のページと、所轄の年金事務所でご確認ください。
適用事業所になる条件

日本年金機構のページでは、厚生年金保険および健康保険の加入が法律で義務づけられている事業所として、常時従業員を使用する法人事業所と、常時5人以上の従業員が働いている個人事業所が挙げられています。
法人事業所については、事業主のみの場合も含まれるとされています。つまり、社長ひとりの会社でも加入が原則です。
日本で会社設立をした外国人が、この点を知らずに加入していないことがあります。個人事業とは扱いが違うため、注意してください。
在留資格「経営・管理」では、2025年10月16日施行の改正で1人以上の常勤職員の雇用が必要になりました。人を雇う以上、この手続きは必ず発生します。
また、在留期間の更新では、社会保険の適用状況が確認されるとされています。加入していない状態は、更新の場面で問題になります。
社会保険という言葉は、健康保険と厚生年金保険を指すことが多くあります。これに雇用保険と労災保険を加えて、広い意味で使われることもあります。日本で会社設立をする外国人は、どの制度の話をしているのかを確認しながら読んでください。
本国にも似た制度があると思いますが、加入の条件や保険料の計算方法は国によって違います。日本の制度として、あらためて確認してください。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
新規適用届の期限

日本年金機構のページでは、健康保険・厚生年金保険新規適用届について、事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から5日以内に事業主が行わなければならないとされています。
5日以内というのは、会社設立の後の手続きの中でも特に短い期限です。日本で会社設立をした外国人が、この期限を見落とすことがあります。
あわせて、被保険者となる人の被保険者資格取得届も提出します。被扶養者がいる場合は、被扶養者(異動)届も同時に提出することとされています。
提出先は、事業所の所在地を管轄する年金事務所です。事務センターへ郵送する方法もあります。
添付する書類として、登記事項証明書などが求められます。会社設立の登記が完了してからでないと出せません。
つまり、登記が完了したらすぐに動くことになります。日本で会社設立をした外国人は、登記の完了を待って証明書を取り、その足で手続きへ進んでください。
登記事項証明書は、この手続きのほか、税務署への届出や法人口座の開設でも使います。日本で会社設立をした外国人は、登記が完了したらまとめて取っておいてください。窓口へ行く回数が減ります。
このセクションの根拠:日本年金機構「1-1 事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html)
SECTION 03提出する書類

提出する主な書類は、健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届、そして被扶養者がいる場合の被扶養者(異動)届です。
新規適用届には、法人の登記事項証明書などを添付することとされています。会社設立の後に取った証明書を使います。
日本で会社設立をした外国人が代表者になる場合、自分の分の資格取得届も提出することになります。役員報酬を出すなら、その額にもとづいて保険料が計算されます。
様式は日本年金機構のページからダウンロードできます。記載例も公開されているため、それを見ながら記入してください。
提出の方法は、窓口への持参、郵送、電子申請があります。会社設立の直後は手続きが集中するため、まとめて処理できる方法を選ぶと楽になります。
記入する内容には、事業所の名称、所在地、事業主の氏名、事業の種類、従業員の人数などがあります。登記事項証明書を見ながら書き写す作業になります。会社設立の書類がそろっていれば、記入そのものは難しくありません。
このセクションの根拠:日本年金機構「1-1 事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html)
代表者自身の扱い

法人の役員も、社会保険の被保険者になります。日本で会社設立をした外国人が代表者として役員報酬を受け取る場合、その額にもとづいて保険料が計算されます。
保険料は、会社と本人が分担して負担します。会社は、本人の分を役員報酬から控除して、会社の分と合わせて納めます。
役員報酬をいくらにするかで、この負担が変わります。会社設立の直後に決めることになるため、資金の見通しを立ててから金額を決めてください。
役員報酬は、原則として事業年度の途中で自由に変えられません。税務上の取り扱いがあるためです。会社設立の時点で慎重に決めてください。
なお、役員は原則として労働者ではないため、雇用保険の対象にはなりません。労災保険についても同様ですが、特別加入という制度があります。
日本で会社設立をした外国人が役員報酬を決めるとき、社会保険料の負担も含めて考えてください。報酬の額が上がれば、保険料も上がります。手取りの金額で見ると、想定より少なくなることがあります。
配偶者や子を扶養に入れる場合、被扶養者(異動)届を提出します。収入の条件などがあるため、該当するかを確認してください。外国人が日本で会社設立をして家族と暮らしている場合、この手続きも関係します。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
加入後に続く手続き

加入したら、毎月の保険料の納付が始まります。会社と本人の分を合わせて納めます。
年に一度、算定基礎届という手続きもあります。標準報酬月額を見直すもので、時期が決まっています。日本で会社設立をした外国人が、1年目に初めて経験する作業です。
従業員が増えたり減ったりしたときも、届出が必要になります。資格取得届、資格喪失届。人の出入りがあるたびに手続きが発生します。
報酬が大きく変わったときも、届出をすることがあります。月額変更届といいます。
手続きが多いため、社会保険労務士に依頼する方法もあります。会社設立の後、専門家に任せる範囲を決めておいてください。
保険料の納付は、口座振替にすることもできます。毎月の作業を減らせます。会社設立の後、手続きの方法を年金事務所で確認してみてください。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
06労働保険も忘れない

社会保険とは別に、労働保険の手続きもあります。雇用保険と労災保険をあわせた呼び方です。
人を雇うと、労働基準監督署へ保険関係成立届を提出します。雇用保険については、ハローワークへ適用事業所設置届と被保険者資格取得届を提出します。
在留資格「経営・管理」では、1人以上の常勤職員の雇用が必要になりました。日本で会社設立をした外国人は、この手続きも必ず発生することになります。
労働保険には年度更新という手続きもあります。1年分の保険料を概算で申告して納め、翌年に確定させる仕組みです。毎年決まった時期に来ます。
在留期間の更新では、労働保険の適用状況も確認されるとされています。雇用保険の被保険者資格取得の履行、保険料納付の履行、労災保険の適用手続等の状況が挙げられています。
労働保険の手続きは、労働基準監督署とハローワークの2か所に分かれています。日本で会社設立をした外国人が人を雇ったとき、どちらにも行くことになります。
雇用保険の被保険者資格取得届は、雇い入れた月の翌月10日までに提出することとされています。会社設立の後に人を雇ったとき、この期限も確認してください。
このセクションの根拠:厚生労働省「労働保険の成立手続」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/index.html)
加入を後回しにするとどうなるか

加入の手続きを後回しにしたまま数年経つと、遡っての加入と保険料の支払いが必要になることがあります。まとまった金額になり、資金繰りに影響します。
日本で会社設立をした外国人が、社会保険の仕組みを知らずに加入していなかったという相談を受けることがあります。悪意がなくても、結果として未加入の状態になります。
また、在留期間の更新では社会保険の適用状況が確認されるとされています。未加入の状態は、更新の場面で問題になります。
従業員にとっても不利益になります。健康保険に入っていなければ、医療費の負担が変わります。厚生年金保険に入っていなければ、将来の年金にも影響します。
気づいた時点で、年金事務所に相談してください。放置すると、負担が増えていきます。
従業員を雇っているのに加入していないと、その従業員から指摘を受けることもあります。日本で会社設立をした外国人が信頼を得るうえでも、この手続きは大切です。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
社長ひとりでも加入しなければなりませんか。
日本年金機構のページでは、常時従業員を使用する法人事業所が加入の対象とされ、事業主のみの場合も含まれるとされています。法人であれば、社長ひとりでも加入が原則です。
新規適用届の期限はいつですか。
事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から5日以内に事業主が行わなければならないとされています。
加入していないとどうなりますか。
遡っての加入と保険料の支払いが必要になることがあります。また、在留期間の更新では社会保険の適用状況が確認されるとされています。気づいた時点で年金事務所に相談してください。
この項目の根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
SECTION 09まとめ:登記の直後に動く

外国人が日本で会社設立をしたあとの社会保険の加入について見てきました。法人であれば、社長ひとりでも加入が原則です。
- 法人の事業所は、常時従業員を使用する場合、適用事業所になる。代表者ひとりの場合も含まれる
- 新規適用届は、事実の発生から5日以内に提出する
- 被保険者資格取得届も同時に提出する。被扶養者がいれば異動届も
- 登記事項証明書などの添付書類が必要。登記の完了を待って動く
- 人を雇うなら、労働保険の手続きも進める
様式や期限は改定されることがあります。実際の手続きは日本年金機構のページと所轄の年金事務所でご確認ください。手続きの代行については社会保険労務士へご相談ください。
最後にひとつ。社会保険の手続きは、会社設立の中でもとくに期限が短い部分です。登記が完了したら、まずここから動いてください。それだけで、後の負担がずいぶん軽くなります。
このセクションの根拠:日本年金機構「1-1 事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html)
読んでくださった方へ
社会保険は、日本で暮らし、働くうえでの基本的な仕組みです。加入すれば、医療費の負担が軽くなり、将来の年金にもつながります。
日本で会社設立をした外国人にとって、この手続きは負担に感じられるかもしれません。ただ、自分と従業員を守る仕組みでもあります。
5日以内という期限は短いものです。登記が完了したら、まずこの手続きから動いてください。
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