外国人の会社設立で資本金はいくらにする?会社法の下限と在留資格の基準を分けて考える

この記事が想定している方
日本で会社設立をすると決めて、資本金をいくらにするか迷っている外国人の方に向けた記事です。手続きを手伝う日本側の担当者が、本人と一緒に金額を検討する場面も想定しています。
資本金は、会社設立の準備の中でいちばん判断が難しい項目です。会社法の上では1円から設立できますが、在留資格の基準、税金の扱い、取引先や金融機関からの見え方という、まったく別の物差しが同時に効いてきます。
この記事では、その物差しを1つずつ分けて説明します。金額そのものを決めるのは事業の内容によりますので、ここでは考え方の材料をお示しします。
資本金とは何か、どこに表れるか

資本金は、会社を始めるときに出資者が出したお金のうち、資本金として計上した額です。日本で会社設立をするとき、この額は定款に書かれ、登記されます。登記事項証明書を取れば、誰でも見ることができます。
出資したお金は会社のものになり、事業に使えます。株主や社員が自由に引き出せるものではありません。外国人が日本で会社設立をする場合、この点を最初に押さえておくと、後の説明がしやすくなります。
資本金は、会社の体力を外から見るときの目安のひとつとして使われます。もちろん、資本金が大きければ経営が安定しているとは限りません。それでも、初対面の取引先や金融機関にとっては、数少ない判断材料のひとつになります。
- どこに書かれるか定款、登記事項証明書、決算書類に記載されます。
- 誰が出すか株式会社なら発起人、合同会社なら社員(出資者)が出します。
- いつ払い込むか定款を作成したあと、登記の前に払い込みます。
- どこに払い込むか会社の口座はまだないため、発起人個人の口座に払い込みます。
外国人が日本で会社設立をする場合、資本金は本国から送金することが多くなります。その場合、着金の日付と定款の作成日の前後関係が問題になります。払込みは定款の作成のあとに行うのが原則とされているため、送金の指示日ではなく、日本側の口座に入った日を基準に日程を組んでください。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
物差し1:会社法の下限は1円

かつては最低資本金の制度がありましたが、いまの会社法にはありません。株式会社も合同会社も、資本金1円から設立できます。日本で会社設立をする外国人にとっても、この点は同じです。
ただし、1円で会社設立をした場合、その会社は事業に使えるお金をほとんど持っていないことになります。設立の登記が終わった瞬間から、事務所の家賃も人件費も発生します。会社法の下限は、あくまで法律上の話です。
実務では、当面の運転資金として説明できる額を入れることが多くあります。何か月分の固定費を賄えるか、という考え方です。外国人が日本で会社設立をする場合、この説明が在留資格の審査でも役に立ちます。

実際に相談を受けていると、外国人の方が最初に聞くのは「いくら必要ですか」という質問です。しかし、答えは事業の内容と目指す在留資格によって変わります。まず、日本で会社設立をしたあとに毎月いくら出ていくのかを書き出すところから始めてみてください。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
SECTION 03物差し2:在留資格「経営・管理」の基準

外国人が日本で会社設立をして、自分で経営を続けるなら、在留資格「経営・管理」が必要になります。この資格の許可基準は2025年10月16日施行の改正で変わり、3,000万円以上の資本金等が必要になりました。
入管庁の資料では、事業主体が法人である場合、株式会社における払込済資本の額(資本金の額)、または合名会社・合資会社・合同会社の出資の総額を指すとされています。つまり、会社設立の時点で登記される資本金の額が、そのまま基準の対象になります。
個人事業主の場合は数え方が違います。事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額を指すとされています。
すでに「経営・管理」で在留している方には経過措置があります。施行日から3年を経過する日、令和10年10月16日までの間に在留期間更新許可申請を行う場合は、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況などを踏まえて判断されるとされています。
また、資本金の額は在留期間の更新でも見られます。日本で会社設立をした外国人が最初の申請を通ったあとも、事業が続いているか、体制が保たれているかが確認されます。設立時の額だけを整えて、あとで減らしてしまうような形は避けてください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
物差し3:税金への影響

資本金の額は、税の取り扱いにも関わります。日本で会社設立をする外国人にとって、見落としやすい部分です。
消費税の扱い
新しく設立した法人の消費税の納税義務については、資本金の額が判定に関わる仕組みがあります。国税庁のページに、新規開業や法人の新規設立のときの取り扱いが説明されています。会社設立の前に、税理士へ確認しておくと安心です。
法人住民税の均等割
法人住民税には、所得がなくてもかかる均等割という部分があります。この金額は、資本金等の額と従業者数によって段階が分かれています。資本金を大きくすると、この負担も上がることがあります。
登録免許税
設立登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の7です。株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円です。資本金3,000万円の株式会社なら21万円になります。会社設立の費用として、この計算を先にしておいてください。

税の取り扱いは制度改正で変わることがあります。ここに書いたのは考え方の枠組みです。日本で会社設立をする外国人にとって、税の話は在留資格の話と同じくらい後から効いてきます。会社設立の前に税理士へ一度相談しておくと、後の負担が変わります。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
物差し4:対外的な見え方

設立したばかりの会社には、決算の実績がありません。取引先や金融機関が判断材料にできるものは限られます。資本金の額は、そのうちのひとつです。
法人口座の開設審査でも、事業の内容とあわせて資本金の額が見られることがあります。外国人が日本で会社設立をした場合、口座開設のハードルが高くなることがあるため、この点も考慮に入れておくとよいでしょう。
一方で、資本金が大きければよいという単純な話でもありません。実態のない大きな資本金は、かえって説明を求められることがあります。事業の規模に見合った額であることが大切です。
取引先によっては、契約の前に登記事項証明書の提出を求めるところもあります。外国人が代表の会社であれば、なおさら確認が丁寧になることがあります。資本金の額は、そうした場面で最初に目に入る数字です。
このセクションの根拠:全国銀行協会「全国銀行協会」(https://www.zenginkyo.or.jp/)
06資金の出どころを説明できるようにする

外国人が日本で会社設立をするとき、資本金の額だけでなく、そのお金がどこから来たのかが問われることがあります。在留資格の審査でも、法人口座の開設でも、同じことが聞かれます。
- ●自己資金:預金の推移が分かる資料。長期間かけて貯めたものであれば、その経過が見えるようにします。
- ●借入:誰から、いくら、どういう条件で借りたのかが分かる資料。返済の計画も含めて説明します。
- ●贈与:贈与した人との関係と、その人の資力が分かる資料。税務上の扱いも別に確認が必要です。
- ●本国からの送金:送金の記録。中継銀行を経由した場合も、経路が追えるようにします。
会社設立の場面で、知人から一時的にお金を借りて資本金にし、設立後すぐに返すという形をとると、払込みがなかったと判断されるおそれがあります。実際に事業に使うお金として用意してください。
送金の記録は、会社設立が終わったあとも保管しておいてください。在留資格の更新や、税務調査の場面で説明を求められることがあります。外国人が日本で会社設立をする場合、資金の流れを説明できる状態を保っておくことが大切です。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
あとから増やすこともできる

会社設立の時点で資本金を大きくできない場合、あとから増やすという方法があります。増資といいます。新しく出資を受けて、資本金の額を増やす手続きです。
増資には登記が必要です。登録免許税は増加した資本金の額の1000分の7で、最低3万円とされています。会社設立のときにまとめて入れる場合と比べると、手続きの手間と費用が余分にかかります。
在留資格「経営・管理」の基準を満たすために増資を検討する外国人の方もいます。すでに日本で会社設立をして経営している場合、経過措置の期間内に体制を整える方法のひとつになります。
- 増資の方法新株の発行(株式会社)や、新たな出資(合同会社)などがあります。
- 必要な手続き株主総会や社員の同意、払込み、変更登記が必要です。
- 費用増加した額の1000分の7の登録免許税(最低3万円)と、専門家に依頼する場合はその報酬。
- 注意点資本金の額が一定の水準を超えると、税の取り扱いが変わることがあります。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
資本金1円で会社設立できますか。
会社法の上では可能です。ただし在留資格「経営・管理」を目指す場合は、2025年10月16日以降、3,000万円以上の資本金等が基準になっています。また、事業に使えるお金がほとんどない状態になるため、実務では当面の固定費を賄える額を入れることが多くあります。
資本金は会社設立の後に使ってよいですか。
出資されたお金は会社のものになり、事業に使えます。ただし、払い込んですぐに全額を引き出して出資者に返してしまうような形は、払込みがなかったと判断されるおそれがあります。
資本金を増やすことはできますか。
増資という手続きで増やせます。変更登記が必要で、増加した資本金の額の1000分の7(最低3万円)の登録免許税がかかります。
この項目の根拠:国税庁「No.6531 新規開業や法人の新規設立のとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm)
SECTION 09まとめ:4つの物差しを並べて決める

外国人が日本で会社設立をするときの資本金は、ひとつの正解があるものではありません。会社法の下限、在留資格の基準、税金の扱い、対外的な見え方。この4つを並べて、自分の場合の額を決めることになります。
- 事業に必要な額を試算する。売上が立つまでの固定費を積み上げる
- 在留資格「経営・管理」を目指すなら、3,000万円以上という基準と照らす
- 登録免許税と税の扱いを確認する。額によって負担が変わる
- 資金の出どころを説明できるかを確認する
- 足りない場合は、増資という方法もあることを知っておく
この記事の内容は、2026年8月時点で公表されている資料にもとづく整理です。税の取り扱いは制度改正で変わることがあります。会社設立の前に、税理士および入管手続きに詳しい行政書士へご確認ください。
このセクションの根拠:国税庁「No.6531 新規開業や法人の新規設立のとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm)
読んでくださった方へ
資本金の額を決めるのは、会社設立の準備の中でも気が重い作業だと思います。数字を大きくすれば安心というものでもなく、小さくすれば楽というものでもありません。
迷ったときは、事業に本当に必要な額を先に出してみてください。そこから、在留資格の基準や税の扱いと照らし合わせていくと、判断しやすくなります。
日本で会社設立をする外国人にとって、資本金は在留資格にも直結する項目です。決めきれない場合は、その部分だけでも早めに相談してみてください。
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