人件費をどう見積もるか|外国人の会社設立で常勤職員1人を雇い続ける費用

この記事の対象
日本で会社設立をして常勤職員を雇う予定の外国人の方に向けた記事です。人件費がどれくらいになるのかを見積もる場面を想定しています。
在留資格「経営・管理」では、1人以上の常勤職員の雇用が必要になりました。会社設立の直後から人件費が発生する前提で、資金計画を立てることになります。
以下は考え方の整理です。実際の金額は給与の額や地域によって変わります。詳しくは社会保険労務士や税理士へご相談ください。
01人件費に含まれるもの

人を雇うときの費用は、給与だけではありません。会社が負担する社会保険料と労働保険料が加わります。
健康保険料と厚生年金保険料は、会社と本人が分担して負担します。雇用保険料も、会社と本人が負担します。労災保険料は、全額を会社が負担します。
日本で会社設立をする外国人が資金計画を立てるとき、給与の額だけで人件費を計算してしまうことがあります。実際の負担はそれより大きくなります。
このほか、通勤手当を出す場合はその分、賞与を出す場合はその分も加わります。採用にかかる費用も、初期の支出として発生します。

日本で会社設立をする外国人にとって、人件費の仕組みは本国と違うことが多い部分です。給与のほかに会社が負担するものがあるという構造を、最初に押さえておいてください。
また、給与から本人の分の保険料と所得税を控除して納めるという事務も発生します。会社設立の後、毎月続く作業です。給与計算のソフトを使うか、社会保険労務士に依頼するかを決めておいてください。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
給与の額をどう決めるか

給与の額は、その地域の相場と、事業計画とのつり合いで決めます。相場より低いと人が集まらず、集まっても定着しません。
最低賃金を下回ることはできません。地域ごとに金額が定められており、毎年見直されます。会社設立の後に採用するときは、最新の金額を確認してください。
日本で会社設立をした外国人が最初の採用をするとき、会社の実績がないため、相場より高めに設定しないと集まりにくいこともあります。この点も資金計画に入れてください。
一方で、高く設定しすぎると資金が続きません。資本金がどれくらいの期間を支えるのかを計算したうえで、無理のない額にしてください。
また、いったん決めた給与を下げるのは簡単ではありません。労働条件の不利益な変更にあたるため、原則として本人の同意が必要になります。会社設立の時点で慎重に決めてください。
求人を出すときは、給与の額を明示することになります。月給か時給か、残業代の扱いはどうか。日本で会社設立をした外国人が募集を出すとき、この部分が曖昧だと応募が集まりにくくなります。
このセクションの根拠:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html)
社会保険料の会社負担

健康保険料と厚生年金保険料は、標準報酬月額という区分にもとづいて計算されます。給与の額を一定の幅で区切ったもので、その区分ごとに保険料が決まります。
保険料は、会社と本人が分担して負担します。会社は、本人の分を給与から控除して、会社の分と合わせて納めます。
日本で会社設立をした外国人が、この仕組みを知らずに給与の額だけで人件費を計算すると、実際の負担との差に驚くことになります。会社設立の資金計画では、この負担も入れてください。
料率は年度によって見直されます。また、健康保険の料率は都道府県ごとに違います。会社設立の時点の最新の情報を、日本年金機構のページで確認してください。
代表者自身も、法人の役員として社会保険の対象になります。社長ひとりの会社でも加入が原則です。役員報酬を決めるときも、この負担を含めて考えてください。
標準報酬月額は、入社時に決めたあと、年に一度見直されます。算定基礎届という手続きです。会社設立から1年経つと、この作業が来ます。時期が決まっているため、忘れないようにしてください。
入社した月から保険料が発生します。月の途中で入社した場合の扱いも決まっています。日本で会社設立をした外国人が最初の採用をするとき、入社日をいつにするかで初月の負担が変わることがあります。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
SECTION 04労働保険料の会社負担

労働保険は、雇用保険と労災保険をあわせた呼び方です。人を雇うと加入することになります。
雇用保険料は、会社と本人が負担します。労災保険料は、全額を会社が負担します。料率は事業の種類によって違い、危険度の高い事業では高くなります。
労働保険には年度更新という手続きがあります。1年分の保険料を概算で申告して納め、翌年に確定させる仕組みです。毎年決まった時期に来るため、資金の準備をしておいてください。
日本で会社設立をした外国人にとって、この手続きは1年目が初めてになります。時期を忘れないよう、カレンダーに入れておいてください。
なお、代表者は原則として労働者ではないため、雇用保険の対象にはなりません。労災保険についても同様ですが、特別加入という制度があります。
労災保険の料率は、事業の種類によって定められています。建設業や製造業では高く、事務中心の事業では低くなります。会社設立のときに、自分の事業がどの区分になるかを確認しておいてください。
このセクションの根拠:厚生労働省「労働保険の成立手続」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/index.html)
採用にかかる費用

人を雇うには、採用の費用もかかります。募集の方法によって、金額に大きな差があります。
ハローワークへの求人は、費用がかかりません。日本で会社設立をした外国人が最初の採用をするとき、まず検討する方法です。
求人サイトへの掲載は、掲載料がかかります。期間や掲載の形によって金額が変わります。人材紹介会社を使う場合は、採用が決まったときに成功報酬が発生します。
また、採用の作業にかかる時間も費用のうちです。募集の文章を作り、応募を受け、面接をする。会社設立の直後は事業の立ち上げと重なるため、負担が大きくなります。
入社後の教育にも時間がかかります。すぐに戦力になるとは限りません。この期間も見込んで、資金と時間の計画を立ててください。
外国人が日本で会社設立をした直後は、会社の知名度がありません。募集を出しても応募が来ないことがあります。その場合、条件を見直すか、募集の方法を変えることになります。この期間も見込んでおいてください。
知人からの紹介で採用する場合、費用はかかりませんが、条件の話がしにくくなることがあります。日本で会社設立をする外国人が知人を雇うときも、労働条件は書面にしてください。
このセクションの根拠:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html)
1年分を積み上げてみる

人件費の総額を把握するには、1年分を積み上げてみるのがいちばん分かりやすい方法です。
毎月の給与に、社会保険料の会社負担分と労働保険料の会社負担分を足します。これを12か月分。賞与を出す場合はその分も加えます。
そこに、代表者自身の役員報酬と社会保険料の会社負担分も加えます。日本で会社設立をした外国人が資金計画を立てるとき、この2人分が固定費の中心になります。
事務所の賃料と合わせると、毎月の固定費が見えてきます。売上が立つまでの期間、これを資本金で支えることになります。
資本金3,000万円という基準は、この負担を支える資金でもあります。1年分の固定費を計算して、何か月支えられるのかを出してみてください。
賞与を出す場合、その分にも社会保険料がかかります。賞与額に応じて計算され、会社と本人が分担します。日本で会社設立をした外国人が賞与を検討するときは、この負担も入れてください。
この積み上げは、事業計画書の収支の見通しにそのまま使えます。会社設立の前に一度計算しておけば、二度手間になりません。
このセクションの根拠:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(創業計画書の記入例)」(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html)
07事業計画書にどう書くか

事業計画書には、人員の計画も書きます。誰を、いつ、いくらで雇うのか。在留資格の申請では、この部分も見られます。
常勤職員1人以上という要件があるため、その予定を具体的に書いてください。すでに採用が決まっているなら、雇用契約書を添えます。
人件費は、収支の見通しの中で固定費として扱います。社会保険料の会社負担分も含めた金額で書いてください。給与だけを書くと、費用を過小に見積もっていると見られることがあります。
日本で会社設立をする外国人が計画を作るとき、この部分の数字が甘いと指摘を受けやすくなります。事業計画書の専門家確認でも、まず見られる箇所です。
事業が伸びて人を増やす計画があるなら、それも書いてください。いつ、何人増やすのか。それに応じて人件費がどう増えるのかを示します。
人員の計画を書くとき、その人にどういう役割を任せるのかも書いてください。事業の中でどう位置づけられるのかが分かると、計画に具体性が出ます。外国人が日本で会社設立をするときの事業計画書では、この説明が重要になります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
人件費は給与のどれくらいになりますか。
社会保険料と労働保険料の会社負担分が加わるため、給与の額より大きくなります。料率は年度や地域、事業の種類によって変わるため、最新の情報を日本年金機構や厚生労働省のページで確認してください。
社長ひとりでも社会保険料はかかりますか。
法人の事業所は、常時従業員を使用する場合、健康保険と厚生年金保険の適用事業所になります。この従業員には代表者ひとりだけの場合も含まれるとされています。役員報酬を出す場合、その分の保険料が発生します。
採用の費用を抑えたいのですが。
ハローワークへの求人は費用がかかりません。事業所の所在地を管轄するハローワークで手続きできます。会社設立の後、まず検討する方法です。
この項目の根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
まとめ:給与の1.15倍程度で見る

外国人が日本で会社設立をして常勤職員を雇うときの費用について見てきました。給与だけでなく、会社が負担する保険料が加わります。
- 給与の額を決める。相場と事業計画のつり合いで決める
- 社会保険料の会社負担分を加える。標準報酬月額にもとづいて計算される
- 労働保険料の会社負担分を加える。労災保険は全額が会社負担
- 採用にかかる費用も見込む。ハローワークなら費用はかからない
- 代表者自身の分も加える。1年分を積み上げて、資本金と比べる
実際の金額は給与の額や地域によって変わります。この記事は考え方の整理です。詳しくは社会保険労務士や税理士へご相談ください。
最後にひとつ。人件費は負担ですが、人がいることで事業の幅が広がります。日本語での対応、事務の処理、営業。外国人が日本で会社設立をして事業を伸ばしていくうえで、この投資は必要なものだと考えてください。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
読んでくださった方へ
人件費は、会社にとっていちばん重い固定費です。売上がなくても、毎月出ていきます。
日本で会社設立をする外国人にとって、在留資格の要件として人を雇うことになった以上、この費用を織り込んだ資金計画が必要になります。
1年分を紙に書き出してみてください。数字にすると、必要な資金がはっきりします。その作業を、会社設立の前にやっておくことをおすすめします。
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