株主の構成をどう決めるか|外国人の会社設立で押さえる持株比率と譲渡制限

この記事の対象
日本で株式会社を設立しようとしている外国人の方で、複数人で出資することを考えている方に向けた記事です。ひとりで設立する場合でも、将来の共同経営を想定しているなら参考になります。
株主の構成は、会社設立の時点ではあまり意識されないことがあります。しかし、意見が分かれたときや、誰かが抜けるときに、この設計が効いてきます。
以下は一般的な考え方の整理です。具体的な設計は事業の内容と関係者の状況によって変わります。会社設立の前に、司法書士や弁護士へご相談ください。
持株比率が何を決めるのか

株式会社では、株主総会で重要な事項を決めます。株主は持っている株式の数に応じて議決権を持ちます。つまり、誰がどれだけ株式を持つかが、会社の意思決定を左右します。
日本で会社設立をする外国人がひとりで出資する場合、この問題は起きません。すべての株式を自分が持つため、意思決定は自分で行えます。複数人で出資するときに、この設計が必要になります。
- 過半数取締役の選任や解任など、多くの事項を決められます。
- 3分の2以上定款の変更など、より重要な事項を決められます。
- 半数ずつ意見が分かれると決まらなくなります。避けたい形です。
- 少数の持分経営には関与しにくくなりますが、一定の権利は残ります。
会社設立の時点で、誰が実際に経営するのかをはっきりさせておくことが大切です。経営する人が意思決定できる比率を持っていないと、後で動きが取れなくなります。
外国人が日本で会社設立をする場合、在留資格の審査でも誰が経営しているのかが問われます。持株比率と経営の実態が食い違っていると、説明が難しくなります。
1株あたりの金額と発行する株式数は、会社設立のときに決めます。資本金3,000万円を1株1万円で発行するなら3,000株になります。複数人で出資する場合、この株式数を出資額に応じて割り振ることになります。
外国人が日本で会社設立をするとき、本国の家族や知人から出資を受けることがあります。その場合も、誰が何株持つのかを最初に決めて、株主名簿に記録してください。口約束のままにしておくと、後で確認できなくなります。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
SECTION 02譲渡制限をつけるかどうか

株式は、原則として自由に譲渡できます。ただし定款で、譲渡には会社の承認が必要だと定めることができます。これを譲渡制限といいます。
譲渡制限をつけておくと、株主が勝手に株式を第三者に売ることができなくなります。小さな会社では、知らない人が株主になるのを防ぐため、譲渡制限をつけるのが一般的です。
また、譲渡制限をつけている会社では、役員の任期を定款で最長10年まで伸ばすことができます。会社設立の後の登記の手間を減らせるため、この点でも選ばれています。
日本で会社設立をする外国人が、本国の関係者と共同で出資する場合も、譲渡制限をつけておくと安心です。関係者が変わっても、会社の構成を保ちやすくなります。
譲渡制限をつけた会社は、非公開会社と呼ばれます。日本で会社設立をする会社のほとんどがこの形です。上場を目指すような場合を除けば、制限をつけておくのが実務上の標準と考えてよいと思います。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
共同出資で決めておくこと

複数人で出資して会社設立をする場合、始める前に決めておきたいことがあります。うまくいっているうちは問題になりませんが、意見が分かれたときに効いてきます。
- 誰が経営の判断をするのか。役割分担をはっきりさせる。
- 報酬をどう決めるか。役員報酬と配当の考え方を決める。
- 誰かが抜けるとき、株式をどうするか。買い取りの方法と価格の決め方。
- 新しく出資を受けるとき、どう決めるか。
- 事業がうまくいかなかったとき、どうたたむか。
これらを書面にしておく方法もあります。株主間契約と呼ばれるものです。日本で会社設立をする外国人が、日本側のパートナーと組む場合、言葉や商習慣の違いから認識がずれることがあります。書面にしておくと、後の話し合いがしやすくなります。
役員報酬の決め方も、共同出資では揉めやすい点です。誰がいくら受け取るのか、業績が悪いときにどうするのか。会社設立の時点で考え方を決めておくと、毎年の話し合いが楽になります。外国人が日本で会社設立をして日本側のパートナーと組む場合、報酬の考え方が本国と違うこともあります。
このセクションの根拠:JETRO「日本での拠点設立方法」(https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/section1/page1.html)
在留資格との関係

外国人が日本で会社設立をして在留資格「経営・管理」を申請する場合、その人が実際に経営していることが前提になります。株式を持っているだけでは、この在留資格の対象になりません。
逆に、株式を持っていなくても、経営していれば対象になり得ます。ただし、出資していない人が経営していることの説明は、事案によっては難しくなります。会社設立の設計では、この点も考えてください。
入管庁の資料では、業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱うとされています。名義だけの経営者は認められにくいということです。
- 自分が出資し、自分が経営するもっとも説明しやすい形です。
- 自分が出資し、他人が経営する申請するのは経営する人です。自分は出資者にとどまります。
- 他人が出資し、自分が経営する経営の実態を説明できれば対象になり得ます。関係を整理しておきます。
- 共同で出資し、自分が経営する経営の主体がはっきりしていれば説明できます。
共同経営者のうち、外国人が複数いる場合は、それぞれの在留資格も確認してください。全員が「経営・管理」を取る必要があるとは限りません。実際に経営に当たる人が誰かによって、必要な在留資格が変わります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
05外国法人が株主になる場合

本国の会社が日本に子会社をつくるという形もあります。この場合、株主になるのは外国法人です。日本で会社設立をする外国人が、本国の会社の日本拠点をつくる場面でよく使われます。
外国法人が発起人になる場合、その法人が存在することと、代表者に権限があることを示す書類が必要になります。日本に商業登記のない外国法人については、本店所在国の領事や公証人が認証した資格証明書などを用意することになります。
宣誓供述書という形で証明することもあります。内容と様式は提出先によって変わるため、会社設立の準備の前に公証役場や法務局へ確認してください。
外国法人が株主になる会社設立では、外国為替及び外国貿易法にもとづく届出が必要になる場合があります。日本で会社設立をする外国人が本国の会社から出資を受ける形をとるときは、この点も確認してください。専門家に相談するのが確実です。
このセクションの根拠:栗林総合法律事務所「外国法人の日本子会社設立」(https://kslaw.jp/column/detail/4459/)
株主名簿と、その管理

株主が誰であるかは、登記されません。会社が株主名簿を作って管理します。会社設立のときに作り、変動があれば書き換えます。
日本で会社設立をした外国人が、法人口座の開設や在留資格の申請で株主の構成を説明する場面があります。そのときに株主名簿を使います。作っていないと、説明の資料がないことになります。
- 株主の氏名または名称と住所
- 持っている株式の数
- 株式を取得した日
- 作成日と、更新の履歴
また、株式会社の定款認証では、実質的支配者となるべき者の申告書を公証役場へ提出します。誰が最終的にその会社を支配するのかを申告するものです。株主の構成と関係する書類です。
株主名簿は、決まった様式があるわけではありません。必要な項目が入っていれば、表計算ソフトで作ったもので構いません。会社設立の直後に作り、変動があるたびに更新してください。
実質的支配者となるべき者の申告書では、議決権の割合などをもとに、その会社を実質的に支配している人を申告します。外国人が日本で会社設立をする場合、本国の親会社が関わると記載が複雑になることがあります。公証役場に相談しながら作成してください。
このセクションの根拠:日本公証人連合会「Q7. 認証の手数料(定款認証)」(https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12/12-q7)
あとから変えるときの手続き

会社設立の後で株主を変えるには、株式の譲渡という手続きを踏みます。譲渡制限をつけている会社では、会社の承認が必要になります。
譲渡の価格をどう決めるかも問題になります。事業が動いている会社の株式は、出資したときの金額とは価値が変わっています。当事者の間で合意できない場合、話がまとまらなくなります。
外国人が日本で会社設立をするとき、一時的に協力者に株主になってもらう形をとることがあります。あとで解消する前提であれば、価格の決め方を最初に書面にしておいてください。
株式の譲渡には、株主総会や取締役会の承認が必要になることがあります。手続きを踏まずに譲渡すると、会社に対して効力を主張できないことがあります。日本で会社設立をした外国人が、後で持分を整理するときは、手続きの順番を確認してください。
このセクションの根拠:国税庁「法人税」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/hojin.htm)
SECTION 08よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
株主は登記されますか。
株主は登記されません。会社が株主名簿を作って管理します。登記されるのは、商号、本店、目的、資本金の額、役員などです。
譲渡制限はつけたほうがよいですか。
小さな会社では、知らない人が株主になるのを防ぐためにつけるのが一般的です。また、譲渡制限をつけている会社では役員の任期を最長10年まで伸ばせるため、登記の手間も減ります。
出資しないと在留資格「経営・管理」は取れませんか。
出資の有無そのものが要件として示されているわけではありません。ただし、経営者としての活動実態が求められます。出資していない人が経営していることの説明は、事案によっては難しくなります。
この項目の根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
まとめ:始める前に、終わり方まで決める

外国人が日本で会社設立をするときの株主の構成について見てきました。ひとりで設立するなら簡単ですが、複数人で出資するなら、決めておくことがあります。
- 誰が経営するのかをはっきりさせ、その人が決められる比率にする
- 譲渡制限を定款に入れる。役員の任期も伸ばせるようになる
- 誰かが抜けるときの決め方を、書面にしておく
- 在留資格の申請をする人と、出資者の関係を整理しておく
- 株主名簿を作り、変動があれば更新する
この記事は考え方の整理であり、個別の設計についての助言ではありません。会社設立の設計は、関係者の状況によって最適な形が変わります。司法書士や弁護士、税理士へご相談ください。
最後にひとつ。会社設立の時点では、株主が自分ひとりだったとしても、将来のことを考えて定款を設計しておく価値はあります。譲渡制限や役員の任期は、その代表的な項目です。外国人が日本で会社設立をして長く続けていくなら、最初の設計に少し時間をかけてみてください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
読んでくださった方へ
共同で事業を始めるときは、うまくいくことしか考えないものです。ただ、決め事をしておくのは、疑うためではなく、後で困らないためです。
日本で会社設立をする外国人が、日本側のパートナーと組む場合、言葉や商習慣の違いから認識がずれることがあります。書面にしておくと、そのずれに早く気づけます。
始める前の話し合いは気が重いかもしれませんが、そこに時間をかけた会社ほど、後で揉めにくいと感じています。
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