日本語が不安でも会社設立は進むか|外国人が使える体制のつくり方

この記事の対象
日本語に不安があるけれど、日本で会社設立をしたいと考えている外国人の方に向けた記事です。手続きを手伝う日本側の担当者にも読んでいただけます。
会社設立の手続きは、ほとんどが日本語で進みます。書類も日本語、窓口でのやり取りも日本語です。ただ、すべてを自分でやる必要はありません。
どこで日本語が必要になるのかを知り、そこをどう補うかを決めておけば、進められます。この記事では、その体制のつくり方を整理します。
SECTION 01日本語が必要になる場面

日本で会社設立をするとき、日本語が必要になる場面はいくつかに分かれます。書類を作る場面、窓口でやり取りする場面、そして設立後の日常の運営です。
書類は、定款、登記申請書、税務署への届出、在留資格の申請書。すべて日本語で作ります。外国語で作った書類には、日本語訳を添えることになります。
窓口では、公証役場、法務局、税務署、年金事務所、金融機関でのやり取りがあります。電話での連絡が来ることもあります。
設立後は、取引先とのやり取り、契約書の確認、役所からの通知の理解。日本で会社設立をした外国人が事業を続けるうえで、日本語は日常的に必要になります。
それぞれの場面で、自分でやるのか、人に頼むのかを決めておいてください。全部を自分でやる必要はありません。
日本語の壁は、外国人が日本で会社設立をするときにいちばん最初に感じる不安かもしれません。ただ、実際に手続きを進めてみると、書類の多くは専門家が作りますし、窓口では同行してもらえます。
問題は、何が起きているのかが自分で分からなくなることです。人に任せていても、内容は理解しておいてください。会社設立の書類は、自分の会社の基本になるものです。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」(https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/index.html)
専門家に頼める範囲

書類の作成は、専門家に依頼できます。ただし、資格によって扱える業務の範囲が法律で定められています。
設立登記の書類は司法書士、在留資格の申請書類は行政書士、税務の届出は税理士、社会保険の手続きは社会保険労務士。日本で会社設立をする外国人は、この分担を知っておいてください。
入管庁の資料では、弁護士および行政書士以外の方が、官公署に提出する申請書等の書類の作成を報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反に当たるおそれがあると注意されています。
外国語での対応ができる事務所もあります。数は限られますが、探せば見つかります。会社設立の相談をするとき、対応できる言語を聞いてみてください。
依頼する範囲を決めるときは、費用と時間の両方で考えます。日本語で調べながら自分でやることもできますが、その時間を事業の準備に使えなくなります。
依頼先を探すときは、外国人の会社設立を扱った経験があるかも聞いてみてください。制度の背景を理解している相手のほうが、説明も丁寧になります。紹介で見つかることもあります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
常勤職員に日本語を任せる

在留資格「経営・管理」では、1人以上の常勤職員の雇用が必要になりました。この人に日本語での対応を任せるという組み立てがあります。
日本人を雇えば、日本語能力の要件も同時に満たせます。日本で会社設立をする外国人にとって、いちばん分かりやすい形です。
任せられるのは、電話の対応、来客の対応、書類の確認、役所からの通知の整理など。事業の運営で日本語が必要になる部分を、広くカバーできます。
ただし、その人がすべてを判断できるわけではありません。経営の判断は代表者が行います。入管庁の資料では、経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱うとされています。
任せる範囲と、自分で判断する範囲を分けておいてください。日本語の対応は任せても、経営の判断は自分でするという形です。
採用の面接でも、日本語での対応をどこまで任せられるかを確認してください。電話の対応、書類の読み取り、役所とのやり取り。日本で会社設立をした外国人にとって、この部分を担ってもらえる人がいると事業が安定します。
日本語のできる人を雇うといっても、その人がすべての専門用語を理解しているとは限りません。税務や登記の用語は、日本人でも慣れが要ります。専門的な部分は専門家に、日常の部分は職員に、という分担で考えてください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
04翻訳と通訳をどう使うか

外国語で作成された書類には、原則として日本語訳を添えます。サイン証明、宣誓供述書、学位や職歴の証明。日本で会社設立をする外国人が本国から取り寄せる書類の多くが対象です。
翻訳者に資格の要件が定められていない場合もありますが、誰が翻訳したのかを記載するよう求められることがあります。提出先によって扱いが違うため、確認してください。
逆に、日本語の契約書や通知を理解するために翻訳が必要になることもあります。重要な契約は、内容を理解してから署名してください。
対面のやり取りでは、通訳を頼む方法があります。窓口での手続きや、金融機関との面談。会社設立の過程で、こうした場面が出てきます。
自治体によっては、外国人向けの相談窓口で多言語の対応をしているところもあります。制度の説明を聞く段階では、こうした窓口も使えます。
翻訳の費用も見込んでおいてください。本国から取り寄せる書類、日本語の契約書。会社設立の過程で、翻訳が必要になる場面は複数あります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」(https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/index.html)
設立後の運営をどう回すか

会社設立が終わると、日常の運営が始まります。ここでも日本語が必要になりますが、場面によって求められる水準が違います。
取引先とのやり取りは、日常の日本語で足りることが多くあります。一方、契約書や役所からの通知は、専門的な日本語が使われます。
専門的な部分は、専門家に確認する体制を作っておいてください。税務は税理士、労務は社会保険労務士、法務は司法書士や弁護士。日本で会社設立をした外国人が、判断に迷ったときに聞ける相手を持っておくことが大切です。
日常の部分は、常勤職員に任せられます。電話の対応、来客の対応、書類の受け渡し。事業が回るようにしておきます。
自分でも少しずつ覚えていくことをおすすめします。すべてを人に任せていると、事業の状況が分からなくなります。
会計ソフトの日本語表示に慣れるまでにも時間がかかります。日本で会社設立をした外国人が記帳を自分でやる場合、この点も考えておいてください。税理士に依頼するという選択肢もあります。
また、役所からの通知は郵便で届きます。日本語で書かれた封筒を開けずに置いてしまうと、期限を過ぎることがあります。会社設立の後は、郵便物を必ず確認する習慣をつけてください。
このセクションの根拠:国税庁「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」(https://www.e-tax.nta.go.jp/)
在留資格の申請での説明

在留資格の申請では、書類の提出だけでなく、内容について質問を受けることがあります。事業の内容や、資金の出どころについて説明を求められる場面です。
日本語での説明が難しい場合、通訳や、日本語のできる同席者を用意してください。行政書士に依頼していれば、同席してもらえることもあります。
ただし、事業の内容については、代表者本人が説明できることが望ましいと考えられます。入管庁の資料では、経営者としての活動実態が求められています。他人がすべてを説明する形だと、実態について疑問を持たれることがあります。
日本で会社設立をする外国人は、自分の事業を短く説明する練習をしておいてください。完璧な日本語でなくても、自分の言葉で話せることに意味があります。
法人口座の開設でも同じです。金融機関の面談で、事業について説明することになります。会社設立の後、この場面が来ます。
説明の練習をするときは、短い文で話すことを心がけてください。何を、誰に、いくらで売るのか。この骨格を日本語で言えるようにしておくと、多くの場面で使えます。
面談では、聞かれたことに簡潔に答えることを心がけてください。長く話そうとすると、かえって伝わりにくくなります。日本で会社設立をする外国人にとって、短く正確に答えるほうが評価されます。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html)
SECTION 07体制をつくるときの順番

日本語の体制は、段階ごとに考えると整理しやすくなります。会社設立の段階、在留資格の申請の段階、そして設立後の運営の段階です。
会社設立の段階では、書類の作成が中心です。司法書士や行政書士に依頼すれば、この部分は進みます。窓口へ行く場面では、同行してもらう方法もあります。
在留資格の申請の段階では、書類に加えて説明が必要になります。行政書士に依頼し、必要なら通訳を用意します。
設立後の運営の段階では、常勤職員と専門家の体制で回します。日本で会社設立をした外国人が、長く事業を続けるための体制です。
最初からすべてを整える必要はありません。段階ごとに必要なものを用意していけば、進められます。
段階が進むにつれて、自分でできることも増えていきます。日本で会社設立をした外国人が、数年経つと日本語での対応に慣れているという話はよく聞きます。最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。
このセクションの根拠:JETRO「日本での拠点設立方法」(https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/section1/page1.html)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
日本語ができなくても会社設立できますか。
書類の作成は司法書士や行政書士に依頼できます。窓口へは同行してもらう方法もあります。ただし、在留資格「経営・管理」では日本語能力の要件があり、申請者または常勤職員のいずれかが満たす必要があります。
通訳を連れて行ってもよいですか。
窓口や面談に同席してもらうことは一般的に行われています。ただし、事業の内容については代表者本人が説明できることが望ましいと考えられます。
契約書が読めないときはどうすればよいですか。
重要な契約は、内容を理解してから署名してください。翻訳を依頼するか、専門家に内容を確認してもらう方法があります。
この項目の根拠:出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」(https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/index.html)
まとめ:日本語は体制で補える

日本語に不安があっても、日本で会社設立を進めることはできます。どこで日本語が必要になるのかを知り、そこをどう補うかを決めておけば進められます。
- 日本語が必要になる場面を書き出す。書類、窓口、日常の運営
- 書類は専門家に依頼する。分野ごとに依頼先が分かれている
- 日本語のできる常勤職員を雇う。要件も同時に満たせる
- 外国語の書類には日本語訳を添える。対面では通訳も使える
- 事業の内容は自分で説明できるようにしておく。丸投げにしない
体制を作れば、日本語は会社設立の障害になりません。ただし、経営の判断は自分で行うという点は変わりません。判断に迷うところは、専門家へご相談ください。
最後にひとつ。日本語ができないことを引け目に感じる必要はありません。外国人が日本で会社設立をすること自体が、日本の経済にとって意味のあることです。体制を整えて、事業に集中してください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
読んでくださった方へ
日本語ができないから会社設立は無理だ、と考える必要はありません。書類の作成も、窓口でのやり取りも、頼める相手がいます。
ただ、自分の事業については、自分の言葉で説明できるようにしておいてください。完璧な日本語でなくても構いません。何をしたいのかが伝わることが大切です。
日本で会社設立をする外国人にとって、日本語は少しずつ覚えていくものだと思います。急がず、体制を作りながら進めてください。
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