合同会社と株式会社、外国人はどちらを選ぶか|判断の材料を10項目で比べる

この記事の位置づけ
日本で会社設立をすると決めたものの、株式会社と合同会社のどちらにするか迷っている外国人の方に向けた記事です。手続きを手伝う日本側の担当者が、選択肢を説明する場面も想定しています。
この判断に絶対の正解はありません。事業の内容、取引の相手、将来の計画によって、向いている形が変わります。この記事では、判断の材料になる10の項目を並べて比べます。
金額や制度の内容は2026年8月時点の公表資料にもとづく目安です。会社設立の具体的な設計については、司法書士や税理士へご相談ください。
比較の前に:どちらも法人であることは同じ

最初に押さえておきたいのは、株式会社も合同会社も法人であるという点です。設立の手続きや内部の仕組みは違いますが、設立後にやることは大きく変わりません。
法人税の申告、消費税の扱い、社会保険への加入、労働保険の手続き。これらはどちらの形態でも同じように必要になります。日本で会社設立をした外国人にとって、日々の運営で感じる違いは思ったより小さいものです。
在留資格「経営・管理」の基準も共通です。入管庁の資料では、資本金等の額について、株式会社における払込済資本の額、または合名会社・合資会社・合同会社の出資の総額を指すとされています。どちらでも3,000万円以上という基準は変わりません。
つまり、選択によって変わるのは、設立時の費用と手続き、対外的な見え方、内部の意思決定の仕組み、そして将来の選択肢の広さです。この記事では、その部分を比べていきます。
外国人が日本で会社設立をするとき、この選択に時間をかけすぎる方がいます。ただ、実際に事業を始めてしまえば、日々の運営で形態の違いを意識する場面はそれほど多くありません。決めきれない場合は、いま分かっている条件で決めて、先へ進むほうがよいこともあります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
02項目1〜3:設立の費用と手間

設立時の費用では、合同会社のほうが安くなります。定款認証の手数料がかからず、設立登記の登録免許税の最低額も低いためです。

外国人が日本で会社設立をする場合、公証役場での書類の扱いを確認する手間が省ける点も、合同会社の利点です。印鑑証明書が取れない場合の確認先が、法務局だけになります。
ただし、資本金の額が大きくなると登録免許税の差はなくなります。資本金3,000万円なら、どちらも21万円です。在留資格の基準に合わせる場合、費用の差は認証手数料の分だけになります。
会社設立の費用には、法定費用のほかに専門家への報酬もかかります。この報酬は、株式会社のほうがやや高くなる傾向があります。定款認証の手配が加わるためです。日本で会社設立をする外国人が見積もりを取るときは、この点も確認してください。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
項目4〜5:対外的な見え方と信用

取引先や金融機関からの見え方は、株式会社のほうが有利に働くことがあります。日本では株式会社の数が圧倒的に多く、合同会社はまだ新しい形だからです。
特に、大企業との取引や、公的な入札に参加する場合、株式会社であることを条件にされることがあります。事業の相手がそうした先であれば、株式会社を選ぶ理由になります。
一方、消費者向けの事業では、会社の形態が問われる場面はほとんどありません。飲食、小売、サービスなど、個人が相手の事業であれば、合同会社でも支障は少ないと考えられます。
外国人が日本で会社設立をする場合、そもそも新しい会社であることと、代表者が外国人であることの両方が説明の対象になります。会社の形態だけで判断されるわけではありません。事業の実態を説明できることのほうが大切です。
- 大企業との取引株式会社が求められることがあります。
- 消費者向けの事業形態が問われる場面は少なくなります。
- 法人口座の開設形態より、事業の実態の説明が重視されます。
- 求人株式会社のほうが応募が集まりやすいという声もあります。
金融機関の法人口座の開設では、形態そのものより、事業の実態と代表者の在留資格が見られます。外国人が代表の会社は、どちらの形態でも説明を求められることが多くなります。会社設立の形を選ぶ理由として、口座開設のしやすさはあまり大きな要素ではありません。
このセクションの根拠:JETRO「日本での拠点設立方法」(https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/section1/page1.html)
項目6〜7:内部の仕組みと意思決定

株式会社では、出資する人と経営する人が制度上分かれています。株主が出資し、取締役が経営します。同じ人が兼ねることもできますが、分けることもできます。
合同会社では、出資した人がそのまま経営に関わります。出資だけしてもらうという形が取りにくい構造です。定款で業務執行社員を定めれば、経営に当たる人を絞ることはできます。
意思決定の速さでは、合同会社のほうが有利なことがあります。株主総会という手続きがないため、社員の間で決めればよい形になります。日本で会社設立をする外国人が少人数で始める場合、この身軽さが働きます。
一方、株式会社では議決権の割合によって決められることが定まっています。関係者が多い場合、この仕組みがあるほうがまとまりやすいこともあります。
利益の配分も違います。合同会社では、出資の割合と違う配分を定款で定めることができます。株式会社では、原則として持株数に応じた配当になります。
共同で会社設立をする場合、意思決定の仕組みは特に重要になります。株式会社なら議決権の割合で決まり、合同会社なら定款の定めによります。日本で会社設立をする外国人が日本側のパートナーと組む場合、どちらの仕組みが合うかを話し合ってみてください。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
SECTION 05項目8:将来の資金調達

将来、外部から出資を受けることを考えている場合、株式会社のほうが設計しやすくなります。株式を発行して出資を受けるという方法が使えるためです。
合同会社でも新しい社員を迎えて出資を受けることはできますが、その人が経営に関わることになります。投資家が経営に関わらない形をとりにくい構造です。
融資については、形態による差は大きくありません。日本政策金融公庫の創業向けの融資なども、どちらの形態でも申し込めます。事業計画の内容が判断の中心になります。
外国人が日本で会社設立をする場合、まずは自己資金と、必要なら融資という形が現実的です。投資を受ける段階に進む可能性があるかどうかで、形態を選んでください。
補助金や助成金についても、形態による差は基本的にありません。事業の内容や従業員の状況が要件になることが多いためです。会社設立の後に活用を考えている場合は、募集の要件を確認してください。
また、事業が育ってから株式会社に組織変更するという道もあります。最初は合同会社で始めて、規模が大きくなった段階で変えるという考え方です。手続きの費用はかかりますが、その時点では負担できる状況になっていることも多いはずです。
このセクションの根拠:日本政策金融公庫「新規開業資金」(https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/)
項目9〜10:運営の手間と、続けやすさ

株式会社の取締役には任期があります。原則2年、譲渡制限のある会社では定款で最長10年まで伸ばせます。任期が満了すると、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要で、登録免許税がかかります。
合同会社には、この任期の仕組みがありません。代表社員を変えないかぎり、定期的な登記は発生しません。長く続けることを考えると、この差が積み重なります。
決算公告についても違いがあります。株式会社には決算を公告する義務がありますが、合同会社にはありません。日本で会社設立をした外国人にとって、この手間の差も判断材料になります。

設立時の費用だけでなく、こうした継続的な手間も含めて考えると、合同会社の負担の軽さがはっきりします。
もうひとつ、株式会社では役員の任期管理が必要になります。会社設立から10年後に登記を忘れていて、過料の通知が来て初めて気づくという例があります。日本で会社設立をした外国人が長く事業を続ける場合、この管理も負担のひとつになります。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
判断の順番

10の項目を並べましたが、判断の順番としては、事業の相手から考えるのが分かりやすいと思います。
- 事業の相手は誰か。大企業か、消費者か、本国の取引先か
- その相手が、会社の形態を気にするか
- 将来、外部から出資を受ける計画があるか
- 設立の費用をどこまで抑えたいか
- 設立後の手間をどこまで許容できるか
外国人が日本で会社設立をする場合、本国の関係者との関係も考えることになります。本国の会社が親会社になる形であれば、合同会社でも支障が少ないことが多くあります。
一方、日本国内で幅広く取引していく計画であれば、株式会社を選んでおくほうが、あとで組織変更の手間をかけずに済むこともあります。
事業の相手が本国にある場合も考えてみてください。本国の取引先が日本の会社形態を理解していないことも多く、その場合はどちらでも変わりません。外国人が日本で会社設立をする目的が本国とのやり取りにあるなら、費用と手間で選んでよいと思います。
迷ったときは、いま決めなければならないことと、あとで決められることを分けてみてください。会社設立の形態は、あとから変えるのに手間がかかる項目です。一方、事業の細かい進め方は、始めてから調整できます。
このセクションの根拠:中小企業基盤整備機構「J-Net21 起業支援」(https://j-net21.smrj.go.jp/startup/index.html)
08よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
どちらのほうが在留資格を取りやすいですか。
公表された許可基準の中に、会社の形態による有利不利は書かれていません。資本金等の額については、合同会社の場合は出資の総額を指すとされており、基準は同じです。
合同会社は信用されにくいですか。
取引の相手によります。大企業との取引や公的な入札では株式会社が求められることがありますが、消費者向けの事業では形態が問われる場面は少なくなります。
設立後の税金は変わりますか。
法人税や社会保険の扱いは、どちらの形態でも同じです。設立後にやることに大きな違いはありません。
この項目の根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
まとめ:10項目を自分の場合に当てはめる

外国人が日本で会社設立をするときの、株式会社と合同会社の比較を10項目で見てきました。どちらが優れているという話ではなく、事業に合うかどうかの問題です。
- 設立費用:合同会社が10万円以上安くなります
- 設立の日数:合同会社のほうが短くなります
- 対外的な信用:取引の相手によっては株式会社が有利です
- 内部の仕組み:合同会社は出資と経営が一体です
- 資金調達:株式を使うなら株式会社です
- 運営の手間:合同会社には任期も決算公告もありません
- 在留資格の基準:どちらでも同じです
この記事は判断材料の整理です。個別の設計は事業の内容によって変わります。会社設立の形態選びについては司法書士や税理士へ、在留資格の要件については行政書士へご相談ください。
最後に、この判断は事業を始めるための入口にすぎません。会社設立の形を決めたら、次は事業計画と在留資格の準備に進みます。そちらのほうが時間も労力もかかります。形態選びで立ち止まりすぎないようにしてください。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
読んでくださった方へ
この選択で悩む方は多いのですが、決めきれずに時間が過ぎてしまうのがいちばんもったいないと思います。
日本で会社設立をする外国人にとって、形態の選択は入口の話です。その先には、在留資格や事業の立ち上げという、もっと大きな作業が待っています。
事業計画がある程度見えているなら、それを持って一度相談してみてください。専門家から見れば、事業の内容から向いている形が分かることも多くあります。
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