事務所の条件を先に確認する|外国人の会社設立で借り直しにならないために

この記事の対象
日本で会社設立をするにあたって、事務所を探している外国人の方に向けた記事です。物件を決める前に読んでいただきたい内容です。
事務所については、2つの話が混ざりやすくなっています。ひとつは登記上の本店をどこにするかという話、もうひとつは在留資格「経営・管理」で求められる事業所の条件という話です。この2つを分けて考えます。
取り扱いは事案によって判断されます。この記事は考え方の整理です。物件を契約する前に、入管手続きに詳しい行政書士へご相談ください。
01登記上の本店と、在留資格の事業所は別の話

会社設立の登記では、本店の所在地を記載します。ここには特別な条件がなく、住所を書けば登記できます。自宅でも、レンタルオフィスでも、登記そのものは可能です。
一方、在留資格「経営・管理」の審査では、事業所についての条件が別に見られます。入管庁の資料では、改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められないとされています。
つまり、登記はできるが在留資格の面では認められない、という状況があり得ます。日本で会社設立をする外国人が、この違いを知らずに物件を決めてしまうと、借り直しになります。
どちらの条件も満たす場所を選ぶ、というのが基本の考え方です。在留資格を目指すのであれば、厳しいほうの条件に合わせることになります。
在留資格を目指さない場合、たとえば永住者や日本人の配偶者等として日本で会社設立をする外国人であれば、この条件は関係しません。自分がどちらに当たるかを、まず確認してください。
会社設立の準備の中で、事務所は金額がいちばん大きく動く部分です。敷金、礼金、内装。決めてしまうと戻せません。だからこそ、条件の確認を最初に置く価値があります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
自宅を事務所にできるか

入管庁の資料では、改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められないとされています。
以前は、区画が明確に分かれているなど一定の条件を満たせば認められる余地があるとされていました。2025年10月16日施行の改正にともなう説明では、原則として認められないという書き方になっています。
日本で会社設立をする外国人が、まず自宅で始めようと考えることは自然です。費用を抑えられますし、事業が小さいうちは十分だからです。しかし、在留資格を目指すのであれば、この道は取りにくくなりました。
登記上の本店を自宅にすること自体は可能です。在留資格を必要としない立場の方であれば、選択肢として残ります。
また、自宅を本店にすると、その住所が登記事項証明書に載って誰でも見られる状態になります。プライバシーの面でも考えておいてください。
住居用の物件を借りて、そこを会社設立の本店にする場合、賃貸借契約で事業用の利用が禁じられていることがあります。契約に違反すると、貸主から解約を求められることもあります。日本で会社設立をする外国人は、この点も確認してください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
契約の名義と用途

事務所の賃貸借契約は、会社名義で、用途を事業用として結ぶのが基本です。在留資格の審査でも、法人口座の開設でも、この契約書が資料になります。
問題は、会社設立の登記が終わっていないと会社名義で契約できないという点です。一方、登記には本店の住所が必要です。この順番をどうするかが実務上の課題になります。
実際には、まず物件を押さえて、登記が終わってから会社名義に切り替えるという進め方が取られることがあります。貸主の了解が必要になるため、事前に相談しておいてください。
日本で会社設立をする外国人の場合、法人契約の実績がないことを理由に断られることもあります。時間に余裕を持って物件を探してください。
- 契約の名義会社名義が基本です。個人名義のままだと説明が必要になります。
- 用途事業用であることが分かる契約にします。居住用のままでは説明が難しくなります。
- 契約期間短期や月単位の契約では、継続性の説明が難しくなることがあります。
- 貸主の了解登記後に名義を変える予定であれば、事前に相談しておきます。
契約書の写しは、在留資格の申請と法人口座の開設の両方で使います。会社設立の後、まとめて保管しておいてください。
契約書には、賃料、契約期間、更新の条件、用途、解約の予告期間などが書かれています。日本語で書かれているため、外国人が日本で会社設立をするときは、内容を理解してから署名してください。分からない部分は、不動産会社に説明を求めて構いません。
このセクションの根拠:経営管理ビザ・日本進出サポートセンター「外資系の新設法人はなぜ銀行口座を作りにくいのか」(https://touch.or.jp/keiei/foreign-company-bank-account-japan/)
SECTION 04バーチャルオフィスとレンタルオフィス

バーチャルオフィスは、住所と郵便物の受け取りだけを提供するサービスです。実際に業務を行う場所がないため、在留資格の審査では説明が難しくなります。
レンタルオフィスやシェアオフィスは、実際に机や部屋を借りる形です。専有の区画があるかどうか、鍵がかかるかどうかで扱いが変わることがあります。
入管庁の資料では、規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があるとされています。事業の内容に見合った場所かどうかが見られることになります。
日本で会社設立をする外国人が費用を抑えたい場合、レンタルオフィスは選択肢になり得ます。ただし、契約の形態や専有の有無によって判断が変わるため、事前に確認してください。
また、同じ住所に多くの会社が登記されている場合、同一住所・同一商号の問題が出ることもあります。会社設立の前に法務局で確認してください。
レンタルオフィスの中には、法人登記の利用を認めているところと、認めていないところがあります。会社設立の本店にする予定であれば、契約の前に確認してください。追加の料金がかかることもあります。
このセクションの根拠:経営管理ビザ・日本進出サポートセンター「外資系の新設法人はなぜ銀行口座を作りにくいのか」(https://touch.or.jp/keiei/foreign-company-bank-account-japan/)
物件を探すときの手順

物件を探す前に、条件を書き出してください。事業の内容、必要な広さ、必要な設備、予算、場所。これが決まっていないと、物件を見ても判断できません。
事業の内容によって、必要な設備が変わります。飲食業なら厨房、物販なら在庫を置く場所、士業やコンサルティングなら打ち合わせのできる空間。外国人が日本で会社設立をするとき、その事業を実際に行える場所であることが求められます。
不動産会社に伝えるときは、法人契約であること、事業用として使うこと、外国人が代表であることを最初に伝えてください。後から分かると、話が止まることがあります。
また、許認可が必要な事業では、物件そのものに条件があることがあります。飲食業の営業許可、宅地建物取引業の事務所要件など。会社設立の前に、許認可の窓口へ確認してください。
契約の前に、在留資格の面で問題がないかを行政書士に確認してもらうと安心です。日本で会社設立をする外国人にとって、この確認は費用の節約にもつながります。
場所を選ぶときは、取引先や顧客からの通いやすさも考えてください。日本で会社設立をする外国人が、住んでいる場所の近くで探すことが多いのですが、事業の相手がどこにいるかも重要な要素です。
このセクションの根拠:東京都「TOKYO創業ステーション(東京都中小企業振興公社)」(https://startup-support.metro.tokyo.lg.jp/)
初期費用と毎月の費用

事務所にかかる費用は、初期費用と毎月の費用に分かれます。初期費用は敷金、礼金、仲介手数料、内装や什器の購入。毎月は賃料、共益費、光熱費、通信費です。
事業用の物件では、敷金が賃料の数か月分になることがあります。地域と物件によって差が大きい部分です。日本で会社設立をする外国人が資金計画を立てるとき、ここを見積もっておいてください。
また、保証会社の利用を求められることがあります。その場合、保証料も発生します。外国人が代表の法人契約では、保証人や保証会社の条件が厳しくなることもあります。
毎月の賃料は、事業が始まっても終わらない固定費です。売上が立つまでの期間を見込んで、支払い続けられる額に抑えてください。
資本金の額を決めるときにも、この費用が関係します。会社設立の前に、事務所の費用を含めた12か月分の支出を積み上げてみてください。
内装や什器にも費用がかかります。机、椅子、パソコン、通信環境。事業の内容によっては、専用の設備が必要になります。会社設立の資金計画には、この分も入れてください。
このセクションの根拠:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(創業計画書の記入例)」(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html)
07事務所を移転するとき

事業が育って手狭になったり、条件の合う物件が見つかったりして、事務所を移転することがあります。その場合、登記と在留資格の両方に影響します。
本店の所在地が変わったら、変更登記が必要です。登録免許税は本店の移転として1か所につき3万円とされています。管轄が変わる場合、手続きが増えることがあります。
在留資格「経営・管理」を持っている外国人が日本で事業を続ける場合、移転先も事業所の条件を満たす必要があります。次の在留期間の更新で、事業の状況とあわせて見られることになります。
税務署や年金事務所への届出も必要になります。登記だけで終わりではありません。移転の予定が立ったら、関係する届出を一覧にしておいてください。
移転の時期は、在留期間の更新と重ならないようにするのが無難です。更新の直前に移転すると、新しい事務所での事業の実態がまだ示せないことがあります。日本で会社設立をした外国人は、この時期の調整も考えてください。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
自宅を事務所にできますか。
登記上の本店にすること自体は可能です。ただし在留資格「経営・管理」については、入管庁の資料で、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められないとされています。在留資格を目指す場合は、別に事務所を確保することになります。
レンタルオフィスでもよいですか。
実際に業務を行える場所であるかが問われます。専有の区画があるかどうかなどで判断が変わることがあるため、契約の前に行政書士へご相談ください。
契約は会社名義でないとだめですか。
会社名義で事業用として契約するのが基本です。ただし登記が終わるまでは会社名義で契約できないため、貸主と相談して順番を決めることになります。
この項目の根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
まとめ:契約の前に確認する

外国人が日本で会社設立をするときの事務所について見てきました。登記上の本店と、在留資格で求められる事業所は別の話です。両方の条件を満たす場所を選ぶことになります。
- 在留資格を目指すかどうかを確認する。目指すなら条件が厳しくなる
- 自宅兼用は原則として認められないとされている。物件を借りる前提で考える
- 契約は会社名義で、事業用として。登記との順番を貸主に相談する
- バーチャルオフィスは説明が難しくなる。実際に業務ができる場所を選ぶ
- 契約の前に、行政書士に条件を確認してもらう
取り扱いは事案によって判断されます。この記事は考え方の整理です。物件を契約する前に、入管手続きに詳しい行政書士へご相談ください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
読んでくださった方へ
事務所の条件を後から知って借り直すのは、金額としても時間としても大きな損失です。それだけに、契約の前の確認には価値があります。
日本で会社設立をする外国人にとって、物件探しは日本語でのやり取りが多い場面です。不安があれば、日本語のできる方に同行してもらってください。
条件を満たす物件が見つかれば、そこから先の手続きは順番どおりに進みます。ここが最初の関門だと思って、慎重に進めていただければと思います。
この記事は役に立ちましたか?
押した数は同じ端末では二重に数えません。内容の誤りや制度変更に気づいた方は、お問い合わせページからご連絡ください。




