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経営管理ビザの500万円は誰が決めた?|外国人の会社設立の基準と、改正の決まり方

経営管理ビザの500万円は誰が決めた?|外国人の会社設立の基準と、改正の決まり方

この記事が答えようとしている問い

「経営管理ビザの500万円は誰が決めたのか」。改正が報じられてから、この問いで検索する方が増えました。昔の基準で日本で会社設立を考えていた外国人の方、500万円で起業した知人の話を聞いてきた方、そして「なぜ急に変わったのか」と顧客に聞かれる行政書士や取引先の担当者の方に向けた記事です。

答えを先に言えば、特定の誰かが一人で決めたものではありません。法律が基準づくりを法務省令に委ね、法務大臣がその省令を定め、出入国在留管理庁が運用の考え方を示す、という仕組みの中で決まってきた数字です。この記事では、その仕組みと、500万円が置かれていた条文、いつから使われていたか、3,000万円に変わった手続きを、公表資料で確かめられる範囲に限って追います。

記載は2026年10月時点のものです。確認できなかった点は、確認できなかったと書いています。

経営管理ビザの「500万円」はどこに書かれていたか:上陸基準省令の経営・管理の項

経営管理ビザ500万円の根拠になっていた条文の位置
経営管理ビザ500万円の根拠になっていた条文の位置

500万円という数字は、通達や窓口の慣行ではなく、法令に書かれた基準でした。置かれていたのは「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」、いわゆる上陸基準省令の、経営・管理の項です。e-Gov法令検索で確認できる平成28年7月22日時点の版には、次のように書かれています。

二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。 イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。 ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。 ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。出典:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成28年7月22日時点の版)」

読み取れるのは、500万円が「事業の規模」を測る3つの物差しの1つだったことです。2人以上の常勤職員、500万円以上の資本金等、そのどちらかに準ずる規模。いずれか1つを満たせばよい形でした。外国人の会社設立で「500万円あれば経営管理ビザが取れる」と言われていたのは、このロの部分を指しています。

なお、この条文は会社法の資本金の下限とは別のものです。会社法には最低資本金の定めがなく、日本で会社設立をするだけなら資本金1円でもできます。500万円は、その会社で外国人が経営・管理の在留資格を得るための基準でした。

このセクションの根拠:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成28年7月22日時点の版)」(https://laws.e-gov.go.jp/law/402M50000010016/20160722_428M60000010040)

経営管理ビザの500万円は誰が決めたのか:法律が委ね、法務大臣が省令で定める

経営管理ビザの基準が決まる仕組み
経営管理ビザの基準が決まる仕組み

関連キーワードの「経営管理ビザ 500万円 誰が 決めた」に答えるには、法令の段階を順に見ていきます。出入国管理及び難民認定法の第7条第1項第2号は、経営・管理などの活動をしようとする外国人の上陸の条件として、「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること」と定めています。法律そのものには金額が書かれていません。

経営・管理の基準が決まり、使われるまでの段階(入管法・上陸基準省令・出入国在留管理庁の資料をもとに作成)
経営・管理の基準が決まり、使われるまでの段階(入管法・上陸基準省令・出入国在留管理庁の資料をもとに作成)

法律から委ねられた基準を定めるのは法務省令で、法務省令を定めるのは法務大臣です。2025年の改正省令の原文にも、令和7年10月10日の日付と法務大臣の名が記されています。省令の改正は国会の議決を経ずに行われるため、外国人の会社設立に関わる基準の金額は法律の改正より短い期間で変わりえます。

そのうえで、条文だけでは決まらない数え方や審査の考え方を、出入国在留管理庁がガイドラインやQ&Aで示しています。日本で会社設立をして申請する外国人が実際に参照するのは、この省令とガイドラインの両方です。つまり、「誰が決めたか」という問いの答えは「法務大臣が定める省令」であり、その運用を示しているのが出入国在留管理庁、ということになります。

このセクションの根拠:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000319)

03500万円はいつからあったのか:投資・経営の時代のガイドラインから省令へ

経営・管理の許可基準と500万円の変遷
経営・管理の許可基準と500万円の変遷

500万円がいつから使われていたかは、2025年8月20日の出入国在留管理政策懇談会で出入国在留管理庁が示した資料「「経営・管理」の許可基準の変遷について」に整理されています。資料によると、外国人の会社設立の目安として知られた500万円は、最初から省令に書かれていたわけではありませんでした。

「経営・管理」の許可基準の変遷(出入国在留管理政策懇談会第6回会合資料をもとに作成)
「経営・管理」の許可基準の変遷(出入国在留管理政策懇談会第6回会合資料をもとに作成)

つまり、500万円は平成12年にガイドラインの目安として示され、平成26年の改正で省令の基準になった、という流れです。それより前の「投資・経営」の在留資格は、外国資本が投下された日本の事業に限って経営・管理を認めるもので、日本資本100%の会社には使えなかったと資料に注記されています。

e-Gov法令検索で遡って確認できる上陸基準省令の版は平成28年7月22日時点のものが最も古く、それ以前の条文はこの方法では確認できませんでした。平成26年の改正の条文そのものを確かめたい場合は、官報や国立国会図書館の日本法令索引で改正省令をたどる方法があります。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「出入国在留管理政策懇談会第6回会合 資料(在留管理の一層の適正化に向けた検討について)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001444852.pdf)

外国人起業の「500万円」と「2人以上の常勤職員」:どちらかでよかった旧基準

外国人起業500万円の時代の、事業の規模の満たし方
外国人起業500万円の時代の、事業の規模の満たし方

関連キーワードの「外国人起業 500万円」が指していたのは、改正前の満たし方です。出入国在留管理庁の改正概要では、改正前の雇用の欄を「なし(資本金の代替要件として2人以上の雇用要件)」と表しています。もともとの物差しは雇用で、500万円はその代わりという位置づけでした。

  • 人で満たす経営・管理をする人以外に、日本に住む2人以上の常勤職員(日本人・永住者など)を雇う。
  • お金で満たす資本金の額または出資の総額を500万円以上にする。雇用の義務はなかった。
  • 準ずる規模で満たす上の2つに準ずる規模と認められる。改正で削られた。
  • 経歴・日本語経営する人には条件なし。管理に従事する人だけに3年以上の経験などが求められた。

この形だと、制度の上では、外国人が1人で日本で会社設立をし、500万円を資本金に入れて、雇用なしで経営・管理を申請することができました。出入国在留管理庁の資料には、現状は資本金等500万円以上か2人以上の常勤職員の雇用の「いずれかを満たすこと」を要件としているという論点の書き方が残っています。

改正後は、3,000万円以上の資本金等と1人以上の常勤職員が「いずれも」必要になり、準ずる規模という逃げ道もなくなりました。500万円の時代の会社設立の進め方は、新規の申請ではそのまま使えません。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」許可基準に係る見直しについて(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448231.pdf)

500万円の根拠は公表されているか:委員の意見書にある推測と、確かめられなかったこと

経営管理ビザ500万円の根拠を探して確認できたこと、できなかったこと
経営管理ビザ500万円の根拠を探して確認できたこと、できなかったこと

外国人の会社設立で長く目安にされてきた「なぜ500万円だったのか」という根拠について、この記事を書くにあたって政府が公式に説明した資料を探しましたが、2026年10月時点で確認できませんでした。手がかりになるのは、出入国在留管理庁が公表している政策懇談会の委員の事前提出意見です。

ある委員の意見書には、「おそらく、かつて500万円としたのは、1人雇用するのに250万円で、2人雇用するなら500万円としたみたい」という記述があります。この委員は、所得水準の上昇を踏まえて600万円程度への引き上げが妥当ではないかと述べ、常勤職員の雇用を必須にすることには慎重であるべきだとしていました。

同じ資料には、別の委員による正反対の意見も載っています。資本金500万円を用意すれば比較的安易に取得できる在留資格になっているとして、3,000万円から5,000万円への引き上げと、常勤職員の雇用の義務づけを求めるものです。韓国やニュージーランドなどと比べて低いという指摘もありました。懇談会は法務大臣の私的懇談会で、意見の幅はかなり広かったことがわかります。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「出入国在留管理政策懇談会 委員事前提出意見(在留管理の一層の適正化に向けた検討について)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001446333.pdf)

SECTION 063,000万円への改正は誰がどう決めたか:見直しの指示から公布まで

経営管理ビザの改正が決まるまでの手続き
経営管理ビザの改正が決まるまでの手続き

2025年9月12日の閣議後記者会見で、法務大臣は、同年5月に自ら見直しを指示したと述べています。理由として挙げたのは、経営・管理の本来の趣旨からみて不適切な利用等があるという指摘があること、諸外国の状況と比べてどうかという観点でした。会見の時点では、資本金の額を500万円から3,000万円に引き上げる等の内容でパブリックコメントを実施中で、提出された意見等を踏まえて最終決定するとしていました。

  1. 見直しの指示(2025年5月)法務大臣が許可基準の見直しを指示。
  2. 政策懇談会(8月20日)法務大臣の私的懇談会である出入国在留管理政策懇談会で、有識者の意見を聞く。
  3. パブリックコメント(8月26日〜9月24日)30日間で合計702件の意見。経営・管理で在留する人からの意見も含まれていたと答弁されています。
  4. 改正省令の公布(10月10日)法務省令第五十号として法務大臣が定める。パブリックコメントの案になかった日本語能力の要件が加わった。
  5. 施行(10月16日)改正後の基準が新しい申請に当てはまり始める。

手続きの日付とパブリックコメントの件数は、2026年5月8日の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁によるものです。同じ答弁では、3,000万円という水準について、国税庁の会社標本調査(令和5年度分)で資本金階級別に欠損法人より利益法人が多くなるのが2,000万円超5,000万円以下の階級であることや、諸外国の同様の制度の要件を参考にしたと説明されています。

外国人の会社設立の計画を左右するこの2つの数字のうち、500万円は平成12年のガイドラインと平成26年の省令改正で、3,000万円は令和7年の省令改正で決まりました。どちらも、法務大臣が定める省令という同じ仕組みの中での決定です。

このセクションの根拠:法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要(令和7年9月12日)」(https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00647.html)

500万円で考えていた外国人の会社設立は、いま通るのか

500万円の計画が改正後にどう扱われるか
500万円の計画が改正後にどう扱われるか

これから日本で会社設立をして経営・管理を新しく申請する外国人の場合、500万円の資本金では基準に届きません。2025年10月16日以降に受け付けられる申請には、原則として改正後の基準が当てはまるからです。個人事業主の場合も、事業所の確保や職員の給与1年分、設備投資など、事業のために投下されている総額で3,000万円以上を見るとQ&Aに書かれています。

すでに500万円の基準で許可を受けて在留している人は事情が違います。施行日から3年を経過する令和10年10月16日までの更新では、新しい基準を満たさないことのみをもって不許可にはならないとされています。その後の更新でも、経営状況が良好で、法人税等の納付義務を適切に果たし、次の更新までに新基準を満たす見込みがあれば、総合的に考慮するとされています。

500万円で日本で会社設立をして経営してきた外国人は、経過措置の間に、増資、採用、日本語能力の示し方を順に整えていくことになります。日付ごとの当てはまり方は、改正がいつから当てはまるかを扱った記事で整理しています。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)

500万円しか用意できないときに考えること

外国人起業500万円の計画を見直すときの考え方
外国人起業500万円の計画を見直すときの考え方

手元の資金が500万円前後という外国人が、改正後に日本で会社設立をして経営する道を考えるとき、検討の出発点は次のようになります。どれも基準を下げるものではなく、自分の立場と計画の組み立てを見直すための観点です。

  • いまの在留資格を確かめる:永住者・日本人の配偶者等・定住者など、活動に制限のない在留資格なら、会社を経営するために経営・管理を取る必要がなく、3,000万円の基準は関係しません
  • 出資の組み方を考える:会社の資本金の額で見るため、共同出資で3,000万円にする考え方もあります。ただし申請書には申請人本人の出資額を書く欄があり、出どころの説明も求められます
  • 共同経営の条件を確かめる:複数の外国人がそれぞれ経営・管理を得るには、事業の規模からみた合理的な理由、業務の分担、報酬の支払いが必要とされています
  • 準備の期間を確保する:スタートアップビザなどの起業準備の在留資格で準備期間をつくる方法もありますが、経営・管理への変更時には原則として改正後の基準が当てはまります

会社設立のときに借入金で資本金を用意する、事業が育つのを待って段階的に増資する、といった資金面の考え方は、資本金3,000万円の集め方の記事で扱っています。どの方法でも、資金の出どころを書類で説明できるようにしておくことが前提です。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「外国人起業家(外国人起業活動促進事業)」(https://www.moj.go.jp/isa/03_00097.html)

09まとめ:500万円も3,000万円も、法務大臣が定める省令の数字

経営管理ビザの500万円と3,000万円が決まった仕組みのまとめ
経営管理ビザの500万円と3,000万円が決まった仕組みのまとめ

経営管理ビザの500万円は、入管法が基準づくりを法務省令に委ね、法務大臣が上陸基準省令で定めていた数字です。出入国在留管理庁の資料によれば、平成12年のガイドラインで2人以上の常勤職員の代わりの目安として示され、平成26年の改正で省令の基準になりました。500万円という額の根拠を政府が説明した資料は、2026年10月時点で確認できませんでした。

基準の改正を追うときに確かめる資料
基準の改正を追うときに確かめる資料

3,000万円への改正も同じ仕組みで行われました。見直しの指示、政策懇談会、パブリックコメント、令和7年10月10日の公布、10月16日の施行という手続きを経ています。省令で決まる基準である以上、これからも省令の改正で変わる可能性があります。

外国人が日本で会社設立をして経営・管理を申請するときは、古い記事の数字ではなく、そのときの省令とガイドラインを確かめてください。自分の場合にどう当てはまるかは、入管手続きに詳しい行政書士や地方出入国在留管理局に相談するのが確実です。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の一部を改正する省令(令和7年法務省令第50号)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448236.pdf)

数字の由来を知ることは、遠回りではない

「500万円は誰が決めたのか」という問いの裏には、「なぜ急にこんなに変わったのか」という戸惑いがあるのだと思います。仕組みを知っても金額は変わりませんが、次に何が起こりうるのか、どこを見ておけばよいのかは分かるようになります。

500万円の時代に日本で会社設立をした方は、経過措置の期間をどう使うかを考える段階にいます。これから会社設立をする方は、改正後の基準から逆算して計画を立てる段階にいます。どちらの方にとっても、出発点は手元の数字と最新の資料を並べてみることです。

迷ったら、その資料を持って専門家の扉をたたいてください。仕組みが分かっていれば、相談で聞くべきことも具体的になります。

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