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資本金3000万円はなぜ必要なのか|外国人の会社設立を国会答弁と入管庁の資料から読む

資本金3000万円はなぜ必要なのか|外国人の会社設立を国会答弁と入管庁の資料から読む

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「なぜ500万円が3000万円になったのか」と納得できないまま、日本で会社設立の準備を続けている外国人の方がいると思います。説明を求められる側の行政書士・税理士の方や、外国人の経営者と取引をしている日本企業の担当者にも、答えの材料として使っていただけるように書きました。

関連する質問には「資本金3000万円の外国人はなぜ必要なのか?」「経営管理ビザ 3000万円 なぜ?」が出てきます。ネット上には推測をまじえた説明も多いため、この記事では出入国在留管理庁の資料と、2026年4月から5月にかけての国会で政府参考人が答えた内容、国税庁の統計に書かれていることだけを拾って並べます。

制度の評価や賛否には立ち入りません。2026年10月時点で確かめられた事実をもとに、外国人の会社設立の計画にどう生かすかを考える材料としてお読みください。

資本金3000万円の理由はどこに書かれているか:資料・答弁・統計を分けて読む

資本金3000万円の理由を確かめるときに、材料ごとに分けて読む
資本金3000万円の理由を確かめるときに、材料ごとに分けて読む

出入国在留管理庁が公開している改正の資料とQ&Aは、資本金等が3,000万円以上になったこと、その数え方、これから会社設立をする人と在留中の人それぞれへの当てはめ方などを説明しています。一方で、なぜ3,000万円という額にしたのかという理由は、資料の本文にはほとんど書かれていません。

理由がまとまって語られたのは、施行から半年ほどたった2026年4月から5月の国会です。衆議院と参議院の法務委員会で、議員の質問に出入国在留管理庁の次長が政府参考人として答えています。国会会議録は国立国会図書館の検索システムで誰でも読める一次情報です。

資本金3000万円の「なぜ」を確かめるための材料(2026年10月時点)
資本金3000万円の「なぜ」を確かめるための材料(2026年10月時点)

法律の側の根拠も確認しておきます。入管法第7条第1項第2号は、経営・管理などの基準を「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める」としています。2026年4月14日の参議院法務委員会で政府参考人は、この規定を挙げたうえで、在留資格が経済社会の活性化に資するという本来の目的に沿って運用されるよう、省令で一定の資本金額を設けることは妥当だと答えています。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)

政府が挙げた理由1:経営・管理は「投資・雇用・イノベーション」を期待する在留資格

資本金3000万円の説明は、経営・管理という在留資格の目的の確認から始まっています
資本金3000万円の説明は、経営・管理という在留資格の目的の確認から始まっています

2026年5月8日の衆議院法務委員会で、政府参考人は3,000万円の趣旨を問われ、まず在留資格の目的を述べています。経営・管理は、外国人の企業経営活動を通じて、たとえば日本への投資、雇用の創出、イノベーションの促進など、日本の経済社会の活性化に貢献することが期待されている在留資格だ、という説明です。

許可基準の一つである資本金等の額につきましては、事業の安定性や日本の経済に資する事業の規模という観点から(中略)資本金等の額を三千万以上とすることが適当と判断したものでございます。出典:国会会議録検索システム(国立国会図書館)「衆議院法務委員会(2026年5月8日)出入国在留管理庁次長の答弁(資本金等3,000万円の趣旨)」

この答弁から読み取れるのは、3,000万円が「事業の安定性」と「日本経済に資する事業の規模」という2つの物差しで決められた、ということです。外国人が日本で会社設立をする際の資本金を、在留資格の側では会社の安定と規模の目安として扱っている、と整理できます。

改正で常勤職員1人以上の雇用が義務になったことも、雇用の創出という目的と同じ方向を向いています。資本金だけを切り離して考えるより、雇用や事業所の条件と一組で見たほうが、基準の組み立ても、それに合わせた会社設立の計画も理解しやすくなります。

このセクションの根拠:国会会議録検索システム(国立国会図書館)「衆議院法務委員会(2026年5月8日)出入国在留管理庁次長の答弁(資本金等3,000万円の趣旨)」(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105206X00820260508/84)

SECTION 03政府が挙げた理由2:国税庁の会社標本調査と「2,000万円超5,000万円以下」

資本金3000万円の根拠として示された統計を、国税庁の公表資料で確かめます
資本金3000万円の根拠として示された統計を、国税庁の公表資料で確かめます

同じ答弁で、政府参考人は具体的な根拠として国税庁の会社標本調査(令和5年度分)を挙げました。法人の資本金階級別に見ると、欠損法人よりも利益計上法人が多くなるのは「2,000万円超5,000万円以下」の階級であること、これを参考にしたという説明です。3,000万円は、この階級の中に入る額です。これから会社設立をする外国人は、資本金をこの階級に置くよう求められている、と言い換えることもできます。

会社標本調査では、所得金額が正の法人を利益計上法人、負または0の法人を欠損法人と呼んでいます。令和5年度分の調査結果では、対象となった法人295万6,717社のうち、欠損法人の割合は61.0%でした。全体としては欠損法人のほうが多いなかで、資本金の階級が上がると利益計上法人が上回るところがある、というのが答弁の趣旨です。

資本金階級別の法人数の構成割合(国税庁「会社標本調査結果 令和5年度分」第2表より。令和5年度分の全法人)
資本金階級別の法人数の構成割合(国税庁「会社標本調査結果 令和5年度分」第2表より。令和5年度分の全法人)

同じ調査で、資本金1,000万円以下の法人は全体の87.3%を占めています。日本の会社の大半は資本金1,000万円以下で動いているということで、3,000万円という基準が、日本の会社全体から見ても小さくない額であることが分かります。外国人が日本で会社設立をするときに「日本人の会社より高い基準を求められている」と感じるのは、この数字からも無理のないことです。

このセクションの根拠:国税庁「会社標本調査結果 令和5年度分」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2023/kaisya.htm)

政府が挙げた理由3:諸外国の制度の要件を参考にした

資本金3000万円の検討では、諸外国の同様の制度も参考にされたと説明されています
資本金3000万円の検討では、諸外国の同様の制度も参考にされたと説明されています

5月8日の衆議院、5月14日の参議院のいずれの答弁でも、政府参考人は統計とあわせて「諸外国の同様の制度における要件等を参考として検討した」と述べています。ただし、どの国のどの制度の、いくらという要件を参考にしたのかは、これらの答弁では具体的に示されていません。

改正前の500万円が決まった経緯については、2026年4月21日の参議院法務委員会で、平成12年に在留資格「投資・経営」のガイドラインを作った際、常勤職員2名を雇う場合に要する資金や、当時の諸外国の制度の要件などを参考にしたと説明されています。500万円のときも3,000万円のときも、外国の制度との比較が材料の一つになっていたわけです。

外国人の方が本国や第三国の制度と比べて日本で会社設立をするかどうかを考えるときも、資本金の額だけでなく、雇用・日本語・経歴・事業所といった条件を合わせて比べるのが筋です。

このセクションの根拠:国会会議録検索システム(国立国会図書館)「参議院法務委員会(2026年5月14日)出入国在留管理庁次長の答弁(見直しの理由と実地調査)」(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X00820260514/123)

ペーパーカンパニー対策という側面:実地調査で見つかっていたこと

資本金3000万円の背景にある、事業実態の確認の問題
資本金3000万円の背景にある、事業実態の確認の問題

5月14日の参議院法務委員会で、政府参考人は統計と諸外国の制度を挙げたあと、「もちろんペーパーカンパニー対策もございます」と付け加え、法の趣旨を貫くという点があったと述べています。実体のない会社をつくって在留資格だけを得る、という使われ方を防ぐことも、改正の狙いに含まれていたということです。

同じ答弁では、事業所の実態に疑いのある申請には入管職員が事業所に出向く実地調査をしていること、その一例として、東京出入国在留管理局が許可基準の改正前の令和5年9月から令和6年12月末までに事業実態に疑義があるとして実地調査をした約300件のうち、約9割を事業実態に問題があるなどの理由で不許可にしたことが紹介されました。

2026年5月14日 参議院法務委員会での政府参考人の答弁(国会会議録より要約)
2026年5月14日 参議院法務委員会での政府参考人の答弁(国会会議録より要約)

一方で政府参考人は、ペーパーカンパニーなどの不正行為の件数は統計として把握していないため、具体的な件数は答えられないとも述べています。資本金を上げれば不正がどれだけ減るのか、という形の数字は示されていません。外国人の会社設立に関する報道で「不正が多いから3,000万円になった」と言い切る説明を見かけたら、この点を思い出してください。

改正後の資料に、業務の大半を外部に委託して申請人が日常的に経営していない場合は経営・管理の活動と認めない、自宅を事業所と兼ねることは原則として認めない、といった扱いが明記されたのも、実態の確認という同じ流れの中にあります。

このセクションの根拠:国会会議録検索システム(国立国会図書館)「参議院法務委員会(2026年5月14日)出入国在留管理庁次長の答弁(見直しの理由と実地調査)」(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X00820260514/123)

06改正前の実態:在留者の資本金は500万円付近に集中していた

資本金3000万円への引き上げを検討する際に入管庁が調べた、改正前の在留者の実態
資本金3000万円への引き上げを検討する際に入管庁が調べた、改正前の在留者の実態

入管庁は基準の見直しを検討する中で、令和6年末時点で経営・管理により在留していた4万1,615人を対象に調査をしています。2026年4月21日の参議院法務委員会で、政府参考人はこの調査について、対象者の直近の申請書に書かれた内容から把握できる範囲で行ったもので、詳細な数値を答えるのは難しいと前置きしたうえで、次のように述べました。

  • 業種は、卸売業、小売業、飲食サービス業などが多数を占めていた
  • 資本金の額等は、当時の基準である500万円付近の在留者が多数を占め、多くは500万円から600万円くらいの水準だった
  • 多数の人が常勤職員を雇用していない状況だった

5月8日の衆議院法務委員会では、把握できたもののうち資本金の額が3,000万円以上だったのは約4%だった、とも説明されています。つまり、改正前に会社設立などをして経営・管理で在留していた人のほとんどは、新しい基準に届いていなかったことになります。

この実態があったからこそ、すでに在留している人には改正後の基準をすぐには当てはめず、令和10年10月16日までの経過措置が設けられた、と政府参考人は説明しています。パブリックコメントでも、在留中の人の立場に十分配慮すべきだという意見があったとされています。

このセクションの根拠:国会会議録検索システム(国立国会図書館)「参議院法務委員会(2026年4月21日)出入国在留管理庁次長の答弁(改正前の在留者の調査)」(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X00620260421/112)

資本金3000万円が外国人の会社設立に与えた影響と、既存の事業者への配慮

資本金3000万円の基準が施行されたあとの変化として、国会で示された数字
資本金3000万円の基準が施行されたあとの変化として、国会で示された数字

2026年5月28日の参議院法務委員会で、政府参考人は改正の効果を数字で示しました。経営・管理と、高度専門職の一部を合わせた在留資格認定証明書交付申請の件数が、2025年10月16日の許可基準の改正の前後5か月半で約96%減ったという説明です。入管庁としては、経済社会の活性化に資する人の在留を認めるという本来の目的に沿った運用になりつつある、と受け止めているとされています。海外から日本で会社設立をして経営・管理を申請するという流れが、施行の直後に大きく細ったことを示す数字です。

すでに日本で会社設立をして経営を続けている外国人への扱いについては、6月18日の参議院法務委員会で、事業実態のある既存事業者を一律の資本金基準で排除しないという点は入管庁としてもそのように考えている、と答弁されています。施行から3年を過ぎた後の更新でも、経営状況や法人税等の納付状況を総合的に考慮するという方針が繰り返し述べられました。

同じ5月28日の答弁では、個人事業主も3,000万円の資本金を準備しなければならない、という誤解が生じていることにも触れています。個人事業主の3,000万円は資本金ではなく、事業所の確保や1年分の職員の給与、設備投資経費など、事業のために投下されている総額で評価するという説明です。

このセクションの根拠:国会会議録検索システム(国立国会図書館)「参議院法務委員会(2026年5月28日)出入国在留管理庁次長の答弁(改正の効果と個人事業主の扱い)」(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X01120260528/119)

まとめ:資本金3000万円の理由を知ったうえで、会社設立をどう組み立てるか

資本金3000万円の理由を、外国人の会社設立の計画に生かす
資本金3000万円の理由を、外国人の会社設立の計画に生かす

国会での政府答弁を並べると、資本金3,000万円の理由は次のように整理できます。経営・管理は投資・雇用・イノベーションを通じた経済社会の活性化を期待する在留資格であること。事業の安定性と日本経済に資する規模の目安として、国税庁の統計で利益計上法人が欠損法人を上回る資本金階級を参考にしたこと。諸外国の制度を参考にしたこと。そしてペーパーカンパニー対策の側面もあったことです。

  1. 3,000万円の理由として政府が挙げたのは、在留資格の目的、国税庁の統計、諸外国の制度の3つと、実態のない会社への対策
  2. 参考にした外国の制度の国名と金額は、答弁では示されていない
  3. 改正前の在留者は資本金500万〜600万円くらいに集中し、3,000万円以上は約4%だった
  4. 改正の前後5か月半で、在留資格認定証明書交付申請は約96%減った
  5. 既存の事業者は一律に排除しない方針で、経過措置と総合判断が用意されている

外国人が日本で会社設立をするとき、3,000万円は単に用意すべき金額ではなく、安定して続く規模の事業かどうかを示すための目安として見られています。資本金をそろえるのと同じくらい、雇用や事業所、事業計画書で事業の中身を示す準備に力を入れてください。具体的な当てはまり方は、地方出入国在留管理局や行政書士に確認するのが確実です。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/businessmanager.html)

「なぜ」に納得できないままの方へ

基準の理由を知っても、会社設立に求められる3,000万円という額の重さが変わるわけではありません。それでも、政府がどんな物差しで決めたのかが分かれば、審査で何を示せばよいかは見えやすくなります。

日本で会社設立をして経営を続けたい外国人の方は、資本金の額と同じくらい、事業の安定と規模を伝える材料を集めてください。迷ったときは、答弁や資料の原文にあたり、専門家と一緒に読んでいくことをおすすめします。

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