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「外国人起業家の資金調達支援事業」は返済不要の補助金か|会社設立に使えた東京都の1500万円

「外国人起業家の資金調達支援事業」は返済不要の補助金か|会社設立に使えた東京都の1500万円

1500万円の話を聞いて調べ始めた方へ

「東京都なら外国人の起業に1500万円が出るらしい」「返済不要だと聞いた」という話をきっかけに、この制度を調べている外国人の方に向けた記事です。東京で会社設立を考えている人、すでに会社をつくって資金繰りに悩んでいる経営者、そして相談を受けた行政書士・税理士・金融機関の担当者も想定しています。

カテゴリーの記事では補助金・助成金・融資の全体を扱いました。ここではその中から、検索で特に多い「外国人起業家の資金調達支援事業」だけを取り出し、東京都産業労働局のページ、Invest Tokyoのページ、都が公開しているQ&Aの3つを突き合わせて、何が書かれていて何が書かれていないのかを分けて示します。

内容は2026年10月時点で各ページを確認したものです。この事業はすでに終わっているため、これから日本で会社設立をする方には、後半で紹介するいま申し込める制度のほうが役に立つはずです。

外国人起業家の資金調達支援事業とは:補助金ではなく「融資+経営支援」の組み合わせ

外国人起業家の資金調達支援事業は、事業計画の認定と金融機関の融資を組み合わせた仕組み
外国人起業家の資金調達支援事業は、事業計画の認定と金融機関の融資を組み合わせた仕組み

関連キーワードの「東京都 外国人起業家 の資金調達支援 事業」で出てくるこの事業は、東京都産業労働局のページによると、外国人が東京で起業しやすい環境を整えるために、金融機関の融資と融資前後の経営支援を組み合わせたものでした。都がお金を配る制度ではなく、都が事業計画を認定し、民間の金融機関が審査して貸す、という分担です。

外国人起業家の資金調達支援事業の流れ(東京都産業労働局のページによる。融資は2024年3月で終了)
外国人起業家の資金調達支援事業の流れ(東京都産業労働局のページによる。融資は2024年3月で終了)

入口になったビジネスコンシェルジュ東京は、会社設立の前の相談から受け付けている、東京で起業や事業展開を考える外国企業・外国人起業家のための都の総合窓口です。Invest Tokyoのページでは、ビジネスと生活の両面を扱い、日英バイリンガルのスタッフが対面のほか電話・メールでも相談を受けると案内されています。この事業では、中小企業診断士が認定の申請を受け付け、事業計画の作成も支援していました。

取扱金融機関は、株式会社きらぼし銀行と第一勧業信用組合の2つでした。日本で会社設立をした外国人の経営者が、都の認定を持ってこの2行のどちらかに融資を申し込む、という形になります。

このセクションの根拠:東京都 Invest Tokyo「ビジネスコンシェルジュ東京」(https://www.investtokyo.metro.tokyo.lg.jp/jp/oursupports/bdc-tokyo/)

「外国人起業家の資金調達支援事業」は返済不要か:融資条件を一つずつ読む

関連キーワード「外国人起業家の資金調達支援事業 返済不要」への答え
関連キーワード「外国人起業家の資金調達支援事業 返済不要」への答え

「返済不要」という検索が多いのは、どこかでこの事業が補助金として紹介されたからだと考えられます。都のページに並んでいる条件を読めば、借りて返す制度だと分かります。

「返済不要」という思い込みと、都のページに書かれていた条件(東京都産業労働局のページ・Q&Aによる)
「返済不要」という思い込みと、都のページに書かれていた条件(東京都産業労働局のページ・Q&Aによる)

担保は不要とされていましたが、都のQ&Aは、担保を不要としているのは日本人の起業を支援する融資でも同じだと説明しています。また、事業計画の認定を受けても、取扱金融機関が面談や現地確認で条件を厳しく確かめたうえで審査するため、融資を受けられない場合がある、とも書かれていました。

会社設立の相談の場でもよく出てくる、もう一つの誤解のもとは「補助金」という言葉です。Invest Tokyoのページには、この事業を統括支援機関が東京都の補助金を活用して実施していた、と書かれています。補助金が出ていたのは事業を運営する側で、借りる外国人起業家ではありません。会社設立の資金計画では、借入として返済の予定まで書いておく必要があったお金です。

このセクションの根拠:東京都産業労働局「外国人起業家の資金調達支援事業」(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/kinyu/yuushi/gaikoku)

03対象になった外国人起業家:在留資格・本店・創業の時期

外国人起業家の資金調達支援事業の対象者の条件(都のQ&Aによる)
外国人起業家の資金調達支援事業の対象者の条件(都のQ&Aによる)

都のQ&Aでは、支援対象者の主な条件として次の5つが挙げられていました。日本で会社設立をした後でなければ申し込めない制度だったことが分かります。

支援対象者の主な条件(東京都「外国人起業家の資金調達支援事業」Q&Aによる)
支援対象者の主な条件(東京都「外国人起業家の資金調達支援事業」Q&Aによる)

「事業活動の制限を受けていない在留資格」について、Q&Aは具体的に、永住者・特別永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、経営・管理、高度専門職の一部を挙げています。留学や技術・人文知識・国際業務のまま会社設立をした外国人は、この条件に当たりませんでした。

住んでいる場所については、東京で会社設立をした外国人起業家が東京都に住んでいなくても、本店または主たる事務所が都内にあればよいとされていました。個人事業主は対象外で、法人の代表者に限られていた点も、ほかの創業融資と違うところです。

このセクションの根拠:東京都 Invest Tokyo「「外国人起業家の資金調達支援事業」Q&A」(https://www.investtokyo.metro.tokyo.lg.jp/jp/oursupports/bdc-tokyo/data/QA.pdf)

東京都の外国人起業支援「1500万円」はいつまでか:始まりから終わりまでの日付

関連キーワード「東京都 外国人起業 支援 1500万円 いつまで」への答え
関連キーワード「東京都 外国人起業 支援 1500万円 いつまで」への答え

「いつまで」への答えは、もう終わっている、です。Invest Tokyoのページと東京都産業労働局のページにある日付を並べると、次のようになります。

外国人起業家の資金調達支援事業に関わる日付(Invest Tokyo・東京都産業労働局のページによる)
外国人起業家の資金調達支援事業に関わる日付(Invest Tokyo・東京都産業労働局のページによる)

会社設立の資金として実際にどれだけ使われたかについて、東京都産業労働局のページには、融資実績が7件、総額6,050万円と掲載されています。単純に割ると1件あたり平均で約864万円で、限度額の1,500万円を全員が借りたわけではないことも読み取れます。

2026年10月時点で、この事業の再開や後継の融資制度の案内は見当たりませんでした。いま日本で会社設立を準備している外国人の方が、この1500万円を資金計画に入れることはできません。ブログや動画で紹介されている情報がこの制度を指している場合は、投稿日が2024年3月より前かどうかを確かめてください。

このセクションの根拠:東京都 Invest Tokyo「外国人起業家のための資金調達サポート」(https://www.investtokyo.metro.tokyo.lg.jp/jp/oursupports/bdc-tokyo/funding-support.html)

東京都の外国人起業支援はなぜ始まったのか:都が示していた理由

関連キーワード「東京都 外国人起業 支援 なぜ」に、都のQ&Aの回答から答える
関連キーワード「東京都 外国人起業 支援 なぜ」に、都のQ&Aの回答から答える

「なぜ東京都が外国人起業家の支援を行うのですか」という問いには、都自身がQ&Aで答えています。要約すると、新しい産業が次々に生まれる「世界一のスタートアップ都市・東京」を実現するため、外国人を含めた様々な主体による起業を目指しており、外国人が東京で起業しやすい環境を整えることで、東京の経済を支える多様な主体を生み出し、持続的な成長につなげる、という説明です。

外国人が東京で起業しやすい環境を整備することで、東京の経済を支える多様な主体を創出し、東京の持続的な成長を生み出す出典:東京都 Invest Tokyo「「外国人起業家の資金調達支援事業」Q&A」

事業計画の認定の条件にも、東京の産業の国際競争力の強化や国際的な経済活動の拠点の形成に役立つ事業、または都民の生活の向上に役立つ事業であることが挙げられていました。外国人だから優遇するというより、東京に事業を呼び込む政策の一つという位置づけです。

この方向は融資の終了後も続いています。東京都は2025年2月26日から、東京開業ワンストップセンターで会社設立の登記と定款認証の手続を英語で行えるようにし、同年3月3日からは最長2年の起業準備ができる新しいスタートアップビザの受付を始めました。お金を貸す支援から、日本で会社設立をする手続そのものを進めやすくする支援へ、重心が移っていると見ることができます。

このセクションの根拠:東京都「東京開業ワンストップセンター 英語で全手続完了に(報道発表 2025年2月28日)」(https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/02/2025022806)

SECTION 06終了後に外国人の会社設立で検討できる資金調達:東京都の創業融資と公庫

外国人起業家の資金調達支援事業が終わったあとに検討できる融資
外国人起業家の資金調達支援事業が終わったあとに検討できる融資

東京都産業労働局のページは、外国人起業家の資金調達支援事業の案内の最後に、関連する制度として「女性・若者・シニア創業サポート2.0」と日本政策金融公庫の新規開業向けの融資を挙げています。どちらも国籍を条件にしていない創業向けの融資です。

東京都の創業向け融資と公庫の融資(各機関のページによる。2026年10月時点)
制度 対象の目安 限度額・利率など
女性・若者・シニア創業サポート2.0 都内の女性、39歳以下、55歳以上で、創業の計画がある方か創業後5年未満の方(女性は7年未満) 1,500万円以内(女性は2,000万円以内)、固定金利1.25%以内、返済10年以内(据置3年以内)、無担保
東京都中小企業制度融資 都内の中小企業。東京信用保証協会の保証が必要 メニューごとに異なる。都・保証協会・金融機関の三者が協調
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 新たに事業を始める方、事業開始後おおむね7年以内の方 限度額7,200万円。特定外国人起業家は特別利率Aの対象

女性・若者・シニア創業サポート2.0は、都内の信用金庫・信用組合が窓口で、地域創業アドバイザーが融資前の事業計画と融資後の経営を無料で支えます。都のページには外国人や在留資格についての記載はないため、外国人の経営者が使えるかどうかは、統括団体か取扱金融機関に直接確かめてください。東京都中小企業制度融資は、都・東京信用保証協会・指定金融機関の三者が協調する仕組みで、保証の可否は経営者の人物、資金の使い道、返済能力などを総合的に見て決まります。

どの融資も、日本で会社設立を終えて法人口座を持ち、事業計画を説明できることが前提になります。経営・管理の在留資格で求められる資本金3,000万円の払込みとは別の話なので、借入を資本金に回すつもりなら、その説明の仕方も行政書士と相談しておくと安心です。

このセクションの根拠:東京都産業労働局「女性・若者・シニア創業サポート事業2.0」(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/kinyu/yuushi/support/)

1500万円の融資についてよくある質問

外国人起業家の資金調達支援事業のよくある質問
外国人起業家の資金調達支援事業のよくある質問

この事業は終了していますが、会社設立の相談の場ではいまもよく話題に出ます。よくある質問に、確認できた範囲で答えます。

外国人なら、日本人より有利な条件で借りられたのですか。

固定金利2.7%以内という条件は、都のページで確認できる現在の女性・若者・シニア創業サポート2.0(固定金利1.25%以内)より高い水準です。担保を不要とする扱いも日本人向けの融資と同じだと都のQ&Aは説明しています。条件が一方的に有利だったとは言えません。

東京以外にも、外国人起業家だけを対象にした融資はありますか。

2026年10月時点で、外国人だけを対象にした返済不要の制度や融資は、確認できた範囲では見当たりませんでした。日本政策金融公庫では、特定外国人起業家で新たに事業を始める方が特別利率Aの対象とされています。

スタートアップビザで準備中でも申し込めましたか。

都のQ&Aが挙げた在留資格に、起業準備のための特定活動は含まれていませんでした。法人の代表者であることも条件だったため、日本で会社設立を終え、経営・管理などに変わったあとに申し込む流れでした。

再開の予定はありますか。

都のページには2024年3月をもって終了したとだけあり、再開の予定は書かれていません。気になる方はビジネスコンシェルジュ東京に問い合わせてください。

この項目の根拠:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)

まとめ:1500万円は「終わった融資」。いまの資金調達は別の制度で組み立てる

外国人起業家の資金調達支援事業についてのまとめ
外国人起業家の資金調達支援事業についてのまとめ

外国人起業家の資金調達支援事業について、都の3つのページから読み取れたことを並べ直します。

  1. 補助金ではなく、金融機関の融資と経営支援を組み合わせた事業で、借りたお金は返す
  2. 限度額1,500万円以内、返済10年以内、固定金利2.7%以内、無担保、保証人は原則として法人代表者
  3. 対象は都内に本店を置く法人の代表者で、創業5年未満、事業活動に制限のない在留資格を持つ外国人
  4. 2022年6月28日に始まり、融資は2024年3月で終了。実績は7件・6,050万円
  5. 都は、外国人を含む多様な主体による起業で東京の成長を生み出すことを理由に挙げていた
  6. いま日本で会社設立をするなら、東京都の創業融資や公庫の融資を、日本人と同じ条件で検討する

金額・条件・日付は2026年10月時点で確認したものです。融資の相談は取扱金融機関や公庫の窓口へ、資本金や在留資格に関わる部分は入管手続きに詳しい行政書士へ、会社設立後の資金繰りは税理士へ確かめながら進めてください。

このセクションの根拠:東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資」(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/kinyu/yuushi/yuushi/)

この制度を調べてたどり着いた方へ

1500万円という数字だけが広まり、条件と終わった日付が抜け落ちたまま伝わっている。この制度は、その典型的な例でした。元のページを開けば、融資であることも、2024年3月で終わったことも、数分で確かめられます。

これから東京で会社設立をする外国人の方は、この制度を待つより、いま申し込める創業融資の窓口に事業計画を持って相談に行くほうが早道です。ビジネスコンシェルジュ東京のように、外国人起業家の相談を英語で受ける窓口もあります。

相談を受ける側の方は、「その話はいつの、どの制度ですか」と一度聞き返してみてください。日本で起業しようとする人の計画を、古い情報から守ることにつながります。

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