法人口座の審査を通すための準備|外国人の会社設立で用意しておく資料と説明の組み立て

この記事の対象
日本で会社設立を終えて、これから法人口座を申し込む外国人の方に向けた記事です。何をどう準備すればよいのかを、具体的に整理しました。
審査の基準は公表されていません。ただ、金融機関が確認しなければならない事項は法律で定められており、そこから逆算すると、用意すべき資料が見えてきます。
以下は一般的な準備の整理です。金融機関によって求められるものが違うため、申込みの前に窓口へご確認ください。
SECTION 01確認される事項から逆算する

金融機関には、犯罪収益移転防止法にもとづく取引時確認が義務づけられています。預貯金口座の開設は、この確認が必要な取引として定められています。
確認されるのは、本人特定事項だけではありません。取引を行う目的、事業の内容、そして法人の場合は実質的支配者に関する事項も確認の対象とされています。
また、法人の代表者が取引を行う権限を有していることを、書面で確認する必要があるとされています。会社設立の後に登記事項証明書や印鑑証明書が求められるのは、この確認のためです。
つまり、用意すべき資料は「会社が実在すること」「代表者に権限があること」「何のために口座を使うのか」「実際にどういう事業をするのか」を示すものになります。
日本で会社設立をした外国人が準備するときは、この4つを軸に資料を集めると整理しやすくなります。書類を増やすことより、この4点を説明できることが大切です。
日本で会社設立をした外国人が口座開設で苦労するのは、書類が足りないからというより、事業の姿を短時間で説明しづらいからです。だからこそ、確認事項から逆算して資料をそろえておくことに意味があります。
準備を始める時期は、会社設立の登記を申請したあたりが目安です。登記の完了を待つ間に、事務所の写真を撮り、事業計画を整え、取引先の資料をまとめておくと、完了後すぐに動けます。
このセクションの根拠:警察庁「犯罪収益移転防止法の解説(JAFIC)」(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/law_com.htm)
準備1:事務所が実在することを示す

事務所が実際にあり、そこで事業ができる状態であることを示します。賃貸借契約書と、事務所の写真が基本の材料です。
契約書は、会社名義で、事業用として結ばれているものが望ましいとされます。個人名義のままだと、会社の事務所であることの説明が必要になります。
写真は、外観、入口の看板、室内の様子、机や什器の状態を撮ります。特別な撮り方は要りませんが、そこで事業ができる状態であることが分かるようにしてください。契約したばかりで何も置いていない状態だと、説明が難しくなります。
日本で会社設立をした外国人が在留資格「経営・管理」を目指している場合、入管に出すために用意した資料がそのまま使えます。両方で同じ材料を使うことになります。
バーチャルオフィスや、住居用の物件を事務所にしている場合、確認が丁寧になることがあります。実際にそこで業務を行っていることを説明できるようにしておいてください。
事務所の契約が個人名義のままの場合、会社名義に変更できるかを貸主に相談してみてください。外国人が日本で会社設立をするとき、登記が終わる前に個人名義で契約せざるを得ないことがあります。その場合も、会社が使っていることを説明できる資料を用意してください。
このセクションの根拠:経営管理ビザ・日本進出サポートセンター「外資系の新設法人はなぜ銀行口座を作りにくいのか」(https://touch.or.jp/keiei/foreign-company-bank-account-japan/)
準備2:取引の見込みを示す

設立したばかりの会社には決算の実績がありません。そのため、これから何をするのかを示す材料が必要になります。
取引先との契約書、見積書、発注書、注文書。すでにやり取りがあるなら、これらが最も強い材料になります。会社設立の前から準備してきた事業であれば、こうした資料があるはずです。
まだ取引が始まっていない場合は、事業計画書と、想定する取引先の情報を用意します。誰に、何を、いくらで売るのかを説明できるようにしてください。
ウェブサイトやパンフレットも役に立ちます。外から見て事業の内容が分かるものがあると、説明が短くて済みます。日本で会社設立をする外国人は、この準備を会社設立と並行して進めておくとよいと思います。
取引の相手が海外中心の場合、その点についても説明を求められることがあります。送金の目的や相手先について、あらかじめ整理しておいてください。
取引の見込みを示すとき、金額の根拠も一緒に説明できると説得力が増します。単価と数量、その根拠。日本で会社設立をする外国人が事業計画を作るときにも、同じ考え方が求められます。
取引先の資料を出すときは、相手の会社名や連絡先が分かるものが望ましいとされます。ただし、相手の同意なく詳細を出せない場合もあります。その場合は、業種や取引の規模だけでも説明できるようにしておいてください。
このセクションの根拠:全国銀行協会「全国銀行協会」(https://www.zenginkyo.or.jp/)
04準備3:資金の出どころを示す

資本金がどこから来たのかを説明できるようにしておいてください。会社設立のときに残した記録が、そのまま材料になります。
自己資金であれば預金の推移、借入であれば貸主との関係と条件、本国からの送金であればその記録。経路がたどれる形にしておきます。
外国人が日本で会社設立をする場合、資本金を本国から送金することが多くなります。中継銀行を経由した場合も、経路が追えるようにしておいてください。
この説明は、在留資格の申請でも求められることがあります。同じ資料を両方で使えるため、会社設立の時点で整理しておくと効率的です。
送金の記録は、会社設立が終わったあとも保管しておいてください。法人口座の開設だけでなく、在留資格の更新や税務の場面でも説明を求められることがあります。
このセクションの根拠:警察庁「犯罪収益移転防止法の解説(JAFIC)」(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/law_com.htm)
準備4:代表者について説明できるようにする

代表者については、本人確認書類のほか、在留資格と在留期間が確認されます。在留カードを持参してください。
在留期間が短い場合、その点について説明を求められることがあります。日本で会社設立をした外国人が、在留資格の変更を申請中である場合なども、状況を説明できるようにしておいてください。
日本での生活の拠点があるかも見られます。住民票や、住居の賃貸借契約書が材料になります。海外在住の外国人が代表の会社は、この点で説明が必要になります。
また、代表者がその会社の取引を行う権限を持っていることを、書面で確認する必要があるとされています。登記事項証明書に代表者として記載されていることが、その材料になります。
日本語での説明が難しい場合、通訳や、日本語のできる同席者を用意してください。会社設立を手伝った専門家に同席してもらう方法もあります。
外国人が日本で会社設立をして代表者になっている場合、在留資格が「経営・管理」であることが説明の材料になります。まだ変更申請中の段階であれば、申請中であることを示す資料を用意してください。
このセクションの根拠:警察庁「犯罪収益移転防止法の解説(JAFIC)」(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/law_com.htm)
説明の組み立て方

資料をそろえたら、説明の組み立てを考えます。窓口や面談で聞かれたときに、短く答えられるようにしておいてください。
説明の骨格は、何を、誰に、いくらで売るのか、その利益で何を賄うのか、という順番です。日本で会社設立をした外国人が事業を説明するとき、この順番だと伝わりやすくなります。
数字を入れると具体性が増します。月にどれくらいの売上を見込んでいるのか、いくらの入出金が発生するのか。申込書にも記入する欄があることが多いため、事前に整理しておいてください。
なぜ日本で事業をするのかという点も、聞かれることがあります。外国人が日本で会社設立をする理由を、自分の言葉で説明できるようにしておくとよいと思います。

説明の準備は、資料を作る作業でもあります。1枚の紙に事業の概要をまとめておくと、窓口でも面談でも使えます。日本で会社設立をする外国人にとって、この1枚があると心強いはずです。
1枚にまとめるときは、会社の概要、事業の内容、取引の見込み、資金の状況の4つを入れると過不足がありません。外国人が日本で会社設立をした直後は、この4つが説明の中心になります。
このセクションの根拠:経営管理ビザ・日本進出サポートセンター「外資系の新設法人はなぜ銀行口座を作りにくいのか」(https://touch.or.jp/keiei/foreign-company-bank-account-japan/)
SECTION 07避けたほうがよいこと

準備の段階で避けておくと、説明が楽になることがあります。
- 事業目的を多く書きすぎる:何をする会社か伝わりにくくなります。
- 実態と合わない住所を本店にする:確認が丁寧になります。
- 資本金の出どころが説明しにくい形にする:贈与や短期の借入は説明が必要になります。
- 事業の内容が確認に時間のかかる分野に見える書き方をする:目的の文言を見直してください。
これらは、日本で会社設立をするときの設計で決まる部分です。定款の事業目的や本店の所在地は、会社設立の段階で慎重に決めておいてください。
すでに設立してしまった場合でも、説明の準備で補える部分はあります。実際に何をしているのかを、資料で示してください。
もうひとつ、口座の使い方についても考えておいてください。海外送金を頻繁に行う予定があるなら、その扱いに慣れた金融機関を選ぶという考え方もあります。会社設立の後の事業の動かし方から、申込先を決めてください。
最後に、申込みは会社設立から時間を空けすぎないほうがよいという声もあります。設立の直後は事業の準備が動いている時期で、説明の材料もそろっています。時間が経つと、何もしていない期間について聞かれることがあります。
このセクションの根拠:全国銀行協会「全国銀行協会」(https://www.zenginkyo.or.jp/)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
何を確認されるのですか。
犯罪収益移転防止法にもとづく取引時確認では、本人特定事項のほか、取引を行う目的、事業の内容、法人の場合は実質的支配者に関する事項なども確認の対象とされています。
事業計画書は必要ですか。
必ず求められるとは限りませんが、設立したばかりの会社には決算の実績がないため、事業の内容を示す材料として役に立ちます。在留資格の申請で作ったものが使えます。
バーチャルオフィスでも開設できますか。
金融機関によって扱いが異なります。実際にそこで業務を行っていることを説明できるかが問われます。在留資格「経営・管理」の面でも事業所の条件があるため、あわせて確認してください。
この項目の根拠:全国銀行協会「全国銀行協会」(https://www.zenginkyo.or.jp/)
まとめ:4つの軸で資料を集める

外国人が日本で会社設立をしたあとの法人口座の審査に向けた準備を見てきました。金融機関が確認しなければならない事項から逆算すると、用意すべき資料が見えてきます。
- 会社が実在することを示す。登記事項証明書、定款、印鑑証明書
- 代表者に権限があることを示す。登記事項証明書と本人確認書類
- 口座を何に使うのかを説明する。取引の見込みと入出金の予定
- 事業の内容を示す。事務所、契約書、ウェブサイト、事業計画書
- 資金の出どころを説明する。送金の記録や預金の推移
この記事は一般的な準備の整理です。金融機関によって求められるものが違うため、申込みの前に窓口へご確認ください。
このセクションの根拠:警察庁「犯罪収益移転防止法の解説(JAFIC)」(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/law_com.htm)
読んでくださった方へ
法人口座の審査は、基準が見えないぶん不安になりやすいものです。ただ、金融機関が確認しなければならない事項は法律で決まっています。そこから逆算すれば、準備すべきことは見えてきます。
日本で会社設立をした外国人にとって、この準備は在留資格の申請とほとんど重なります。一度そろえてしまえば、両方に使えます。
説明の練習も、しておいて損はありません。自分の事業を短く説明できるようになると、取引先との会話でも役に立ちます。
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