経営管理ビザの3,000万円と経過措置|いつから、誰に、どう当てはまるのかを整理する

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すでに在留資格「経営・管理」で日本にいて、これから更新を迎える外国人の方。そして、これから日本で会社設立をして新しく申請しようとしている方。この2つは扱いが違うため、自分がどちらなのかを最初に確認していただきたくて書きました。
2025年10月16日に施行された改正は、資本金3,000万円という数字ばかりが目立ちますが、実務でより重要なのは「いつの申請から当てはまるのか」です。この記事では、その区切りを一次情報から拾い出します。
経過措置の内容は入管庁が公表した資料に書かれています。ただし、そこに書かれているのは判断の枠組みであって、個別の結論ではありません。ご自身の状況にどう当てはまるかは、行政書士や地方出入国在留管理局へご確認ください。
SECTION 01まず自分がどの立場かを確認する

改正の影響を考えるとき、まず自分がどの立場にいるのかを確認します。日本で会社設立を考えている外国人にとって、この区別が出発点になります。

このうち、これから日本で会社設立をする外国人は1つ目に当たります。会社設立の段階から、資本金3,000万円と常勤職員1人以上という基準を前提に組み立てることになります。
日本で会社設立をこれから行う方と、すでに会社設立を終えて数年経っている方とでは、同じ改正でも意味がまったく違います。前者にとっては会社の設計そのものの話であり、後者にとっては既存の会社をどう組み替えるかの話です。この記事では、後者の立場を中心に、前者との違いも示しながら進めます。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
施行日前に受け付けられた申請の扱い

入管庁の資料には、本改正省令の施行日の前日までに受付し、審査を継続している在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請等については、改正前の許可基準を適用すると書かれています。
ここで基準になるのは、申請を出した日ではなく、受け付けられた日です。郵送で出した場合や、オンラインで出した場合、いつ受付になるのかを確認しておく必要があります。日本で会社設立をして急いで申請した外国人が、受付の日で扱いが変わるという状況は実際に起こりました。
なお、この経過的な取り扱いは在留資格認定証明書交付申請にも及びます。海外にいる外国人が日本で会社設立をするために認定証明書の交付を申請していた場合も、受付の日が施行日前であれば改正前の基準で審査されるということです。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
すでに在留している人の更新はどう見られるか

すでに「経営・管理」で在留している人については、施行日から3年を経過する日、令和10年10月16日までの間に在留期間更新許可申請を行う場合、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の許可基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断を行うとされています。
施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請については、改正後の許可基準に適合する必要があります。出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」
注意したいのは、これは「3年間は何もしなくてよい」という意味ではないという点です。資料には、審査においては経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあると書かれています。また、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新申請時までに改正後の許可基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮して判断するとされています。
経過措置の対象は「経営・管理」だけではありません。資料には、「高度専門職1号ハ」(「経営・管理」活動を前提とするもの)についても、「経営・管理」の許可基準を満たすことが前提となることから、同様に取り扱うと書かれています。高度専門職の枠で日本で会社設立をしている外国人も、同じ区切りで考えることになります。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
043年という区切りを、自分の在留期間に重ねる

経過措置の期間は令和10年10月16日までです。この間に何回更新を迎えるかは、いま持っている在留期間の長さによって変わります。「経営・管理」の在留期間は、事案によって5年、3年、1年、4か月などがあります。
| いまの在留期間 | 経過措置の期間に迎える更新 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1年 | 2〜3回 | 毎年更新のたびに状況を見られます。早めに体制を整える必要があります。 |
| 3年 | 1回程度 | 次の更新までに準備を進める形になります。 |
| 5年 | 0〜1回 | 次の更新が経過措置の後になる可能性があります。改正後の基準を前提に考えます。 |
※ 更新の回数は在留期間の満了日によって変わります。表は考え方を示したもので、個別の状況は在留カードの満了日でご確認ください。
在留期間が1年の方は、毎年の更新のたびに状況を確認されることになります。日本で会社設立をしてから日が浅い外国人の方は、この形になっていることが多くあります。逆に、在留期間が長い方は、次の更新が経過措置の期間を過ぎている可能性があります。

このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html)
更新時に確認される公租公課の履行状況

改正にともなう資料では、在留期間更新時に確認される公租公課の支払義務の履行状況が具体的に挙げられています。日本で会社設立をした外国人にとって、日ごろの事務処理がそのまま審査に出る部分です。
- 労働保険の適用状況:雇用保険の被保険者資格取得の履行、雇用保険の保険料納付の履行、労災保険の適用手続等の状況
- 社会保険の適用状況:健康保険および厚生年金保険の被保険者資格取得の履行、社会保険料納付の履行
- 法人の場合の国税:源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税
- 法人の場合の地方税:法人住民税(都道府県民税・市区町村民税)、法人事業税
常勤職員を1人以上雇うということは、労働保険と社会保険の手続きが発生するということでもあります。会社設立の直後にこれらの手続きを済ませておかないと、更新のときに指摘を受けることになります。
外国人が日本で会社設立をすると、社長ひとりの会社であっても健康保険と厚生年金保険の適用事業所になります。加入の手続きを後回しにしたまま数年経ってしまうと、遡っての加入と保険料の支払いが必要になることがあります。更新の前に慌てるより、会社設立の直後に済ませておくほうが結果として負担は軽くなります。
このセクションの根拠:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)
特定活動から「経営・管理」へ変更する場合

在留資格「特定活動」から「経営・管理」へ変更する場合について、入管庁の資料には個別の取り扱いが書かれています。日本で会社設立をする外国人のうち、スタートアップビザの枠組みを使ってきた方に関係します。
- 特定活動44号(外国人起業家)外国人起業活動促進事業に関する告示の一部を改正する告示の施行日前に確認証明書が交付されている場合は、変更許可申請の際に改正前の許可基準が適用されます。
- 同じく44号で施行日以降の交付改正告示の施行日以降に確認証明書が交付されている場合は、改正後の許可基準が適用されます。
- 特定活動51号(未来創造人材)施行日の前日時点で認定証明書交付申請等を行っている場合や同在留資格で在留中の場合は、改正前の許可基準が適用されます。
- 同じく51号で施行日以降の申請施行日以降に認定証明書交付申請等を行った場合は、改正後の許可基準が適用されます。
これらの制度を使って準備を進めてきた方は、確認証明書や認定証明書の日付を確認してください。会社設立の準備をどの時期に始めたかによって、当てはまる基準が変わります。
これらの制度は、日本で会社設立をする前の準備期間に在留を認めるという性質のものです。準備期間のうちに会社設立まで進み、そのあと「経営・管理」へ変更するという流れになります。どの時点の基準が当てはまるのかは、確認証明書の交付日で決まるため、書類の日付を保管しておいてください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「外国人起業家(外国人起業活動促進事業)」(https://www.moj.go.jp/isa/03_00097.html)
SECTION 07在留中の出国と、活動の実態について

資料には、在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められないと書かれています。日本で会社設立をした外国人が、本国と行き来しながら経営しているケースでは、この点に注意が必要です。
また、事業内容についても、業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱うとされています。会社はあるが実際の経営を他人に任せている、という形は認められにくいということです。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
経過措置は令和10年10月16日で終わりますか。
入管庁の資料では、施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請については、改正後の許可基準に適合する必要があるとされています。それまでの間の更新は、経営状況や適合する見込み等を踏まえた判断が行われるとされています。
経過措置の間は資本金を増やさなくてもよいですか。
資料では、改正後の基準に適合しない場合でも、経営状況が良好で納税義務を適切に履行しており、次回更新申請時までに基準を満たす見込みがあるときは総合的に考慮するとされています。見込みを示せることが前提になっているため、何もしないままでよいという内容ではありません。
この項目の根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
まとめ:日付から逆算して準備する

改正の内容そのものより、自分にいつから当てはまるのかを押さえるほうが実務では重要です。外国人が日本で会社設立をして経営を続けていくうえで、確認すべき日付は2つです。在留カードに書かれた在留期間の満了日と、令和10年10月16日です。
- 在留カードの満了日を確認する。次の更新がいつ来るかを数える
- 令和10年10月16日より前か後かを見る。前なら経過措置の中、後なら改正後の基準
- 足りない要件を書き出す。資本金、常勤職員、日本語能力、事業計画書の確認
- 埋め方を決める。増資、採用、試験の受験、専門家への依頼
- 納税と社会保険の状況を整える。滞納があれば先に解消する
この記事の内容は、出入国在留管理庁が公表した資料にもとづく2026年8月時点のものです。経過措置の運用は、これから実際の判断が積み重なっていく部分です。ご自身の状況での見通しについては、入管手続きに詳しい行政書士へご相談ください。
このセクションの根拠:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
最後に
経過措置という言葉は、猶予をもらったように聞こえます。ただ、資料を読むかぎり、求められているのは「基準に近づいていく見込み」です。何もしないまま3年が過ぎると、その先で困ることになります。
日本で会社設立をして、ここまで経営を続けてきた方にとって、資本金3,000万円という数字は簡単ではないと思います。増資の方法、事業の伸ばし方、雇用の設計。取れる手はいくつかあります。
早めに手を打つほど、選べる方法は多く残ります。次の更新までにまだ時間がある方こそ、いまのうちに一度、状況を書き出してみてください。
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