外国人が日本で株式会社を設立するとき|仕組み・費用・手続きの流れを最初に押さえる

この記事の想定読者
日本で会社設立をするにあたって、株式会社を選ぼうとしている外国人の方に向けた記事です。手続きを手伝う日本側の担当者が、仕組みを説明する場面も想定しています。
株式会社は日本でもっとも一般的な会社の形です。ただ、外国人にとっては、発起人、株主、取締役といった言葉の関係が分かりにくいことがあります。本国の制度と似ているようで違う部分もあります。
この記事では、まず仕組みを整理し、それから手続きと費用を見ていきます。個別の設計については、司法書士や税理士へご相談ください。
SECTION 01株式会社の仕組みを整理する

株式会社は、出資する人と経営する人が分かれた仕組みです。出資する人を株主、経営する人を取締役といいます。もっとも、小さな会社では同じ人が両方を兼ねることがほとんどです。
会社設立のときに出資する人を発起人といいます。発起人は出資と引き換えに株式を受け取り、そのまま株主になります。日本で会社設立をする外国人が自分ひとりで進める場合、発起人であり株主であり取締役でもある、という形になります。
- 発起人会社設立のときに出資する人です。定款に氏名と住所が記載されます。
- 株主株式を持っている人です。会社の重要な事項を決める権利があります。
- 取締役経営を行う人です。登記されます。
- 代表取締役会社を代表する取締役です。契約や届出で会社を代表します。
この関係を押さえておくと、書類を作るときに迷いません。定款には発起人として、登記には取締役や代表取締役として、それぞれ名前が出てきます。同じ人でも、書類ごとに立場の呼び方が変わります。
外国人が日本で会社設立をするとき、この立場の違いは在留資格の説明でも意味を持ちます。出資しただけの人と、経営している人では、求められる在留資格が変わるためです。
株式は、会社の持分を細かく分けたものです。1株あたりの金額と発行する株式数を決めると、資本金の額が決まります。会社設立の書類では、この株式数も記載します。外国人が日本で会社設立をする場合、1株の金額を1万円や5万円に設定して、分かりやすい株式数にすることが多くあります。
このセクションの根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
機関設計をどうするか

株式会社では、どういう機関を置くかを決めます。取締役だけを置く形、取締役会を置く形、監査役を置く形など、いくつかの組み合わせがあります。
いまの会社法では、取締役1人だけでも株式会社を設立できます。日本で会社設立をする外国人がひとりで始める場合、この形が使われることがほとんどです。
取締役会を置く場合は、取締役が3人以上必要になります。加えて監査役なども必要になることがあります。人数がそろわないうちに取締役会を置く設計にすると、会社設立が進まなくなります。
| 設計 | 取締役の人数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 取締役1人 | 1人 | もっとも簡単な形です。会社設立の手続きも軽くなります。 |
| 取締役2人以上(取締役会なし) | 2人以上 | 複数人で経営する場合。取締役会は置きません。 |
| 取締役会設置 | 3人以上 | 監査役なども必要になります。組織が大きくなってからの形です。 |
※ 機関設計は他の要素とも関係します。詳しくは司法書士へご相談ください。
定款認証の手数料は、発起人全員が自然人でその数が3名以下、発起設立、取締役会非設置のすべてを満たすときは1万5,000円になるとされています。会社設立の費用の面でも、機関設計は影響します。
あとから機関設計を変えることもできますが、定款の変更と登記が必要になります。外国人が日本で会社設立をするときは、当面の体制に合わせたシンプルな形から始めることが多くあります。
監査役を置くかどうかも決めます。小さな会社では置かないことがほとんどですが、事業の内容によっては置くこともあります。会社設立の段階で悩む場合は、置かない形から始めて、必要になったときに設置するという考え方もあります。
このセクションの根拠:日本公証人連合会「Q7. 認証の手数料(定款認証)」(https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12/12-q7)
役員の任期という仕組み

株式会社の取締役には任期があります。原則は2年ですが、株式の譲渡に制限を設けている会社では、定款で最長10年まで伸ばすことができます。
任期が満了すると、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要になります。登記には登録免許税がかかります。日本で会社設立をした外国人が、この仕組みを知らずに登記を忘れてしまう例があります。
任期を10年にすれば、登記の回数は減ります。一方で、途中で役員を替えたい場合には、任期の途中での解任という形になり、扱いが変わることがあります。会社設立の時点で、どちらがよいかを考えて決めてください。
合同会社には、この任期の仕組みがありません。長く続けることを考えると、この差は費用の面でも効いてきます。外国人が日本で会社設立をするときの形態選びで、判断材料のひとつになります。
任期を管理するには、会社設立のときに作った定款を手元に置いておくことです。定款に任期が書かれています。日本で会社設立をした外国人が、数年後にこの書類を探すことになる場面はよくあります。保管場所を決めておいてください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
04設立の手続きの流れ

株式会社の設立は、決められた順番で進みます。日本で会社設立をする外国人も、この流れは同じです。
- 会社の内容を決める商号、事業目的、資本金の額、本店所在地、役員構成、事業年度を決めます。
- 定款を作成する発起人が定款を作り、署名または記名押印します。
- 公証人の認証を受ける公証役場に予約し、定款の認証を受けます。手数料は資本金の額で変わります。
- 資本金を払い込む発起人個人の口座に払い込み、通帳の写しなどで記録を残します。
- 設立時取締役を選ぶ定款で定めるか、発起人が選任します。就任承諾書を作ります。
- 登記を申請する本店所在地を管轄する法務局へ提出します。申請日が設立日になります。
合同会社と比べると、公証人の認証という工程が1つ多くなります。その分、日数と費用が増えます。会社設立を急ぐ場合、この工程が日程を左右することがあります。
外国人が発起人になる場合、定款への署名の方法と、印鑑証明書の代わりになる書類について、事前に公証役場へ確認しておいてください。
設立時取締役の選任は、定款に定めておく方法と、発起人が選任する方法があります。定款に書いておくと手続きが1つ減ります。会社設立の書類を作るときに、どちらにするかを決めてください。
登記の申請では、会社の実印を届け出ます。印鑑届書という書類に押印して提出します。外国人が日本で会社設立をする場合も、会社の実印は日本で作ることになります。
このセクションの根拠:法務局「商業・法人登記の申請書様式」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html)
かかる費用

株式会社の設立にかかる法定費用は、定款認証の手数料と、設立登記の登録免許税が中心です。

合同会社の場合、定款認証がなく、登録免許税の最低額も6万円です。設立時の費用だけを見ると、合同会社のほうが10万円以上安くなります。
日本で会社設立をする外国人の場合、これに加えて証明書の取り寄せや翻訳の費用がかかります。会社設立の見積もりを立てるときは、その分も入れてください。
専門家に依頼する場合の報酬は、これとは別にかかります。定款の作成と認証、登記の申請までを司法書士に依頼すると、事務所によって幅がありますが数万円から十数万円程度が目安です。見積もりを取って比べてください。
このセクションの根拠:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
株式会社を選ぶ理由

費用が高くなるにもかかわらず株式会社を選ぶ理由は、主に対外的な信用と、将来の選択肢の広さです。
- ●取引先からの見え方:大企業との取引で、株式会社であることを条件にされることがあります。
- ●資金調達の選択肢:株式を発行して出資を受ける形が使えます。
- ●人材の採用:求人を出すときの見え方に影響することがあります。
- ●事業の拡大:機関設計を変えて、組織を大きくしていく道が用意されています。
一方で、在留資格「経営・管理」の審査において、株式会社と合同会社のどちらが有利ということは、公表された基準の中には書かれていません。会社設立の形態は、事業の性質から選ぶことになります。
外国人が日本で会社設立をするとき、本国の取引先や投資家との関係で株式会社が求められることもあります。事業の相手が誰かによって、選ぶべき形が変わります。
もうひとつ、株式会社では株式を使った資本政策が取れます。将来、共同経営者を迎えたり、投資を受けたりする可能性がある場合、株式会社のほうが設計しやすくなります。外国人が日本で会社設立をして事業を大きくしていく計画があるなら、この点も考えてください。
このセクションの根拠:JETRO「日本での拠点設立方法」(https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/section1/page1.html)
SECTION 07外国人が発起人・代表者になるときの実務

日本で会社設立をする外国人が発起人や代表取締役になる場合、印鑑証明書が取れるかどうかで手順が変わります。
日本に住民登録があり印鑑登録をしていれば、日本人と同じ流れで進められます。定款に実印を押し、印鑑証明書を添えます。会社設立の準備を始める前に、印鑑登録を済ませておくのが簡単です。
住民登録がない場合は、記名押印に代えて署名し、その署名が本人のものであることを本国の官憲が証明した書類を添えることになります。取り寄せに時間がかかるため、日程には余裕を持たせてください。
代表取締役の住所も登記されます。海外の住所を登記する場合の書き方については、管轄の法務局へ確認してください。
なお、発起人が複数いて、そのうちの一部が海外在住という場合もあります。その場合、海外在住の発起人の分だけ代わりの証明が必要になります。日本で会社設立をするときの書類は、人ごとに変わることを覚えておいてください。
このセクションの根拠:司法書士法人永田町事務所「宣誓供述書や署名(サイン)証明書の取得地や注意点」(https://asanagi.co.jp/2022/06/18/3590/)
よくある質問

相談の場でよく出る質問を、この記事の内容に沿ってまとめました。事案によって結論は変わりますので、判断の材料としてお読みください。
取締役1人でも株式会社を設立できますか。
できます。いまの会社法では、取締役1人だけの株式会社を設立できます。取締役会を置く場合は取締役が3人以上必要になります。
発起人と取締役は同じ人でもよいですか。
同じ人が兼ねることができます。ひとりで会社設立をする場合、発起人であり株主であり代表取締役でもある、という形になります。
役員の任期は何年にすればよいですか。
原則は2年ですが、株式の譲渡に制限を設けている会社では定款で最長10年まで伸ばせます。長くすれば登記の回数は減りますが、途中で役員を替えるときの扱いが変わります。事業の見通しに合わせて決めてください。
この項目の根拠:e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)
まとめ:仕組みを理解してから設計する

外国人が日本で会社設立をするときに株式会社を選ぶなら、押さえておきたいのは3点です。発起人・株主・取締役という立場の違い、役員の任期という仕組み、そして合同会社との費用の差です。
- 立場の関係を整理する。誰が出資し、誰が経営するのかをはっきりさせる
- 機関設計を決める。当面はシンプルな形から始めることが多い
- 任期を何年にするかを決める。満了の時期を控えておく
- 電子定款にする。紙だと収入印紙4万円がかかる
- 資本金の額を決める。在留資格の基準と登録免許税の両方から考える
会社の設計は、事業の内容と将来の計画によって変わります。この記事は仕組みの整理であり、個別の助言ではありません。会社設立の設計については司法書士や税理士へ、在留資格については行政書士へご相談ください。
このセクションの根拠:法務省「商業・法人登記」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
読んでくださった方へ
株式会社という言葉は、本国にも似た制度があると思います。ただ、細かい仕組みは国によって違います。日本の制度として、あらためて整理してみてください。
日本で会社設立をする外国人にとって、費用の差は小さくありません。それでも株式会社を選ぶ理由があるなら、その理由を自分の言葉で説明できるようにしておくとよいと思います。
迷っている場合は、事業の相手が誰になるかを考えてみてください。そこから答えが出ることがあります。
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